前世の話
ツ「僕、最近、前世に興味ありましてね」
ボ「急にどうした?」
ツ「前世って、なんか面白いじゃないですか。自分の前世が何かって、皆さんも興味あると思うんですよ」
ボ「……お前、なんか怪しいこと始めたんじゃないよね?」
ツ「やってない、やってない。なんでそんなこというの?」
ボ「やめて。そんなの。相方が新興宗教にハマってるとか、何にも笑えないから」
ツ「やってないって言ってるでしょ」
ボ「……僕、今の話聞いて思ったんですけど、前世って、足りなくなってるんじゃないかなって思うんです」
ツ「なに? どういう意味?」
ボ「だから、前世が足りなくなってるんじゃないかなって、思ったんです」
ツ「だから、どういう意味なの?」
ボ「鈍いヤツだな。今、世界的に人口って増えてるみたいじゃないですか」
ツ「そうみたいやけど」
ボ「昔は今より全然、人間の数って少なかったってことだから、今生きてる人間、全員に前世があると足りなくなるんじゃないかって」
ツ「そういうこと? まぁ、そう言われれば、そうかもしれんけど……前世が人とは限らないんじゃない? ほら、前世で良いことして、人間になれるみたいな話ってあるじゃん」
ボ「えっ! 前世って人じゃなくていいの?」
ツ「まぁ、究極ね」
ボ「究極じゃなくとも、足りないんだから、他の何かから人間になるしかなくなるね」
ツ「じゃあ、仮にそうだとするわ」
ボ「……お前の前世、シジミな」
ツ「シジミって、あの味噌汁とかに入ってる?」
ボ「そうそう」
ツ「嫌。そんなの絶対、嫌」
ボ「でも、お前みたいに電車乗ってもタクシー乗っても、いつでもどこでも、涎垂らして寝るような奴は前世はシジミで十分でしょ」
ツ「嫌、嫌、嫌」
ボ「シジミからお笑い芸人になれたんだから、もっと喜んだほうが良いよ」
ツ「俺はもっと自分の前世が格好良くありたいのよ」
ボ「なんなの。その意味のわからない見栄は」
ツ「良いじゃん、前世にくらい夢見させてくれよ」
ボ「前世に何の夢見てるの?」
ツ「前世くらい、武士とか村一番の力持ちとかになりたいじゃない」
ボ「そんなんでいいの?」
ツ「格好良いじゃないか」
ボ「お笑い芸人なんてやってる人間の前世なんて、大したことある訳ないじゃん」
ツ「なんでそんなこと言うの。もっと、自己肯定させてくれよ。承認欲求満たさせてくれよ」
ボ「なんで、お前の承認欲求叶えなきゃいけないんだよ」
ツ「でも、仮にそうだとして、俺はなんか良いことしたのよ。例え、シジミだったとしても。良いことしたから、人間になれてる訳よ」
ボ「シジミが何の良いことするの?」
ツ「めっちゃ美味しかったとか」
ボ「嫌いな上司に食べられる時に砂食わせたとか」
ツ「それは良いシジミなのか?」
ボ「上司を嫌いな部下からしたら、良いシジミよ」
ツ「どんな立ち位置のシジミだよ。どっちにしても、しょっぼいシジミじゃないか」
ボ「でも、こんな人生なら、シジミのままの方が良かったんじゃない?」
ツ「そんなこと言うなよ。今もこれはこれで楽しいから」
ボ「でもな、それでいうなら、来世もあるってことなんだろ」
ツ「も、も、もちろんや」
ボ「今の考えてないやつのリアクションだけどね」
ツ「考えてる考えてる」
ボ「俺が教えてあげようか」
ツ「お、おう。教えてくれ」
ボ「お前の来世は武士だよ」
ツ「今の時代に? 絶対、嫌やわ」
ボ「さっきまで、前世が武士だったら良かったのにとか言ってたのに」
ツ「このご時世に、武士なんて時代に合わないよ」
ボ「じゃあ、ラクダじゃない? お前の来世はラクダで決まりだ」
ツ「なんでラクダなのよ。適当に言って……お前はどうなのよ。お前の来世は何になるのよ」
ボ「俺はゴミみたいに死ぬよ。前世も来世もないから」
ツ「悲しいわな」




