リスト回収完了
3時間後にはすでに、テーブルの上にはさまざまな料理が並んでいる。メインであるローストビーフに、揚げ物、真那さんに作って貰ったサラダとグラタンなどなど。お酒も進んできたみたいで、数人呂律が回っていない。すでに日は沈み、時計も8時を回っていた。片付けも終わりやることがなくなった。
「真那さん。そろそろ僕たちも帰りますか?皆さんもうダウンしているみたいですし。」
「もうお帰りですか?」
悠太郎くんが話しかけてきた。すでに彼もワイン2本とシャンパンを飲み干しているのにも関わらず、ケロッとしてる。マネージャーさんから聞いていたが、かなりお酒には強いらしい。
「はい。真那さんには無理してついてきて貰っていたので。少し早めに帰ろうかなと。」
「そうでしたか。わざわざありがとうございます。お礼と言ってはなんですが、お土産にこれを。」
悠太郎くんは、ビンテージ物のワインとシャンパンを2本ずつ持っていた。
「いいんですか?こんな高そうなやつ。」
「はい。料理のお礼ですし、今日のあまりなので問題ないですよ。」
真那さんはそのワインとシャンパン、袋も含めてスマホ内に収めた。一見すると嬉しくて写真を撮っているみたいに見えるが、僕の視点からは、彼女の画面が見えていたのでそうではないということがわかった。警戒心が強いというか、律儀というか。
「喜んでいただいたみたいで嬉しいです。」
「はい。大切に主人と飲みます。」
「そうだ。玲さん連絡先いただいてよろしいですか?また、お願いしたいので。」
「もちろんです。あれ?」
ズボンのポケットを調べても、僕のスマホの存在が確認できない。
「申し訳ないです。車の中に忘れてきてしまったみたいなので、直接僕が打ち込むので貸していただけますか?」
「もちろん。」
僕は丁寧に手を洗い、悠太郎くんのスマホを手に取った。僕はマジックの要領で袖に通しておいたケーブルを彼のスマホに挿した。それを数秒で外し、実際に僕の連絡先を登録した。
「ありがとうございます。後で連絡ください。」
「こちらこそです。また呼びますね。」
僕と真那さんは荷物とお土産を持って、部屋を後にした。
一階に降り、車に乗ると、
「では、データをいただけますか?」
「ああ、待ってください。もう少しだけかかるので回収次第、送りますね。」
「さっきのケーブルで出したんじゃないの?」
「いいえ。これ以上は企業機密なので。それより、盗聴器の類は大丈夫ですか?」
「問題ないから話してるんでしょ。」
「それもそうですね。」
僕は真那さんを家の近くまで送り別れた。
家に帰り、悠里とゲームをしている時に、2件通知が届く。一つは悠太郎くんからのものだった。
『今日はありがとうございます』
『いいえ。お土産ありがとうございます。妻も喜んでます。』
『では、明日からもよろしくお願いします。』
身も蓋もないやりとり。
僕は、もう一つの通知を開く。それを確認した後、村田さんに連絡をした。
『回収完了』と。