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この行く道は明るい道  作者: ナハァト
第三章 ラメゼリア王国編
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発表前って緊張しない?

 捕らえられていた人たちに、これまでの事を簡潔に説明する。

 その中でも、アドルさんたちと直接面識のある気さくな貴族、カノートさんには、もう少し詳しく説明しておいた。


 ………………。

 ………………。

 説明が終わったので、次は今後の行動の話を行った。


 まず、俺、エイト、アドルさんたちは、ここから真っ直ぐ謁見の間に向かい、カノートさんとこの部屋で捕まっていた人たちは、他の捕まっている人たちを解放しに向かう、という形で話が進められていく。


 俺たちが謁見の間に向かう事に文句が出るかな? と思ったけど、どうやらアドルさんが居るなら問題ないそうだ。

 カノートさんが上手く説明してくれたのかな?

 そのカノートさんは、俺たちがこれから謁見の間に向かうと聞くと、どこかそわそわしているように見える。


 知り合いでも居るのかな?

 いや、居てもおかしくないか。

 寧ろ、余所者なのは俺たちの方なのだし。


「問題なのは武具の確保と、どこに捕らわれているか、ですか。それに、こちらの行動が露見した場合、捕らえられている者を人質にしてくる可能性も……」


 そこでカノートさんの言葉がとまる。

 アドルさんたちが苦笑を浮かべながら、俺を見ている事に気付いたからだ。

 最初は意味がわからなそうだったが、先ほどした説明を思い出したカノートさんが、あっ! と声を出す。


「……まさか、その辺りの事もわかる、と?」


 そうですね。わかっています、と頷く。

 ですよね? セミナスさん。


ofオフ courseコース! 既に全てを把握しています⦆


 ……うん。なんで急に英語で答えたのかわからないけど、問題ないらしい。


 まず、武具に関しては、急場凌ぎではあるが、アドルさんたちが集めたけど結局は俺が使用していない武具類を渡す事になった。

 壊しても良いそうだ。

 ……あとで請求出来るよな? って、アドルさんがカノートさんに小声で尋ねていた。

 まぁ、渡した武具類は、取り戻すまでの代用品である。


 それと、捕らえられている人たちが居る場所も教えようとしたのだが、そこで気付く。

 どう伝えれば良いの?

 最初は地図を求めようとしたが、普通に考えて王城内の地図を見せてくれる訳がない。

 ……問題なかった。


 口頭で、武具はどこの部屋とか、第三物置から二つ隣の部屋に誰が居てとか、突き当たりを進んだ先に罠が張られているとか、で通じたのだ。

 信じられない事に、この人たちは迷路のような王城内を熟知していらっしゃる。

 ……まぁ、そうじゃないと、王城内に勤める事は出来ないか。


 ただ、これにも問題があり、部外者がどうしてそこまで知っているんだ? という疑惑の視線を向けられる事になった。

 あとでカノートさんが上手く説明してくれる事に期待しておこう。


 ついでに、その際の注意事項も伝えておく。

 具体的には、特定の場所に向かった時の敵の数と動きや、先に潰しておいた方が良い敵、罠の解除の仕方などだ。

 ちょっと多いから覚えられるのかな? と思ったのだが、カノートさんはなんでもないように頷きを返してきた。


 ……え? まさか全部覚えたの? 今ので?

 ……どこにでも、ハイスペックな人って居るんだな、と思った。


 そして、伝え終わると同時に、互いの健闘を祈ってから行動を開始する。


     ◇


 謁見の間に向けて進んでいく。

 ここから先は敵を倒していった方が良いそうなので、文字通り最短で向かう事になった。

 出会う敵は、全てアドルさんたちが速攻で片付けている。


 といっても、縛ったりしていたら時間が足りないそうなので、倒して放置だ。

 ……大丈夫なのかな?

 途中で目覚めて騒いだりしないだろうか?


「大丈夫だ。そう簡単に目覚めるような倒し方はしていない」


 アドルさんが自信満々に言い、同意するようにインジャオさんとウルルさんも頷く。

 ……どういう倒し方をしているのか不思議だ。

 俺にはわからん。


 まぁ、大丈夫ならそれで良いか。

 ついでに、隣に居るエイトに聞く。


「エイトも戦いたい?」


 なんか戦いが起こると、そわそわ……いや、うずうずしているように見えるんだよね。


「いえ、特には」

「その割には戦いたそうに見えるけど?」

「エイトはご主人様を守るために居ます。ですので、お傍を離れる訳にはいきません」

「ん~、大丈夫だと思うけど? セミナスさんも居るし、そもそも俺はしぶといからね。そう簡単にやられたりはしないし、味方が駆けつけられるくらいの時間は生き残ってみせるよ」


 そう言うと、エイトは少しの間、考える仕草をする。


「……つまり、ご主人様からすれば、エイトは不要という事ですか? 捨てるのですか?」

「何故そうなる。違う違う。エイトにあるかどうかはわからないけど、ストレス解消というか、偶には暴れてスッキリしてみれば? って事だよ」

「なるほど。つまり、エイトもああいう風になれという事ですか?」


 エイトが指し示す方向に居たのは、敵に先制攻撃を仕掛けるアドルさんたち。

 その様子を一言で言うなら……ヒャッハー状態。

 先制攻撃ばっかりで、気分が高揚しているのかもしれない。


「……いや、あれはさすがに」

「わかりました。エイトも同じように気分高揚し、理性のタガが外れて暴れた結果、この城が跡形もなく崩れる事になりますが、その責任はご主人様にある、という事で宜しいでしょうか?」

「うん。エイトは俺の傍に居なさい」


 危うく危険な存在を野に放ってしまうところだった。

 セェーフ!


「かしこまりました。おやすみからおはようまでのベッドの中から、恥じらいのお風呂とお手伝いのトイレまで、エイトはご主人様の傍に居させて頂きます」

「うん。エイトは適切な距離感というのを、まず覚えようか」


 解答にセーフがない。

 どうしてこう、「0」か「100」なんだろうか……「50」を覚えて欲しいと思う。


 そんな感じでサクサクと進んでいくのだが、とうとう問題が起こった。

 アドルさんたちと共に、曲がり角の先を確認する。


「……たくさん居ますね」

「たくさん居るな」


 俺とアドルさんの言葉に、エイト、インジャオさん、ウルルさんが同意するように頷く。

 そう。曲がり角の先――これから向かう先に、たくさんの騎士、兵士が居るのだ。

 下手したら、三桁位の。

 曲がり角から距離があるし、数が数だけに死角もなさそうなので、先制攻撃は出来ない。


 なんだって、こんなところに。


⦅謁見の間での企みが失敗した場合、武力で制圧するためです⦆


 なるほど。だからこその数か。

 ……遠回りは?


⦅出来ますが、それだと間に合わなくなります。突破して下さい⦆


 やっぱりそうなるのね。

 エイトとアドルさんたちにも、突破しなければいけない事を伝える。


「そういう事なら、アキミチを先に行かせるべきか」

「そうですね。自分たちでその道を開きましょう」


 アドルさんとインジャオさんが、そう判断する。

 まぁ、俺がここに残って共に戦っても、今はまだ足手纏いでしかないので、妥当な判断だと思う。

 申し訳ないなと思いつつも、宜しくお願いしますと頭を下げる。


「じゃあ、これ預けておくね」


 ウルルさんから渡されたのは、魔導具の「アイテム袋」。

 多分、このあと使う予定の証拠類が入っているので、しっかりと受け取っておく。


「ご主人様の背後はエイトにお任せ下さい。誰もご主人様の下には行かせませんので」


 さすがに空気を読んだのか、エイトがそう言う。

 でも、心強い。


 早速行動に移す。

 アドルさんたちが先に突っ込んでいき、敵の騎士や兵士たちを薙ぎ倒しながら、一気に俺が通れる道を作る。

 俺とエイトがその道を通って抜ければ、俺のあとを追って来れないように、エイトが立ち塞がった。


「ここは任せたっ!」


 この場はエイトとアドルさんたちに任せると決めた以上、俺は振り返らずに先に進む。

 セミナスさんの指示通りに進んだ先にあったのは、天井に届きそうな巨大な門。


 ……ここが?


⦅はい。目的地である謁見の間です⦆


 大きく息を吐いて呼吸を整え、巨大な門を少しだけ開けて中の様子を窺う。

 んん~……思っていた以上に人が多い。


 ………………。

 ………………。

 なんかこれからこれだけの人たちから注目されるような事をすると思うと緊張してきた。


 緊張を解す意味を込めて、思い切って尋ねる。


「あの~、すみませ~ん! ……あの~、謁見の間ってここで合ってますか?」


 セミナスさんを疑っている訳じゃないからね。


⦅もちろんわかっていますよ、マスター。……ふふっ⦆


 ……なんで最後笑ったの?

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