10 放棄された、捨てられた、だから拾っていく
転生者が手にしたのは農地だけではない。
放棄された、するしかなかった鉱山なども手に入れていく。
怪物に阻まれて出向けなかった採掘地。
それらを転生者は確保していく。
こうして手に入れた資源を工房に流して物品を生産していく。
可能な限り大量生産が出来るようにして、廉価品を作っていく。
これらを市場に流して利益を得てえいく。
もちろん、商業許可をとっての事では無い。
各地の都市や町での商売は、既に存在している商店などが牛耳ってる。
そのほとんどは貴族などの統治者と手を取り合ってる者達だ。
それ以外の業者を排除して独占的に商売をしている。
貴族の商業許可はこうした業者にしか出されない。
それを無視して転生者は商品を流していく。
一般に流通してるものよりも安く。
品質が同程度なら、安いものを求めるのが人間だ。
こうして闇市が形成されていく。
当然ながら、既存業者は売り上げが減っていく。
赤字を発生させていく。
誰も買わなくなっていくのだから当然だ。
競合他社があらわれたのだからどうしようもない。
次第に困窮していく貴族と商人達。
その逆に利益をあげる転生者。
上がった利益で借金を返していく。
思った以上に返済が進む。
業務内容も改善され、転生者の組合は健全な経営体制を取り戻していく。
もちろん、貴族や商会などが黙ってるわけではない。
商業許可を得てない業者への弾圧を激しくしていく。
法律や秩序からすれば間違ってはいない。
しかし、人の営みを損なってるのは貴族・商会の方である。
法律や秩序は決して人の営みを守り育むものではない。
むしろ、独裁国家や圧政・悪政というのは法律や秩序によって成り立つ。
圧政・悪政を保つための法律が作られるからだ。
こうして秩序というものが人々を苦しめていく。
珍しい事でもなんでもない。
少なくとも転生者の周辺ではそうなっている。
だが、こんな事をすれば人々が不満をもつ。
よりよい品を手に入れることが出来なくなるのだ。
今いる状況から逃げ出せないものかと誰もが思う。
ここにつけいる隙が出来る。
転生者にとってこれほどありがたい事はない。
「じゃあ、逃げる?」
不満を持つ者達に聞いてまわる。
大半が頷く。
「だったら、案内するよ」
怪物を退けて作った場所。
田畑や鉱山として確保した地域。
そこに人を移住させていく。
村が町になり、町が都市になっていく。
ただ、この世界、簡単に引っ越しができない。
領民は領主のものだからだ。
なので、人を移住させるために探索者として登録させる。
危険な仕事だけに、行方不明や死亡する者が多い。
なので、誰が消えても誰も気にしない。
人知れず移住するにはもってこいだ。
もちろん、選別もしていく。
問題を起こさない人柄の人間だけを確保していく。
そうでない者達は、危険な迷宮に放り込んでいく。
怪物がうごめく地域への探索に向かわせる。
危険地帯を使って処分していく。
それで上手くいかなければ探索者を使って始末していく。
転生者本人が動く事もある。
将来の禍根を選別の段階で消していく。
いると問題になる者など必要ない。
組織改善の前の組合がそうだった。
同じ轍を踏むつもりは転生者にはない。
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