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データ供養所

一人じゃ役に立たずとも

作者: まい

 中世ヨーロッパ風異世界の悪役(に仕立て上げられてしまった)令嬢で、婚約破棄もの。


 恋愛要素無しで、思ったよりギャグ要素も盛り込めませんでしたので、このジャンルにお邪魔致します。


 あと登場人物は皆様キラキラしてますので、描写はいたしません。

「貴様を王太子たる我が婚約者とし続けるには不適格だ! 婚約者破棄とする!!」


 唐突に始まりました、雑な婚約破棄騒動です。


 最近()()()平民貴族問わずに流行っている娯楽小説みたいな、婚約破棄騒動です。


 王太子の成人祝いの場で、同時に婚約から進んで、婚姻を発表する場でもある……あったはずの場です。


 そこで婚約者様に対してでっち上げとしか思えない、無茶な理由による婚約破棄を王太子がやらかしました。


 (わたし)以外の参加者へも大体の話が知れ渡っていて、王太子へ冷めた目を向けています。



 …………え? 王太子には殿下をつけろ?


 これは心の中の文ですし、()()()()を心の中で殿下だなんて敬称を付けたくないです。





 この世は神による恩寵(おんちょう)を一人ひとり(たま)われる世界です。


 恩寵はこの世の法則を蹴っ飛ばしているかのような、超常のチカラを発揮します。


 超常のチカラと言っても、玉石混交(ぎょくせきこんこう)


 明確に人の為になるもの、人を簡単に傷付けられる危険なもの、どう使えば有用になるのかわからないもの等様々。


 かく言う私も一人では何の意味もない恩寵を神様から授かっています。


 その恩寵とは――――


「来なさい!!」


 ――――失礼。 いま王太子の婚約者様からお呼びがかかりましたので、また後ほど。






(わたくし)の身の潔白を、すぐさま証明いたします!」


 王太子が高い所に立って、婚約者様を見下ろしています。


 声を張り上げるその婚約者様のお(そば)(わたし)は立ちました。


 このお方は同じ女性として完璧と言って良い、同年代の同性が憧れる淑女です。


 そんなお方の側に立つ私へ、参加者の皆様が「なんだアイツは?」など不遠慮(ぶえんりょ)な視線をぶつけて来ますので、ちょっと肩身が狭く感じます。


 その視線に耐える間もなく、婚約者様が私の紹介をして下さいます。


「この子は(わたくし)の派閥の寄子(よりこ)の準男爵の令嬢ですわ!」


 紹介に合せて、淑女の礼をひとつ。 ……うん。 自己採点で問題無し。 このお方のお側にいて恥ずかしくない礼のはず。


 準男爵なんて半分平民と見られてしまう、こんな場に居ること自体間違いだと思われかねない、そんな立場の娘です。


 今回の騒動の為に、この婚約者様に見出されてこんな場違いな所で失礼致しております。


 どうかよろしくお願い致します。


「私が授かった恩寵は【読心】。 人の心を見透かせるチカラだと、皆様はご存知でしょう?」


 そうなのです。 この婚約者様は対王族対貴族最強の恩寵を授かったのです。


 このチカラを恐れた国の貴族以上の身分の方々が、厄介払い同然に同年代で存在していた王太子と婚約しろと、そうトントン拍子で話が進んでしまいました。


 なのでもしかしたら、今回の婚約破棄騒動の根っこは、王太子のせめてもの抵抗だったのかも知れません。




 それで(わたし)の恩寵は――――


「――――この子の恩寵は、他人の持つ恩寵のチカラを、(おおやけ)にするチカラですわ!」


 はい。 紹介して頂きありがとうございます。


(わたくし)【読心】は、心を読み取っても私自身しか分かりません。

 それを逆手に取って、本当はそう思っていないのにそう思っている事にされたと言いがかりをつけられたりしました。

 が、読み取った心の声がこの子の恩寵で、まるで周囲へ叫んでいるように聞こえる様になるので、言いがかりでは無い証拠となるのです!」


 なんか【増幅】とか【拡大】とか言われてます。


 例えば身体能力を上げる恩寵の方に使うと、周囲の方にも身体能力向上の恩寵が一時的に適用されます。


 自分だけや他者を癒やす恩寵の方に使えば、周囲の方にも効果が及び、一度に沢山の方を癒せます。



 これを聞いた参加者の方々は「なんと」「凄い」「なんてチカラだ」と、どよめきます。


 確かに凄いのですが、(わたし)ひとりだけ居てもなにも出来ません。


 そこを歯がゆく思っています。 ですが、まあ。


「【読心】しても、それが本当か証明出来ない。 その心配はこれで解決致します!」


 私は誰かを支えるのが好きな性分で、この婚約者様から熱烈に助けて欲しいと望まれてしまえば、チョロい私はコロッと行ってしまうわけで。


 この婚約者様に()われたら喜んで手伝おうと思った言葉を、心を読まれていると分かっていても、望んでいた請われ方をされたらコロっと本当に行ってしまった訳で。


「殿下。 これから質問をしますので、お答え下さいませ」


 王太子と対峙(たいじ)する婚約者様の背後に控えます。




 それだけで、ほら。



 一人じゃ役に立たずとも。


『どうしてこうなった!! 俺は【読心】なんてのを使える不気味な女から、逃げたかっただけなのに!!』


 婚約者様を音の発生源として、会場中に王太子の声が響き渡りました。


 こうやって誰かの助けになるんです。




『この馬鹿息子が……!!』


 おや、婚約者様は国王陛下の心の声も読んでしまわれた様ですね。

 このあとの元婚約者様は、恩寵のチカラてもって特別外交官として八面六臂(はちめんろっぴ)の大活躍をします。


 今回の騒動の結果、元婚約者様との相乗効果が非常に恐ろしいと認識され、それについて回る主人公。


 時には他の人と協力したり、他人から騙されかけたのを相棒のご令嬢に助けられたり、ご令嬢がピンチになったのを助けたり。


 本が何冊か書ける冒険譚になる……んじゃないですかね?


 自分ではそんなの書けませんし。


 …………え、恋愛要素? 知らん。




 あ、王太子はもちろん罰を受けますが、その内容は読者の皆様にお任せ致します。

 正解はありません。 それぞれの方が納得できる罰って事で。







〜〜〜〜〜〜



 (2023年4月25日修正)誤字報告ありがとうございます。


 玉石混交 が正解なのに、 珠玉混交 と何故自分は書いてしまったのか…………orz

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― 新着の感想 ―
[一言] 力の使い方ですかね~? 良くも悪くも最強のカードですな、外交に対しては。 暗殺され無きゃいいけど……
[良い点] なろうのとりあえず婚約破棄しとけという風潮に、まい節でスパイスを振りかけた作品。そこに愛はあるんか? と言ったらたぶん最初から無いというね。 人の心を読んでたら愛もクソも無くなるでしょうけ…
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