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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

俺は、妖魔と戦う巫女の婚約者。……ついでに言うと妖魔は俺です。

作者: 巫月雪風

俺、狭間 妖一は封魔神社に戻って来た。

俺は、ここの三姉妹の婚約者だ。

そして、彼女達は妖魔を退治する仕事をこれから行うのだ。

俺の仕事は朝昼夕は教師業をしつつ、夜はその手伝いをする事だ。


でも、それはあくまで表向きの仕事。

俺の本当の仕事、それは妖魔として彼女達と戦う事だ。

「やっと着いた」


 俺、狭間 妖一は今日から住む封魔神社の鳥居をくぐってそう言った。


 ここ美咲町にある封魔神社は、文字通り魔を封じる神社として知られている。

 また、ここを治める桜塚家は、ここら一帯を治める大地主でもある。

 お布施だけでは足りない生活費は不動産で稼いでいるらしい。


 で、俺はそこの三姉妹の婚約者だ。

 狭間家はもともと桜塚家の分家であり、数百年に一度時々本家の人間と結婚するよう命令が来る。

 で、今回選ばれたのが俺なのだ。

 そして、俺の相手は年子の三姉妹の誰か。

 上から晴海ちゃん、穂香ちゃん、美涼ちゃんの現役高校生三姉妹だ。

 ちなみに命令したのは三姉妹の母、遥さんらしい。

 俺が産まれた時に俺を自分の子供と結婚するよう決めたそうだ。

 ちなみに未亡人。


 遥さんに勝手に決められたとはいえ、俺は小さい頃からの三姉妹と一緒に遊んできたし、良好な関係を築いてきた、と思う。

 ……多分。

 いつも一緒に遊んでいたし。


 で、教員免許を取得した俺は、この町の高校に赴任するために生まれ故郷に帰って来たのだ。


 そして神社の奥にある住居に行くと、


「あ、本当に来た!」

「兄貴。久しぶりー」

「……久しぶり」


 俺の婚約者の三姉妹がすぐ来てくれた。


「ったく、兄さん、全然帰って来ないんだから。捨ててやろうと思ったわよ。感謝するのね。私の心の広さに」


 こう言うのは長女 晴海ちゃん。

 相変わらず少し口は悪いが、それでも悪い子じゃない。

 悪い事が見逃せない、正義感が強くてとてもいい子なのだ。

 もちろん生徒会長で、運動も成績も上位をキープしている。

 スタイルも三姉妹で一番いい。

 腰まで届く黒髪をポニーテールにしている美しい美少女だ。


「あはは、晴海の言う事は気にしなくていいからね。僕も二人も、ぜってい帰って来るってわかってたし」


 そう言ったのは、次女 穂香ちゃん。

 優しい彼女は、スポーツ万能少女。

 様々な部活の助っ人をするくらい、運動するのが大好きな子だ。

 でも頭が悪いわけじゃないし、勉強は平均くらいだ。

 背は高く、ショートカット。

 胸は、並くらいだろう。


「……うん。待ってた」


 小さな声でそう言ったのは、美涼ちゃん。

 大人しい彼女は、天才少女だ。

 全国模試一位は当たり前、休日は図書館で勉強。

 頭のいい少女のお約束を行く子だ。

 晴海ちゃんとおなじ腰まで届くロングヘアの彼女のスタイルは……俗に言うロリ体系だ。

 背は低いし、胸もない。

 いや、多分少しはあるんだろうけど、見た事ないから分からない。


「ごめんなさい」


 俺はそう言って謝ると、三姉妹はしょうがないなって顔しながら家に入れてくれた。


 で、過去の話に花が咲き、部屋の片づけや夕食を終わらせた。

 その後、俺は遥さんに本殿に呼び出された。

 正確には、本殿地下、通称聖本殿に。

 もちろん三姉妹も一緒だ。


「皆さん、話は分かっていますね」


 厳しい顔をした遥さんがそう言う。


「はい。お母様。わかっています」

「この日が来るのは分かってたから」

「……覚悟、ある」


 三姉妹はそう言って頷き、俺も


「はい、わかっています」


 そう言って頷いた。


「そうですか。皆、ありがとう。では、念の為改めて説明を」


 遥さんは話を続ける。


「数百年に一度、裏にある霧魔山に妖魔が発生します。それを倒すのが、あなた達巫女の使命です。そして、妖一さん。三人の巫女のお手伝いをするのがあなたの務めです」

「はい、お任せください。彼女たちが全力で戦えるよう、頑張ります」

「ありがとう。巫女の手伝いは代々狭間家の男子がするのが決まりです。それゆえの婚約者です。教師業との兼務は大変ですが、頑張ってくださいね」

「もちろんです」


 そう。俺はこのお役目の為にここに来たのだ。


 ちなみに、妖魔が発生するのは常に夜で、妖魔が発生している間は一般人は入れない。

 一般人しか見えない霧が発生し、気付いたら入り口まで戻ってしまうらしい。

 その霧を発生させるのは遥さんだ。


 ちなみに入れる巫女は一人だけ。

 つまり、三姉妹は一人で恐ろしい妖魔と戦わなければいけないのだ。

 その恐怖、肉体的、心理的不安は大変な物だろう。

 それを支えるのが、俺の仕事だ、


「ありがとう。では、晴海。明日、妖魔が出ると八卦で出ました。お役目、しっかりと果たしなさいね」

「わかりました。お母さま」

「頑張りなさい。では、妖一さん以外は解散しなさい」

「「「はい」」」


 そう言って三姉妹は自宅に帰っていった。

 お役目に関しては遥さんの命令は絶対だ。

 俺だけが残る疑問はあるのだろうが、皆帰っていった。




「妖一さん。わかっていますね」

「はい……わかっております」

「つらいお役目ですが、頑張ってくださいね」


 そう、俺の三姉妹を助けるという仕事は、あくまで表向き。

 本当の仕事、それは……


「妖魔として、三姉妹と戦います。それが俺の仕事ですから」


 そう、俺は妖魔を体に宿し、三姉妹と戦うのだ。

 これにはもちろん理由がある。


 俺が妖魔を体に宿さない場合、どうなるか?


 1.妖気が溜まり妖魔が具現化する。

 2.妖魔と巫女が戦う。

 3.妖魔が勝った場合、当然巫女は死ぬ。

 4.妖魔が町に現れて、一般市民が死ぬ。


 そう、巫女の敗北は死を意味するのだ。

 もちろん勝てれば問題ないのだが、絶対勝てる保証は全くない。


 だが、俺が妖魔を体に宿すとどうなるか?


 1.妖気が溜まりきる前に、俺の体が妖気を吸収し、それを媒介にして俺が妖魔になる。

 2.妖魔となった俺が巫女が戦う。

 3-1.俺が勝った場合、当然巫女は死ぬ。

 3-2.だが、死んだ巫女は聖本殿に転移、蘇生される。

 4.俺の中の妖魔は消滅する。


 そう、巫女は死なずに済むのだ。

 一般人も安全。

 メリットばっかりだ。

 ちなみに、俺が死んだ場合も同様に転移と蘇生が行われるので、問題ない。


 じゃぁ、戦わず大人しく殺されればいいじゃないか、と思われるかもしれないが、そうもいかない。

 全力で戦わないと、戦いに勝っても妖魔が消滅しないのだ。

 恐らくだが、戦いに満足しないと消滅しないのだろう。

 だから、俺は巫女を本気で殺さないといけないのだ。

 もっとも、俺が妖魔の意思に乗っ取られるかもしれないが、結果は変わらない。


 ちなみに、俺の声や外見は妖魔の姿に変わるし、もちろん妖魔の能力を使う事が出来る。


 ……つらい。

 本当に。

 想像するだけで。


 当然この事は三姉妹には秘密だ。

 それは、決められたことであり、俺の意思でもある。

 つらい思いをするのは俺一人で十分だ。


 だから、俺はこの秘密を隠し通す。

 絶対に。




 そして、翌日の夜。


 聖本殿に、俺と遥さん、晴海ちゃんの三人が集まった。


「では、晴海。準備はいいですか?」

「はい。覚悟は出来ております」

「では、武器を」


 晴海ちゃんは、立て掛けてある武器の一つである日本刀を手に取った。


「私は、この武器で戦います」

「そうですか。では、ご武運を」

「頑張って」


 遥さんと俺はそう晴海ちゃんに声を掛けた。

 晴海ちゃんは頷くと、部屋から出て行った。

 彼女が出て行ったのを確認した後……


「では、妖一さん。あなたも」


 俺は、掛けてあった掛け軸を手に取った。

 その裏にあるのは、隠し通路。

 裏山への隠し通路だ。


「行ってきます」

「つらいとは思いますが、お願いしますね」

「はい……」


 そう言って俺は隠し通路に入った。

 しばらく歩いていくと、大きな広間に着いた。

 地面には大きな魔法陣が書いてある。


 俺は、魔法陣の中央に立つと、呪文を唱える。

 俺の体の周囲に黒い煙が現れ、体内に入っていく。


 気づいた時、俺の体は妖魔になっていた。

 犬の妖魔に。


 暴れたい。

 人を食い殺したい。

 そんな感情が、俺の体内に渦巻く。


 俺は、その感情の赴くまま通路を通って表に出た。


 表に出た俺は匂いを嗅ぐ。

 おいしそうな人間の匂い。


 うまそうな女の匂いがする。

 同時に、敵である退魔の匂いも。


 俺は、食い物の方へ向かって行った。

 しばらく走っていくと、獲物が見えて来た。


 獲物は俺に気づいたらしく、居合の構えをしている。

 俺は、獲物とにらみ合うと、勢いよく向かって行った。


「邪悪なる者め。滅びろ!」


 そう言うと獲物はものすごい勢いで刀を抜いた。

 刀は、俺の体のど真ん中を切り裂いた。


「やった!」


 獲物は喜びの声を上げた。 

 だが、


「くっ!」


 獲物は悲鳴を上げた

 俺は気配を消して後ろから近づいて、左足に嚙みついたのだ。


 切られたのは、俺が生み出した分身体だ。

 分身体に俺の意識はあるが、本体ではないから切られても問題ない。


「このっ!」


 獲物は俺を刺し殺そうとするが、そうはさせじと左足を食いちぎった。


「いぎゃ!」


 獲物はそう叫ぶと、そのまま前のめりに倒れた

 そいつは武器の刀を落としたが、拾おうとしている。

 俺は、そうはさせじと右の二の腕を嚙みちぎった。


「くっそー!」


 獲物は今度は悲鳴を上げずに声を上げた。

 だが、まだあきらめていないようで左手を伸ばそうとしたので、俺は刀を咥えて遠くへ投げた。


「くそーっ」


 獲物、いや、餌は何やら言っているが、もう暴れるくらいしか抵抗できないのだろう。

 俺は、舌なめずりをすると、ゆっくり食事を始めた。


「くっ……」


 ああ、うまい。


「絶対許さないからな」


 後味を引く、このうまさ。


「や……やめて」


 お、抵抗が減って来た。


「おね……が、許し……て」


 抵抗がないっていうのも食いやすくっていいもんだ。


「おに……たす……」


 そう言った後、餌は死んだ。

 死んだ餌に用はない。


 そう思った瞬間、俺は人間に戻った。


 ……後味が悪い。

 俺は、大切な婚約者を食べたのだ。

 文字通りの意味で。


 とはいえ、戻らないわけにはいかない。

 俺は、大急ぎで神社に向かって走っていった。

 来た時のルートは使わない。

 なぜなら、敗れた巫女の転移先は聖本殿だからだ。


「お帰りなさい」


 迎えてくれたのは遥さんだ。


「晴海ちゃんは?」

「ええ、きちんと転移と蘇生されていますよ。今は気を失っていますが」

「そうですか」


 後味悪い。

 本当に。


「妖一さん。気に病む必要はありませんよ。あなたがした事は立派な事なんですから」

「ですが……」

「もし、申し訳ないと思うのでしたら、晴海が起きたら元気づけてください」

「もちろんです!」

「そう、それはよかった。お願いしますね」


 俺は、聖本殿に向かった。


 聖本殿には布団が敷いてあって、そこに晴海ちゃんが寝ていた。

 彼女は気を失ったように寝ている。

 息はしているようだ。


 ちなみに晴海ちゃんはパジャマを着ている。

 服は転移されないから、遥さんが着せたんだろう。


 ごめんね。


 俺は心の中で何度もそうつぶやいた。

 でも、これはまだまだ続くのだ。

 妖気が完全消滅するまで。


 俺と、三姉妹との戦いは続いていく……

お楽しみいただけましたでしょうか?


一応、これは長編用に作った作品です。

……ただ、ヒロイン達がひどい目にあうシーンが全然うまく書けないんです。

参考となる作品探しているんですがね。


よろしければ、ご意見ご感想、レビュー以外にも、誤字脱字やおかしい箇所を指摘していただけると幸いです。

星での評価もお願いいたします。

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