紅い約束ーいつもの朝ー
登場人物
愛坂守
本編の主人公、どこにでも居そうな普通の学生。
心の中に不満はあれど、何だかんだで優しい。
愛坂夏希
めちゃめちゃ明るく万能な子。
とりあえず、何かあったらこの子を頼れば大丈夫!
あらすじ
いつもの朝と思いきや、守はいつもより早い時間に起きる、そして外は生憎の雨。
朝から、憂鬱な気分でいると部屋の外から階段を駆け上がってくる足音、そして外の天気が嘘のように対照的で元気な子、夏希が勢いよく部屋に入ってくる。
夏希のテンションの高さのせいで、守の憂鬱な気持ちも吹き飛んでしまい何処へやら、あれよあれよと登校時間。
何も変わらない、いつもの朝が始まる。
『ピピピッ!』
「......うん......ぅぅ......うるさぃ……」
『ピピ、ビシッ......』
俺は目覚ましを止めたついでに時間を確認する、六時半って……寝るか
「……………………………」
ダメだ目覚めが妙にいいのか、今日に限って全然寝れない、ここは潔く起きよう。
俺は少し躊躇しながらもベットから起き上がる、朝のこの瞬間はやっぱり慣れない、とにかくだるい。
「はぁ……」
俺は重い身体を窓の方に持っていきカーテンを開く、今日は生憎の雨か、しかも結構降ってる……学校行きたくねぇ……
「まだ早いけど準備するか」
気持ちを切り替えるつもりで声を出してみたけど、やっぱり無理だ、着替える事すらめんどい、朝は本当に無理、憂鬱過ぎる。
―――
『バタバタバタ』
適当に漫画を読みながら時間を潰していたら、階段を上がってくる音が聞こえてきた。夏希が来たって事はいつもの時間になったのか。
「お兄ちゃん! おっはよう!」
相変わらず元気な奴だな、外の天気が嘘のようにこいつの表情は快晴だ、どうやったら朝っぱらからそんなテンションで行けるんだ、マジで分からん。
まぁ、流石に俺も完全に身体が起きてるから辛くはないが。
「あれ? もう起きてたんだね、しかも部屋が少し綺麗になってる、なにがあったの? せっかくボクが起こしてあげようと思ったのに」
「ああ、おはよう、今日は何故か目覚めがよかったからな」
俺がそう言うと夏希は拗ねた表情をする、なんならさっきまでの俺の方がそんな顔をしたいって気分だったんだが。
「う~! お兄ちゃんを起こすのはボクの中の『1日を有意義に過ごす方法』のベスト10位にランクインしてるほど大切な行動なのに! わざわざ目覚ましも早めに設定して楽しみにたんだよ!?」
「やっぱりお前だったのか……悪かったな、お前のご期待に添えなくて」
「そう思うならボクの為に、二度寝でもしてくれればいいじゃん。そしたら、ボクが優しくお兄ちゃんを起こしてあけだのに」
そういうと夏希はかわいらしく身体を近づいてきた、その距離は互いの鼻が当たるくらいに近く、ついでに言うと黄色い髪からいい香りがするため、理性を刺激してくる。兄として、それは踏み出しては行けない領域だと分かってはいるんだが、やはり男としてこれほどまでに苦痛なことはないだろう。いや、てかこいつはわざと誘っているのか? そうだとしたらタチの悪い小悪魔だ。
「いや、それだけは出来ない!」
「ええ~! なんでなんで?」
そんな疑問が頭に過ぎるが、それよりも今のこの状況の方が俺の気持ちを刺激してくる、押し倒したい気持ちになるが、我慢しろ冷静になれ、いつものように落ち着くんだ、俺ならできるいつもやってる事だろ。
「それはだな」
「それは?」
俺には理性を保たなければならない理由がある。間違いは犯してはならないのだ、俺の名誉のためにも、汚点は残してはいけない。
「お前が」
「ボクが?」
「男だからに決まってるだろうがぁ!!」
そう......何のイタズラかは知らないがそれだけは変わらない事実。夏希が男である以上、これ以上の行為は許されない、いや、女であっても許されないが。そういう問題じゃない俺が俺であるために、その一線は超えては行けない。
「酷いよ! 性別ぐらい兄弟なんだよ......」
「ああ兄弟だよ、普通に起こしてくれるなら別に気にやしないさ」
普通に起こしてくれるなら別に構わないんだ。だが、こいつの場合声だけではなく、体全体で起こして来るのだ。女の子みたいな感触だから嬉しいのだが後味が悪い……いやいや、そもそも何を考えている俺は、目を覚ませ!
「起こすならせめて声だけにしろ!」
だが、俺の訴えは悲しい事に『ヤダ......』の一言でかき消される。
「だって、お兄ちゃんを起こす時のあの反応が良いんだよ!? あれを見ないと1日やっていけないよ!」
「俺の理性が持たねぇ!!」
そもそも、そんなに起こしたいなら目覚ましの設定を変えなければ良かっただけだろう、訳が分からん。
「さて、もういいだろ? 下に降りて飯にしようぜ」
「そうだね! もうご飯は用意出来てるよ!」
さすが夏希、抜かりがないのが本当に素晴らしいと思う。俺に対する執着心が異常じゃなければ尚いいのだが、どうしてこうなった……
「ほんと、お前は頼りになるよ」
バカみたいなやりとりをした後、そんな本心を口にして俺は部屋を出る、気が付くと朝はいつもこんな感じなんだよな。
ーーー
俺は洗面所に行き歯磨きと洗顔を済ませて台所に向かう。机には二人分の食事が置いてあり、それとは別に俺の場所には置き手紙が一枚置いてあった。
「あれ? 親父はもう?」
手紙を手に取りつつ俺は夏希に聞く、夏希はエプロンを綺麗に畳んで、台所の引き出しの中にしまいながら反応した。
「うん、パパはボクが起きた時にはもういなかったよ」
そうか、相変わらず早いな、久々に三人で話せると思ったのに、たまに帰ってきてはいつもこんな感じだ。
「また寂しくなるな」
「そうだね......」
やべ、心做しか少ししんみりさせちまった気がする。それにしても親父が俺に手紙なんて珍しいな、なんだろう。
『守の面倒は任せたぞ、あいつは俺に似てだらしないからな!( ̄▽ ̄)』
「俺宛じゃないのかよ!!」
思わず俺は声を上げてしまった、俺の反省した気持ちを返しやがれ!
すると横から『クスクス』と笑い声が聞こえてくる。なるほど、状況が読めた気がする。
「なーつーき......! お前内容知ってやがったな!!」
俺は夏希を捕まえて脇腹をくすぐってやる。これは兄弟のスキンシップであり健全な行動である。決してかわいいからってセクハラをしているわけではない。
「ひゃ、やめて! くす、くすぐっったいからぁぁ、やーめてぇー!!」
夏希は涙を浮かべながら笑いこけている。俺はそのまま一分間ほど、夏希をくすぐりの刑に処した。
大事なことなので二回言わせてもらうが、これは兄弟のスキンシップであり健全な行動だ、決してかわいいから行為に及んでいる訳ではない。
「よし、俺も飽きたし飯にするか!」
「ひゃはは! やっと終わったぁ......うん! そうだね! ほら、温かい内に召し上がれ!」
涙を流しながら満面の笑顔、マジ天使か。いや、落ち着け、こいつはどちらかと言えば悪魔だ、天使ではない。
「いただきます!」
「ほらお兄ちゃん、ちゃんと鮭食べないとだめだよ? それともまだ骨が苦手なのかな?」
夏希は意地悪な口ぶりでそんなことを言いだす、実際苦手だから食べる気があまり起きないんだけど。夏希は慣れた手つきで食事をしていく、この年になってまともに食べれない自分はなんとも惨めだ。
「ごちそうさま! ボクちょっとお母さんに挨拶してくるね」
俺が食事に苦戦している間に、夏希は自分の食器を片付け、親父の部屋に行く。
「ごちそうさま」
そして、俺も食事を食べ終わり、食器洗いを済ませてから夏希の所に行く。部屋を覗くと夏希は仏壇に向かって手を合わせていた。
「そろそろ行くぞ!」
俺は仏壇の前に居る夏希に声をかけると、それを聞いた夏希は静かに立ち上がった。その姿は大和撫子のようで思わずドキッとしてしまう。どこからどう見ても女の子なんだよな。てか、弟に対して心を揺さぶられるとか有り得ないだろ、俺がまともなのか夏希のかわいさが異常なのかどっちなんだ。
「うん! 行こうかお兄ちゃん!」
「忘れ物は無いか?」
「ボクが何か忘れると思う?」
俺の横を通り過ぎながらそう返す夏希。まったく、兄が気を使ってやったというのに、受け答えがそれかよ。
「やっぱり、お前に限って忘れ物なんてないか」
「あ・た・り・ま・え! ほら早く行くよ!」
俺は『はいはい』とため息を吐き、仏壇に置いてある母さんの写真に顔を向ける。夏希や親父はここで母さんを見てる時どんな気持ちなんだろうか……
「......そんじゃ、行ってくるよ母さん」
「傘、ちゃんと持った?」
夏希が俺にそんな事を言う、さっきの仕返しか?
「雨が降ってるのに忘れる訳ないだろ」
「いや、お兄ちゃんならやりかねないよ」
「お前から見て俺ってどんだけ間抜けなんだよ」
ああだこうだ言っているうちに外に出ようとすると、後ろから『いってらっしゃい』と言われたようなそんな気がした。
とりあえず、守と夏希の絡みです。
全キャラ通して、夏希のキャラだけは完成しているので、この話だけで夏希の六割くらいは個性が滲み出ているのではないか?
父親は普段から家にあまり居なく、母親は既に他界しているという、裕福な家庭ではないですが夏希の明るさに守はいつも救われて居ます。