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この行く道は明るい道  作者: ナハァト
第三章 ラメゼリア王国編
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この発表会は強気でいこう

 謁見の間の扉を開けて、とりあえず声をかけてみた。

 その結果。


 ……し~ん。と静まり返っている。


 無視。俺の呼びかけに、誰も答えてくれない。

 え? 何これ? シカトなの?

 ここは丁寧に、どなたですか? と尋ねる場面じゃないの?

 あっ、もしかして、俺の声が届かなかった?


 ……いや、でも、視線は俺に向けられているし……遠過ぎて顔が見えないのかな?

 なら、近付けば良いかと、謁見の間の様子を窺いながら進む。


 謁見の間は、何やら荘厳な雰囲気を感じさせる造りだ。

 奥に向かって太い柱が等間隔に何本も並び、壁には大きな旗が飾られているくらいで、他の余計なモノは一切排除した感じ。

 柱の陰に隠れている人も居るから正確な人数はわからないが、数十人は謁見の間に居ると思う。


 武装した騎士っぽい人たちも居るが、その多くは上等そうな服を身に纏っている非武装な人たち。

 あれが全部貴族?


⦅はい。この国の有象無象共です⦆


 ……口が悪くなっているよ?

 まぁ、物語とかでも大抵の場合はあんまり良い印象を受けないから、そう言いたい気持ちもわかるけど、中にはまともな人たちも居ると思うし。


⦅失礼しました。そうですね。マスターの言う通りです。あの中に、愛人を数十人囲っている者、ロリコン、ショタコン、真正のM、メイドに悪戯する事が生き甲斐の者、大魔王軍と通じている者、執事が居ないと何も出来ない者など、様々な者が居ますが、確かにまともな者が居るのも事実です⦆


 うん。そうだよちょっと待った。

 まともじゃない人たちをピックアップするのも良いけど、内情を知り過ぎじゃ待って。

 今、大魔王軍と通じ――。


「何者ですか? 見たところ平民のようですが、そのような者がどうやってここまで入って来られたのです?」


 セミナスさんに追及される前に、そう声をかけられてしまう。

 一旦中断して、やっと声がかけられたかと視線を向ける。


 そこは、扉から真正面に向かって敷かれている絨毯の先――十数段の階段を上った先にある場所。

 そこに居るのは三人。


 中央で豪華な椅子に鎮座しているのは、金色の短髪で、男じゃなくて漢って感じの顔立ちに、背が高いというか全体的に体格が大きい男性。

 マントを羽織っていて、この場で一番上等そうな服を身に纏っているが、その服が悲鳴を上げそうなくらい筋肉がモリモリしている偉丈夫。

 多分、この国の王様。

 頭に体格と合わない王冠載せているし。

 豪華な椅子の奥に、数人がかりじゃないと持てなさそうな大剣が飾られているけど……まさか?


 そんな偉丈夫の傍らに控えているのは、腰まで流れる長い金髪で、THE・美という感じの凛々しい顔立ちに、抜群と言えそうな体付きの女性。

 純白のドレスを身に纏っているが、なんか非常に似合っているというか、様になっていると表現するのが一番合っている感じだ。

 立ち位置的に……この国の姫だろうか?


 その二人と対峙するように立っているのは、黒髪短髪で、なんか蛇というか、ねちっこそうな顔立ちに、スラリとした体型の男性。

 王様よりは抑えめだが、マントを羽織って、上等な服を身に纏っている。

 なんかプライド高そうな感じだ。

 立ち位置的に……わからん。


 状況からして、声をかけてきたのは、黒髪短髪の男性だと思う。

 なんかそんな声だったし。


「……何者だと私が聞いているのだ。答えろ」


 黒髪短髪の男性が、見下すような視線で俺を見ながら問うてくる。

 やっぱり声がさっきと同じ。当たった。

 でも、今はちょっとムカつきの方が強い。

 求めていた問いかけ方と違うし、初対面の人に向けて良い視線じゃないので、そういうお前は何様だよ、と思う。


⦅あれが今回の一連の出来事の首謀者の一人です⦆


 え? 複数人居るの?

 まぁ、大事だし、共犯者が居てもおかしくないか。

 でもまぁ、話は読めた。


 あの黒髪短髪の男性が、「タロッタ・ウラテプ」?


⦅はい⦆


 そういう事なら、こっちも強気でいこうかな。

 黒髪短髪の男性――ウラテプに向けて、ビシッと人差し指を指し示す。

 お前なんかに「さん」付けは要らない。

 呼び捨てで充分だ。


「俺が誰かって? タロッタ・ウラテプ……お前を潰す者だよ!」


 ガツンと言ってやった!


⦅マスター、輝いています⦆


 ありがとう。

 周囲の人たちは、何言ってんだ、こいつ? みたいな表情だけど……って、あれ?

 階上に居る金髪美人女性だけは、驚きの表情で俺を見ているけど、なんで?


「ふ……ふふ……ふはははははっ!」


 突然、ウラテプが笑い出した。

 急にどうした?

 何か変な事でも言っただろうか?

 いや、事実しか言ってないし、突然笑った理由がさっぱりわからない。


 ……あっ、もしかして、周囲に居る人たちの中に、場の空気を変えようと、変顔で笑かそうとした人が居たのかな?

 しまった。

 見逃してしまった。残念。


「闖入者が何を言うかと思えば、私を潰すと? これは愉快な事を言う。貴様のような平民が、どうやって私を潰すというのだ? あぁ、物理的排除はお薦めしない。ここに居るのは、精鋭中の精鋭である近衛騎士たちだからな」


 そう言って、ウラテプが手を振る。

 すると、武装した人たち――近衛騎士たちが俺を囲み、剣を抜いて、その切っ先を俺に突き付けてきた。

 一人を大勢で囲むのってズルくない?


 でもまぁ、別に戦いになる訳じゃないし、そこを気にしても仕方ない。

 俺はウラテプに視線を向けたまま、アイテム袋に手を突っ込んで言う。


「どうやって潰すって、こうやって?」


 ウラテプが悔しがるように、満面の笑みを浮かべる。

 ここからの指示は、セミナスさんが随時出してくれるので、このまま強気でいく。

 ……ふんふん。了解。


「まずはこれだ!」


 ババーン! と出したのは、アドルさんが取ってきた証拠の書類、その一。

「魔法使い部隊」に関するモノ。


 ………………。

 ………………。

 うん。そうだよね。

 まず、このままだと何かわからないよね。


 文字も小さ過ぎて読めないだろうし、回し読みして貰う訳にもいかない。

 コピー機があれば楽だったのに。

 仕方ないので、題目と簡潔な内容を、大声で読み上げる。

 もっとこじんまりとした部屋なら、普通の声量でいけるのに……喉、もつかな?


「……という事がこれには書かれています」


 言い終わると同時に、謁見の間内が一気にざわめき出す。

 なんか動揺が走っている感じ。

 近衛騎士たちも驚いたように、互いに顔を見合わせている。

 うんうん。良い反応。


 ウラテプも、目を大きく見開いていた。

 何故それをって感じ。

 ……というか、金髪美人女性も、同じように目を見開いているけど……なんで?


 まぁ、考えてもわからないので、次にいこう。


「静まれぇ!」


 そう叫ぶと、場が再びしんとなる。

 素直過ぎない?

 もしかして、俺が喋ると黙る、みたいな取り決めがある訳じゃないよね?


 そう疑問に思いつつも、次を取り出す。


「続いてはこちら!」


 ババーン! と取り出したのは、アドルさんが取ってきた証拠の書類、その二。

「盗賊集団」に関する書類。

 同じように読み上げる。


 先ほどよりも更に騒がしくなった。

 何しろ、元騎士、兵士だけじゃなく、現役も絡んでいると示唆されている訳だし、当然の結果だと思う。


 ウラテプの顔が、更に酷い事になっていた。

 同時に、金髪美人女性の方は、目だけじゃなく、口も大きく開けて驚いている。

 美人が台無しになっているけど大丈夫ですか?


「それと……」


 そう呟いて、アイテム袋の中に手を突っ込む。

 周囲から、まだあるの? と言いたげな雰囲気が漂ってきたが気にしない。


 最後に取り出したのは、バッグラウンド商会から持ってきた書類。

 もちろん、これに関しては、署名部分の「ザイン・バッグラウンド」と「タロッタ・ウラテプ」の部分までしっかりと言い切る。


 今度は、ざわつきが一切起こらなかった。

 全員の視線が、階上に居るウラテプに注がれているのだ。


 さて、ウラテプはどう出るかな?

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