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この行く道は明るい道  作者: ナハァト
第一章 始まりの始まり
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魔法について

 インジャオさんを先頭にして、目的の場所へと向かう。

 といっても、俺はそれがどこなのか知らない。

 ここがどこなのかも知らない。


「………………そういえば、ここってどこら辺なの?」


 隣を歩くアドルさんに尋ねる。


「ここは上大陸の中央陸続きの近くだ」

「ふ~ん…………………………えっ! いやいやいやいや、それって大魔王軍が居る側って事?」

「そうだな」

「軽い! 返事が軽い! 危険な場所じゃないか! しかも、中央って事は竜の領域にも近いって事でしょ!」

「そうだな」

「だから軽い!」

「そう焦るな。そもそも、ここまで居て何も起こっていないだろ?」


 ……そう言われれば、特に何も起こっていない。

 魔物を相手にするのはまだ怖いけど、現れてもインジャオさんが余裕で斬っていた。

 現に今も。


「………………あれ? もしかして、アドルさんたちって俺が思っている以上に強いの?」

「何を今更。そうだな……たとえ武技が使えなくても、魔物ぐらいでは話にならない程度には強い。魔王、もしくはそれに近しい者でなければ、相手にもならないだろう」


 アドルさんが自慢するようにそう言った。

 おぉ~、何だろう。この安心感。

 全力で頼りにしてます。

 宜しくお願いします、と頭を下げる。


「気にするな。私達はアキミチの手助けをするため、そして守るために同行しているだけだ。それに、こちらにも目的がある」

「俺にやって欲しい事ってのが、その目的?」

「……いや、それもあるが、それとは別のごく個人的な目的だ。アキミチと共に居ると、その目的と出会う事が出来ると教えられた」


 ……教えられた? 予言の神からだろうか?

 それに、出会うという事は、誰か特定の人物にという事かな。

 でも、そう言うアドルさんの雰囲気がなんか怖い。

 もしかして、何かしらの因縁がある相手って事だろうか?


 ……えっと、それって俺も会うって事にならない?

 ………………よし、深く考えるのはよそう。

 今はもっとこの世界の事と、アドルさん達の事を知っていけば、その内わかる事だろうし。


 そこで一旦話を区切り、目的の場所まで辿り着くまで、俺はこの世界の事をアドルさんに聞いていく。

 今回は、主に魔法の事を聞いた。

 夢があるよね、魔法。

 この世界の魔法は、大きく分ければ七つの属性がある。


「火」、「水」、「土」、「風」、「光」、「闇」、「時」の七つ。


「火」は火をおこし、「水」は水を生み出し、「土」は土を操り、「風」は風を呼び、「光」は光を輝かせ、「闇」は闇を覆い、「時」は時を刻む。

 漠然としたイメージだが、大体は思っているような事が出来るのが魔法らしい。

 また、「闇」を使うのは悪者が多い……なんて事もなく、属性の一つというだけだった。

 まぁ、それでも、魔法を思い通りに出来るようになるのはそれなりの努力が必要なのは当然の事で、発動には詠唱が必要との事。


「無詠唱は出来ないの?」

「いや、出来る事は出来るが、威力が大幅に下がり、とても実戦では使えない。まぁ、魔力を大量に注ぎ込めば威力が上がるという裏技はあるが、その量が尋常ではないため、結局は詠唱を唱えた方が良いという結論だな」


 なるほど。

 俺は恥ずかしさが勝ってしまいそうだけど、親友たちなら世界の状況を知ればそういう事は関係ないと思う。

 そうなると、是非とも親友たちが詠唱している姿を見たい。


 ……笑っちゃ駄目だけど、笑っちゃいそうだ。

 実際、想像するだけでもう……。

 いや、でも、それは俺が考えた詠唱だったらで、もしかしたら、もの凄く格好良い詠唱かもしれない。

 ……そうなると、様になり過ぎて笑えないな。


 それと、一応ではあるが、オリジナル魔法も創る事が出来るそうなのだが、既存ならまだしも、全く新しい魔法となると、魔法の神の力が必要になってくるので今は不可能。

 結局は、神々が封印されている今の状況では、どうする事も出来ない。


「そこがネックだなぁ……ところで、俺も魔法って使えるの?」

「う~ん……」


 アドルさんがジッと俺を見てくる。

 何か観察されているようで、居心地が悪い。


「……そうだな。微量ながら魔力は流れているようだし、これからの努力次第……という事にしておこうか」

「という事? おこうか? いやいや、確定じゃないの?」

「下手に期待させるのも残酷だろう」

「いや、そうかもしれないけど……でも、いきなり使える訳じゃないんだね……」

「それは当然だろう。いきなり使えるとか、どれだけ才能に溢れているのだ」


 ……何か親友たちなら出来そうな気がする。

 俺とは違って、色々なスキルを得てそうだし。

 でもまぁ、その分、生存確率も上がっているだろうから、きっと大丈夫だろう。

 俺にはアドルさんたちが居るしね。

 何とか無事に会える事だけを願う。


 そうして、アドルさんと色々話している内に、目的の場所へと辿り着いた。

 そこは、森の中にある小さな神殿。

 太い柱を使用した重厚な造りで荘厳な雰囲気を醸し出しているが、神殿の色は真っ黒で統一されていた。

 ………………。

 ………………まぁ、雰囲気は確かに凄いけど、どう見ても森の中に突然神殿があるって、ミスマッチだな。

 うんうんと頷いていると、アドルさんが声をかけてくる。


「……何が見える?」

「え? 何が見えるって、真っ黒な神殿が目の前にあるじゃないですか」

「なるほど。アキミチにはそう見えるのか」


 ……ん?


「どういう事ですか? 俺にはって」

「言葉通りの意味だ。私達の目には、ただ森が広がっているようにしか見えない」


 アドルさんの言っている意味がわからない。

 現に、そこに真っ黒な神殿があるのに……。

 確認するように、インジャオさんとウルルさんへ視線を向けるが、アドルさんと同じく見えていないと意思表示される。


「封印される前の予言の神の話だと、この世界の者では見えず、入れないような仕組みになっているそうだ」


 アドルさんの言葉を聞いて、インジャオさんが真っ黒な神殿に向けて進み、辿り着く前に姿を消す。

 数秒後にはこちらに向かって来る形で姿を現した。


「結界の向こう側に出て、本当に入れないのです。予言の神の啓示は正しいという事の証明ですね」


 インジャオさんがそう言って、俺に視線を向けてくる。

 ウルルさんも俺を見ていた。

 隣に居るアドルさんが話を続ける。


「予言の神から聞いた話だと、私達では見えない入れない、その神殿に神の一柱が封印されているそうだ」

「……つまり、俺にやって欲しい事っていうのは」

「そうだ。神の復活である」


 ………………思った以上に、大変な事に巻き込まれたモノだ。


「予言の神の話によると、召喚されたアキミチの友達は大魔王軍の侵攻を止めるために必要な存在らしい。けれど、それだけでは勝てない。この世界を平和へと導くためには、スキルの恩恵が必要だ」

「……つまり、親友たちが大魔王軍と戦っている間に、俺は神の復活をしていけと?」

「それが、友達を助ける事にも関わっていると言っていた」


 ……色々と神に対して文句を言いたい気分になるが、今はその相手が居ない。

 でも、親友たちを助けるために必要だと言うのなら、俺は迷わない。

 やってやろうじゃないかっ!


「覚悟は出来たようだな。なら、あとは頼む。中の様子がわからないので、もし危険なら引き返して来い。私達は入る事が出来ないが、助言は出来る」

「頼りにしてますよ」

「それなら、予言の神からの言伝だ。文句は全て聞き入れるし、謝罪ももちろんする。けれど」

「それは全てが終わったあとでってヤツでしょ?」


 その通りだと、アドルさんが申し訳なさそうに笑みを浮かべる。

 アドルさんに向けて手を振りながら前へと出て、ウルルさんに頑張ってと応援され、インジャオさんに気合だよと背中を叩かれつつ、俺は真っ黒な神殿へ向けて歩を進めた。

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