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昇華する
高校生になったものの、未だにしょっちゅう涙が出てしまう。少しでも嬉しかったり悲しかったりすると泣きたくなくても泣いてしまう。この涙をなんとか有効活用できないかと、涙を溜めておくことにした。水彩画のときにでも使えるだろうか。
ある程度溜まったあるとき、教室で新作のデザイン案を考えていると、近くを通りかかった男子が言った。「藤村さんって、こんなぐちゃぐちゃっぽいのも描くんやね」
そのときは、考えてる途中だから、と答えた。涙は出てこなかったのに、それを振り返ると、言い訳のように聞こえて、自然と涙が出てきた。
今が使い時だ。赤色の絵の具を溜めた涙で溶かして、白いスケッチブックに描き殴った。途中、視界がにじんできたけれど、描き進めた。
描き終えたそれを改めて見ると、何を描いたのか分からなかった。ひどいなあ。また涙を溜めよう。