表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/16

First target 悠里への依頼

 暗殺業はたとえ大変だった仕事の後でも、大きく環境が変わったとしても、剣城玲としての仕事は普通に降りかかってくる。僕の表の職は料理研究家などなど。料理本も3冊ほど出している。他にも色々と職はあるが、それは追々。顔も出しているし、テレビにも紹介されたことがある。暗殺者なのにと思うかもしれないが、逆にコソコソしている方が不自然で怪しまれる。できるだけ、自然に普通というのが僕らの世界での基本だ。特に僕の場合、こういう表に出る仕事の方が暗殺業もやりやすい。


 悠里のための書類を警視庁に提出するときに、ついでと言わんばかりに次の依頼が僕の元にきた。サラッと目を通す。ターゲットは20代前半の人気俳優らしい。僕も名前くらいは聞いたことがあるくらいの人間だ。罪状は、麻薬の売買。資料によれば、かなり手広くやっているみたいだ。金稼ぎと共に地位や権力も薬によって手に入れているみたいだった。若いのによくここまで。特に、黒い噂の出てない、スキャンダルすら聞いたことのない人間だったから少し驚いた。それに今回の依頼は何やら大きな作戦が裏にあるらしく、もらった資料には重要と大きく赤文字で書かれていた。


「これが今回のターゲットです。いつもみたいにお願いします。」


「ああ。これは僕が適任だね。期限は?」


「特に。でも、なるべく迅速にだそうです。」


「わかった。どうにかするよ。」


「ありがとうございます。それと、これから娘さんのためのサーポートをするようにと警視総監から私に命がありましたので、以前渡した連絡先ではなく、常に私につながる連絡先を渡しておきます。自己紹介が遅れました。警視庁公安部警視総監補佐、村田亮介と申します。」


「ああ、助かるよ。子育ては不慣れだし、まだお世話になることが多いかもしれないけどよろしくな。」


彼からもらった連絡先を登録し、警視庁を後にする。帰宅途中の看板には今回のターゲットの広告がデカデカと飾ってあった。今、主演で映画を撮っているらしいが、その映画の放映は叶わないだろうな。


 家に帰ると、2人がリビングで勉強をしている。近々、地元の中学校に入学の決まった悠里は琴乃に日本語と漢字を教えてもらっている。基礎的な知識はあるし、外国人特有の変なイントネーションもない。相当高度な日本語の教育を受けてきたのだろう。身につくスピードも半端ではなかった。


悠里は、今14歳。中学2年生の年齢にあたる。もともと、読書家で知識の幅がかなり広い。悠里曰く、行動を制限されていたから本を読むことしか娯楽がなかったからだそう。悠里は、体が弱いが歩けないというわけではない。走るとかの激しい運動はできないが、日常生活を送るくらいなら普通にできる。自分の足で歩くことも。ただ、調子に波があるみたいで、きつい時は僕が買ってきた車椅子を使っている。最近は、僕の部屋にきて少年漫画と小説に夢中のようだ。漫画は楽すぎて読んでいる気がしないみたいで、たまに小説を挟んでいると言っていた。


「お帰りなさい。」


悠里が僕の帰宅に気づいて、迎えてくれた。


「ああ。ただいま。」


僕の表情の変化を逃さなかった琴乃が僕に聞く。


「また、お仕事ですか?」


「ああ。大きめのね。」


「つい先日終えたばかりなのに。」


「仕方ないさ。今回のターゲットはある作戦の第一段階みたいだから。詳しくはまだ読んではないけど、僕に頼むくらいだから大事な作戦なんだと思う。それも、誰にもバレないようにね。」


琴乃とは、仕事の内容を共有している。アドバイスもくれるし、人と関わりを作るのが苦手な僕がターゲットに接近することができるのは、琴乃が教えてくれた人間接近術のおかげだ。


「お仕事って、あれですか?」


「ああ。悠里が考えていることと一緒だと思うよ。」


悠里を迎え入れたその日の夜、琴乃と話した。この子には暗殺業のことを包み隠さずに話すって。


「必要なことなんですか?」


「ああ。この国を守るためと言っては過言かもしれないけど、この仕事をしないと困る人がとてもたくさんいるからね。」


「なぜ、お父さんなのですか?」


「そうするように育てられたからね。」


「嫌じゃないのですか?」


「嫌だよ。僕は教育に失敗した失敗作だからさ。」


「なぜ、嫌なのに続けるのですか?」


「今は、悠里と琴乃を守るためかな。僕は結構わがままを言うタイプだから、依頼はしっかりこなさないといけないからね。」


「・・・。」


悠里は黙ってしまった。


「重く受け止めることはないよ。僕が選んで、決めたことだからね。」


そうは言ったものの、気にするなというのは無理がある。


「だったら、お仕事終わりにしっかり僕のこと迎えてくれる?そのために僕は頑張れるから。」


「わ、わかりました。」


「ありがと。じゃあ、晩御飯にしようか。」


僕は、自室に荷物を置いて、エプロンをして、キッチンに立った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ