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14 独裁の完成

 貴族の統治する領地内。

 そこでは新たな税金が発生していった。

 既にある税金の税率を上げるのは反発がおおきくなるので得策では無い。

 なので、細かな税金を大量に作った。

 税率を上げるわけではないところに智慧が働いている。



 人間、自分に関係のある税金が増えるのは我慢できない。

 しかし、自分とは関係の無い税金が上がるのは気にしない。

 消費税の増加に文句を言っても、金持ちの税率が上がるのは歓迎するのと同じだ。



 八百屋に税金をかけ、肉屋に税金をかけ。

 馬車の運行業者に税金をかけ。

 陶器や金属加工など、様々な職人に税金をかけ。

 そうしてとにかく細かな税金をかけていった。



 これらを一つ一つ順番に税金をかけていった。

 最初は八百屋。

 それから肉屋、といった具合に。

 そうすることで、最初は八百屋だけが反発し。

 その次は肉屋だけが反発するといった具合になった。

 一カ所から文句は出るが、他は知らんぷりという状況だ。

 おかげで1度に受ける貴族の負担は小さくなる。



 手間はかかる。

 しかし、滞りなく税金をかけていける。

 そうして次々に税金をかけ、貴族は収益を増やそうとした。



 領民の負担はおおきくなった。

 以前は概ね税率30パーセントであった。

 それが税金の種類が増えて、35パーセントになった。

 増えはしたが、払いきれないほどではない。

 不満をもらしつつも、人々はそれを受け入れた。

 そうさせる事が貴族のもう一つの狙いだった。



 1度におおきく引き上げたら不満がおおきくなる。

 しかし、少しずつ上げていくなら、あまり不満は出ない。

 ゆでたカエルだ。



 いきなり煮えたぎった湯の中にカエルを放り込んだら、カエルは大騒ぎする。

 しかし、身を浸してる水をゆっくりと煮え立たせていけば、カエルは大人しくしてる。

 徐々に耐えきれない温度になってもだ。

 慣れてしまうのだ、体が。

 しかし、限界を超えればゆだって死ぬ。



 これと同じだ。

 少しずつ税金を上げていく事で、民衆を負担になれさせる。

 それが当たり前と思わせる。



 そうして貴族は税金を少しずつ上げていった。

 35パーセントは一年で40パーセントになった。

 45パーセントになるのに更に一年を費やした。

 それが50パーセントになり、60パーセントになる。

 さらには70パーセントにも。



 こうなってくると、もう事業がなりたたない。

 多くの商店や工房が潰れた。

 潰れる前に撤退した者もいる。

 そうした店や工房を貴族は無料で手に入れた。

 潰れた店の従業員ごと。



 手に入れた店はそのまま運営させた。

 領地内の全ての商店や工房が手に入ったのだ。

 事業を独占的に行う事が出来る。

 競合相手がいないのだから、値段は好きなようにつけられる。



 従業員は格安で働かせていく。

 寝床と食糧だけ与えてれば良いのだ。

 余計な賃金など必要ない。

 そもそも生活空間に快適さも必要ない。



 寝床は日本でいうカプセルホテルのようなもの。

 寝床だけの部屋を作ればいい。



 食事も栄養だけは一応ある、味のないもの。

 生きていけるだけのものでしかない。



 その待遇は奴隷というにふさわしい。

 組合運営対策として行った増税。

 それによって貴族は領内を完全に掌握した。



「独裁国家の手口だな」

 前世を思いだしながら転生者はぼやいた。

 貴族の行った事は独裁国家のやる手口そのものだ。

 人から金を巻き上げ、生活が成り立たなくなった者達を奴隷としていく。

 逃げようにも先立つものがない、資金も食糧もない。

 だから現状から逃げ出せない。

 自然と人々を縛り付ける事が出来るようになる。



「増税は独裁の第一歩っていういけど」

 まさにその通りになっていた。

 自分の目で見る事になるとは思っていなかった。

 びっくりするしかない。



 ただ、こうなる可能性はとっくに見越していた。

 なので、税金が増えて税率が上がった時に転生者は脱出をした。

 自分の作った領域に。

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