1.15歳になったので、ダンジョンへ①
300年以上の昔、四つの大国間で食糧を奪い合う戦争が絶えず行われていた。
神は戦争を止める様に啓示を行ったが、戦争を止めなかった。
失望した神は空から4個の鉄球を首都に落とし、壊滅させた。
指導者を失った人々は混乱し、盗賊や強盗が増えた。
また、領主達の利益を優先した為に貧困者が増加した。
神は4人の管理者を地上に下ろし、鉄球から箱状の建物内にダンジョンを作った。
管理者は神のお告げを述べた。
"人々の姿を見て、心を痛めた神は平等に生きる方法を考えました。
ダンジョンを作り、ダンジョンから必要な物を与えます。
欲なき者に幸せが訪れます。"
ダンジョンから食料や薬草、毛皮等の生活に必要な物を持ち帰れる様になり、貧困者は救われた。
人々はダンジョンと共に生活を行っている。
父がダンジョンへ行ってから、三年半…
15歳になり、3月の太陽が新しくなる神陽日に洗礼の義が行われる。
やっと、洗礼が受けれる。
去年は他の子供達に紛れて並んだが、神官様に
"君は来年だろう"と言われて失敗した。
誕生日が5月だから問題がないと思うのに、分かずやな神官だ。
アルテラの街の洗礼の義は中央広場で行い、神官の前に50人位が一列に並んでいる。
小さな村からも洗礼を受けに来るので、一日中行われている。
洗礼の義が終わると成人とみなされ、仕事に就く場合が多い。
前の女の子が終わり、青の衣装を着た神官の前に立つに膝をついた。
「15歳ですか?」
去年と違う。
「はい」
神官はダンジョンから採れるキーネ(イチゴみたいな果実)のお酒が入った杯を渡した。
それは甘い味に少し苦味があるが、いい香りがした。
「神に名前を述べ、成人の感謝の祈りを捧げなさい」
「クリアス。
成人に成った事を太陽神様に感謝します」
一緒に祈っていた神官が一歩前へ出ると3㎝位の白い石柱のペンダントを首にかけられる。
これで洗礼の義は終わりだ。
ダンジョンへ入るためにこのペンダントが必要で、それ以外は必要ない。
ダンジョンから多くの恩恵を得ており、成人した者以外が入れない様にしている。
周りを見渡すと親にペンダントを見せる姿が多く見える。
父がいたら、喜んでくれたんだろうな。
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広場から足早に家へ帰っていると、ダンジョンショップのディルが手を振っている。
鍛えぬかれた肉体はダンジョンを生業としている人の特徴だった。
ディルは父と一緒にダンジョンへ行っていた時期もあったと、言っていた。
10歳の時に死んだ母の事も知っており、俺は母と同じ栗色の髪で目元も似ているそうだ。
父がダンジョンから戻らなくなって、仕事をさせてもらっている。
仕事は装備品やアイテム、お店の掃除がメインだけど、色々な物が見れる事が楽しい。
生活は母が死んでからは父はダンジョンに行っていたので、一人でも大丈夫だった。
何かあると下の階のミトナおばさんも助けてくれる。
お金は父の残したお金とバイト代を合わせると自分一人でも生きてはいける。
「クリアス、洗礼は終ったか?
ペンダントを見せろよ」
ディルが顔を近づけてきた。
「ディル、ほら」
首のペンダントを見せた。
「無くすなよ。
それと、お前の父さんからダンジョンから持ってきた物だよ」
ディルの手には新しい皮の鞘に入った短剣が握られていた。
たぶん、ディルが作ってくれたんだと思う。
「ダンジョンからの持ち帰り品だから壊れる心配もなし、すげーだろう。
ダンジョンの品は持ってこいよ。
少し高く買うからな。」
短剣を俺に渡すと自慢気に胸を張っていた。
ディルは優しく、お兄ちゃんがいたらこんな感じだったのかな。
「ありがとう」
少し照れたが、そう言うと店を出た。
何となく、嬉しかった。