2.15歳になったので、ダンジョンへ②
家に着くと下の階のミトナおばさんが外でお気に入りの木の椅子に座っていた。
いつもの様に刺繍をして、白髪で優しい顔で微笑んでいる。
「クリアスちゃん、洗礼は終ったかい」
ずっと聞いている優しい声に包まれる。
「はい。
これからダンジョンへ向かいます」
「お父さんにそっくりだね。
パンを焼いたから持っていきなさい」
ミトナおばさんは嬉しそうな顔で立ち上がって、歩きだした。
先に部屋に戻るとテーブルの上に革表紙の手帳と干し肉、水筒が置いてあった。
麻の鞄に入れると部屋を見渡した。
この手帳は父がダンジョンから持ってきたもので、天空のダンジョンに行く前に渡された。
どんな事をしても手帳の留め金は開けられなく、ダンジョンへ行けば手帳が読めると思う。
ダンジョンから持ってきた物はほとんどが使え、食べられる。
ダンジョン以外に使えない特殊アイテムがあり、特殊アイテムには魔石や本が多い。
この手帳は開かないし、切る事も燃やす事も出来ないから特殊アイテムだと思う。
階段を降りると入口に立っていたミトナおばさんの手から渡された紙袋に蜂蜜パンが入っており、まだ温かかった。
小麦は南の地方で作られるが、大陸全体に行き渡る量がなく、値段が高い。
ダンジョンでも採れるが、量は少ない。
パンはお祝いの食事に出る貴重な物で、お祝いの時はミトナおばさんが焼いてくれる。
「クリアスちゃん、帰って来るんだよ」
そう言うミトナおばさんに大きく頷いて、手を振った。
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街から2時歩くと古いレンガと新しいレンガが混じった城壁にたどり着いた。
この城壁は街から見え、城壁の広場の奥にダンジョンがある。
ダンジョンと言っても5m四方の銀の正方形の箱がある。
入り口も窓もない建物だから箱とみんなが呼んでいる。
城壁を抜けると見上げる程の建物が並び、飲食店が多く立ち並んでいる。
行き交う人は武器や防具を身に付けているからダンジョンで働いている。
ダンジョンで働いている人を3種類で区分している。
(トレジャー)
ダンジョン内の防具、武器やアイテムを持って帰ってくる冒険者
(ブリング)
ダンジョン内の食料や資材を持って帰ってくる冒険者
(アタッカー)
攻略を目指す冒険者
俺の場合は父を探すためだから、どれにも当たらないんだけどね。
広場に出ると銀の箱が見えた。
銀の箱は光を反射して輝いている。
やっと、父を探せる。