第6話 神話 1
「じゃあ、僕の名前から言うね。」
こう言って彼は笑った。彼の淡いグレーの瞳を見ていると吸い込まれそうな気分になる。
「僕はノーリャって言うんだ。宜しくね。」
ノーリャ、ノーリャ。私は彼の名前を頭の中で唱えた。
「分かった。ノーリャね。あなたの惑星は多神教なの?それとも一神教?」
多神教の世界なら、ノーリャは沢山の神のうちの一人だ。一神教なら神はノーリャただ一人になる。勿論一つの惑星だからいろんな地域があると思うけど。
「多神教だね。少なくとも僕の影響の及ぶ所では。」
「あなたは何の神様なの?」
「僕は冥界の神で、命を司ってる。ちなみに本当は両性具有なんだ。」
・・・へえ。なら彼って表現するのはやめたほうがいいのかも。
「今は男の姿をとっているから、彼であっているよ。」
「女の姿も見られる?」
彼は頷いて彼女になった。女の姿のノーリャは男の姿よりも、骨格が丸みを帯びていて、可愛らしい印象を受けた。でも、全体的な印象は変わらず、細くて中性的なままだった。
「ありがとう。」
彼女はすぐ彼に戻った。性別を自在に変えるところなんか見ると、いよいよ疑えなくなった。
「次は僕の星の歴史、というか神話について話すね。」
こういうと彼は、目の前に煮えたぎる溶岩の像を映し出した。
◇◇◇◇◇◇
はじめ,この世は煮えたぎる灼熱の海に覆われ、大気は小さな水の粒に覆われていた。
しかし、いつしか灼熱の海は冷たくなり、大気の水の粒は雨となり長い間降り注いだ。
かくして、海と大地が生まれた。
その後、気が遠くなるような年月が経った時、原初の神"イル"が誕生した。
イルは男でも女でもなかった。イルは孤独だった。イルは海に生き物がいる事を発見し、自分との意思疎通が叶うような生き物が誕生する事を願ったが、やがてイルは孤独に耐えかねて命を断った。
その時、イルの身体から光の男神"リュキ"と闇の女神"アシェラ"が生まれた。
彼らはイルの体を保管し、二人だけで楽しく過ごしていた。
しかし、彼らはやがて二人だけでは退屈になり、神々を生み出していった。
この時生まれたのが、生命の神"ノーリャ"、時空の男神"セス"、水の女神"メア"、大地の女神"ディノ"、大気の男神"ジズ、植物の女神"リェン"、炎の神"カハ"の7柱の神であった。
彼らはまたしばらく、楽しく遊んで暮らした。