13 残しておくと問題になるからさっさと処分していく、そうなるとこうなる
新たに作った組合。
そこに放り込むのは、当然ながら貴族の一族郎党。
転生者の組合から追い出された出戻り達だ。
才能や能力があるわけがない。
というのはさすがに言い過ぎになるかもしれない。
本当の意味で無能というものはそう多くは無い。
この世界では珍しい読み書き・計算が出来る者は多い。
はしりだけでも物語や文学、思想哲学という教養に触れてる者も多い。
そこは貴族というべきだろう。
だが、それらを用いる心魂の部分が問題だった。
たとえ知識があろうとも、それを用いる心がどうしようもない。
まともに働こうとしない、怠け者ばかりなのだ。
そんなものが智慧を正しく用いるわけがない。
そもそも、組合の運営に携わっていた者はほとんどいない。
貴族の一族郎党は給料を手に入れる為に籍を置いていただけだ。
働こうという意識など持ち合わせてない。
如何にして他の者に仕事を押しつけるかだけしか考えてない。
そんな者達に仕事が出来るわけがなかった。
新たに作った組合は即座に機能不全を起こす。
以前の組合は、まともに働く者がいたからどうにか稼働していたが。
そんな人材はもういない。
責任と仕事を押しつけ、成果と給料を手にしようという者ばかりだ。
探索者の組合としての機能などありはしない。
そうした所に納入されるのも粗悪品だ。
武器防具に背負い袋や野外活動用具など。
探索に必要な装備品の質はとてつもなく悪い。
かろうじて使えるという程度で、実用的な品質はない。
そんなものを支給されても探索者が困るだけだ。
探索者もそんな所に寄りつくわけがない。
他の組合にいられなくなった者が流れ着く事はあるだろう。
しかし、まともな探索者だったら決して近寄らない。
結果として、荒くれ者や成果をかすめ取ろうとする者くらいが集まってくる。
そんな探索者がまともに活動出来るわけがない。
仕事もしないでくだをまいてるのが普通だ。
食いぶちが減ってきたら怪物退治に出かける事もあるだろう。
だが、それすらもまともにこなせない者がほとんどである。
また、そうした探索者だから組合員費をまともにおさめるわけもない。
ただでさえ高い組合員費だ。
金額を聞いて「ふざけんな!」と暴れる者がほとんどだ。
そうなれば、荒事になれてない職員が抑えつける事は出来ない。
結局、組合を動かすための組合員費も取れなくなる。
そうなれば、割高な粗悪品を売りつける事も出来なくなる。
そんな劣悪な環境でも、続いていれば万が一の可能性があったかもしれない。
しかし、それすらも消えていく。
問題を起こす探索者がだんだんと姿を消していくからだ。
組合から追放される事無く消息不明になる事が増えていった。
結果として、問題を起こす者が減る。
場末の組合に流れ込む人間すら消えていく。
もちろん、転生者の活動のおかげだ。
追放などという生ぬるい事はしない。
生かしておけば必ず問題を起こす。
そういう輩を率先して処分してるのだ。
問題児が集まって暗黒街になる事を防いでいく。
この為、貴族など有力者が作った場末でしかない組合の構成員が減る。
継続して流れ込んでくる事がないから、人員が増えるわけがない。
現存してる探索者達も次第に姿を消す。
たまに出かける探索で命を落とす事もある。
それよりも、町の外で転生者達に殺される事が増えたからだ。
町の中でも処分される事もある。
「こんなの生かしておくなよ」
切り裂いたゴロツキ探索者を見下ろして顔をしかめる転生者。
他の組合から追い出され、貴族が作った場末の組合に流れ着くような輩だ。
生かしておいても必ず問題を起こす。
そうなる前に処分していった。
おかげで貴族が作った場末の探索者組合は成り立たなくなる。
職員がいても探索者がいないのだ。
稼ぎが上がるはずもない。
組合は赤字を発生させるだけになる。
さすがにこれでは、と貴族も考えた。
どうにかして赤字を減らそうとした。
その為に出来る事は一つしかない。
増税だ。
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