ボロアパート18
捕まったなら事件になったって事だろう。
ネットでも調べられるが出所が不確かでは二度手間になってしまう。
とにかく時間がないみたいだから手っ取り早く調べる為、近くにある図書館へ向かう。
「眩しい…。昼間外に出るのは久々だな。」
髪はボサボサで髭も伸ばし放題だった。
さすがにこのままじゃヤバいと思い、髭だけは剃った。
最近は大学にも行かず、彼女の生活を見守る事が僕の全てだった。外に出るのは彼女が寝た後でコンビニへ行くぐらい。
気づけば梅雨も終わりかけで夏の気配がしている。
いつの間にこんなに季節が進んでいたんだろう…。
ふと、虚無感に襲われる。
なんでこんな事になったんだろうな。
僕は何をしにこんな都会に出て来たんだっけ?
決して彼女のせいではない。
それは間違いないんだけど、もしも彼女に出逢っていなかったら今どうして居ただろうと思う。
いや、今そんな事を考えても仕方ない。
僕が彼女に出逢ってこうなるのは運命だったんだ。
だって、僕が彼女を守らないで誰が守るんだ?
「そうだ…。僕が守らないと。」
考え方を変えよう。
彼女をより知るためのきっかけだと思えばいいんだ。
だって、これからずっとそばにいるならどんな辛い過去でも知っていないと。
好きなら当たり前だよな。
この時の僕は本気でそう思い込んでいた。
何故、ここまで彼女にのめり込んだのか?
普通に出逢って恋愛するような環境じゃないのに、好きになったせいもあるとは思う。
けれど、そんな事関係なく人を惹きつける何かが彼女にはあるんだ。
だってあんなに綺麗なのに、鼻にかけることなく謙虚で儚げでちょっと触れたら壊れてしまいそうなんだ。
なんか、ほっとけないっていうか庇護欲っていうのが掻き立てられるんだよなぁ。
でも結局、僕は彼女の見かけだけが好きで中身を知ろうともしていなかった。自分に酔っていたんだ。
この事件を調べてみて分かった。
図書館で検索をかけ、昔の新聞を探す。
思いのほか簡単に調べられた。
事件の内容はこうだ。
夫婦喧嘩をしていて父親が暴れ、母親が殴られている最中に当時2歳の娘が巻き込まれた。
頭を殴られた事で脳内出血を起こし亡くなったそうだ。
亡くなった娘っていうのが茜ちゃんか。
犯人の父親はその後、有罪判決。
今は某県内にある刑務所に収監されているらしい。
父親は倒れた二人を放置して逃げている。
もし、すぐに救急車を呼んでいたら助かったかもしれない。
やっぱりコイツはクズだ。
許せない…。