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前世の話

作者: 村上
掲載日:2022/03/27

ツ「僕、最近、前世に興味ありましてね」

ボ「急にどうした?」

ツ「前世って、なんか面白いじゃないですか。自分の前世が何かって、皆さんも興味あると思うんですよ」

ボ「……お前、なんか怪しいこと始めたんじゃないよね?」

ツ「やってない、やってない。なんでそんなこというの?」

ボ「やめて。そんなの。相方が新興宗教にハマってるとか、何にも笑えないから」

ツ「やってないって言ってるでしょ」

ボ「……僕、今の話聞いて思ったんですけど、前世って、足りなくなってるんじゃないかなって思うんです」

ツ「なに? どういう意味?」

ボ「だから、前世が足りなくなってるんじゃないかなって、思ったんです」

ツ「だから、どういう意味なの?」

ボ「鈍いヤツだな。今、世界的に人口って増えてるみたいじゃないですか」

ツ「そうみたいやけど」

ボ「昔は今より全然、人間の数って少なかったってことだから、今生きてる人間、全員に前世があると足りなくなるんじゃないかって」

ツ「そういうこと? まぁ、そう言われれば、そうかもしれんけど……前世が人とは限らないんじゃない? ほら、前世で良いことして、人間になれるみたいな話ってあるじゃん」

ボ「えっ! 前世って人じゃなくていいの?」

ツ「まぁ、究極ね」

ボ「究極じゃなくとも、足りないんだから、他の何かから人間になるしかなくなるね」

ツ「じゃあ、仮にそうだとするわ」

ボ「……お前の前世、シジミな」

ツ「シジミって、あの味噌汁とかに入ってる?」

ボ「そうそう」

ツ「嫌。そんなの絶対、嫌」

ボ「でも、お前みたいに電車乗ってもタクシー乗っても、いつでもどこでも、涎垂らして寝るような奴は前世はシジミで十分でしょ」

ツ「嫌、嫌、嫌」

ボ「シジミからお笑い芸人になれたんだから、もっと喜んだほうが良いよ」

ツ「俺はもっと自分の前世が格好良くありたいのよ」

ボ「なんなの。その意味のわからない見栄は」

ツ「良いじゃん、前世にくらい夢見させてくれよ」

ボ「前世に何の夢見てるの?」

ツ「前世くらい、武士とか村一番の力持ちとかになりたいじゃない」

ボ「そんなんでいいの?」

ツ「格好良いじゃないか」

ボ「お笑い芸人なんてやってる人間の前世なんて、大したことある訳ないじゃん」

ツ「なんでそんなこと言うの。もっと、自己肯定させてくれよ。承認欲求満たさせてくれよ」

ボ「なんで、お前の承認欲求叶えなきゃいけないんだよ」

ツ「でも、仮にそうだとして、俺はなんか良いことしたのよ。例え、シジミだったとしても。良いことしたから、人間になれてる訳よ」

ボ「シジミが何の良いことするの?」

ツ「めっちゃ美味しかったとか」

ボ「嫌いな上司に食べられる時に砂食わせたとか」

ツ「それは良いシジミなのか?」

ボ「上司を嫌いな部下からしたら、良いシジミよ」

ツ「どんな立ち位置のシジミだよ。どっちにしても、しょっぼいシジミじゃないか」

ボ「でも、こんな人生なら、シジミのままの方が良かったんじゃない?」

ツ「そんなこと言うなよ。今もこれはこれで楽しいから」

ボ「でもな、それでいうなら、来世もあるってことなんだろ」

ツ「も、も、もちろんや」

ボ「今の考えてないやつのリアクションだけどね」

ツ「考えてる考えてる」

ボ「俺が教えてあげようか」

ツ「お、おう。教えてくれ」

ボ「お前の来世は武士だよ」

ツ「今の時代に? 絶対、嫌やわ」

ボ「さっきまで、前世が武士だったら良かったのにとか言ってたのに」

ツ「このご時世に、武士なんて時代に合わないよ」

ボ「じゃあ、ラクダじゃない? お前の来世はラクダで決まりだ」

ツ「なんでラクダなのよ。適当に言って……お前はどうなのよ。お前の来世は何になるのよ」

ボ「俺はゴミみたいに死ぬよ。前世も来世もないから」

ツ「悲しいわな」


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