第1話 10歳の誕生日
あの時のことは今でも良く覚えている。
その日私は10歳の誕生日を迎え、始めて母方の祖父母に会った。祖父母の家はお屋敷と呼んだほうが良いのではないかと思う程大きかった。
祖母は優しかったが祖父は私達家族にあまり近寄らず私の髪の毛を見て、少し顔を歪めていた。上手く表情を隠していたけど、子供の私にもわかった。多分両親にはもっと。
その理由を当時の私は知らなかったが、今なら私にも分かる。私の姓、福富は母方の姓だ。福富家は戦前の時代には爵位を持っていたような名家だったらしい。そして祖父は外国人嫌いだった。
でも母が恋したのはスコットランド出身の父だった。祖母は反対しなかった。でも祖父は大反対し、決して認めようとしなかったらしい。だから母は家を出たのだ。
祖父は大激怒し、母を勘当した。あとから聞いた話によると、母は母の弟よりも優秀で、期待されていたらしい。
母は家を出てからも祖母とは親交を持ち続けており、祖母はずっと祖父を説得し続けてくれてた。そしてやっと訪れた仲直りの日がその日だった。祝の席とお酒の力を利用しようとしていたのだ。
私の誕生日パーティーは夕方頃に開始された。その場には祖父母と私達家族に加え、祖父と親交のある政財界の人達来ていた。
最初は和やかだった。でも30分程経った頃、異変が起こった。黒装束に覆面姿の男達が侵入してきたのだ。
彼らは祖父とその取り巻き達を狙っていると言っていたが、その場にいる者達全員に無差別に発砲していった。
私は怖くて動けなかった。父は私を庇って死んだ。
母は彼らのリーダー格の男達に言うことを聞けば私を助けると言われ、彼らの玩具にされて殺された。
その時だった。私の中に猛烈な怒りが湧き上がった。私は彼らを素手で順番に殺していった。命乞いも聞かなかった。
終わったとき、生き残っていたのは祖父と数人の客人だけだった。祖父は私を見て茫然とし、客人達は悲鳴をあげていた。
その悲鳴を聞いたのがその日の記憶の最後だった。