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この行く道は明るい道  作者: ナハァト
第三章 ラメゼリア王国編
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今のままが一番です

 セミナスさんが言うには、これから時間勝負らしい。

 なんでも、これからこの国の……ひいてはこの世界の命運が決するかもしれない事が、どこかで行われるそうだ。


 ……あの、まずはそれがどういう事なのかを教えてはくれないんですか?


⦅マスターが尻込みする可能性がありますので、あとには退けな……直前に確定するまではお教えする事は出来ません⦆


 なるほど。

 俺が尻込むかもしれないような場所だから、あとには退けない状況にまで持っていく、と。

 是非とも詳しく知りたいです。


⦅駄目です⦆


 誠意を込めた交渉術を持ってしても駄目だった。

 セミナスさんの意思は固い。


 で、またこれから二手に分かれるそうだ。

 俺とエイトは、ダオスさんとハオイさんを連れて、バッグラウンド商会へ。

 アドルさんたちは、実は近場にあるという盗賊集団の本拠地へ。


 この盗賊集団は捕まえた盗賊集団とは別の集団だが、間接的に関わっていて、セミナスさん曰く、この辺りの盗賊集団の本丸の本命らしい。

 その盗賊集団のところにアドルさんたちを向かわせる理由は、これまた証拠集め。


 バッグラウンド商会の協力者に関する部分だそうだ。

 そういえば居るんだっけね、そんなのが。


 ……待ったをかける。

 いくらなんでも、戦力を傾け過ぎじゃない?

 アドルさんたちだけでも盗賊集団を無力化出来る事に異論はない。

 バッグラウンド商会に向かう方の実質的戦力が、エイトだけってのが正直不安です。

 俺、まともに戦えないし。


「安心して下さい。ご主人様は、エイトが守ってみせます」


 いや、俺だけじゃなくて、ダオスさんたちの安全性の話なんだけど?


⦅特に問題はありませんが……ふむ。心情的には違うのかもしれませんね⦆


 おぉ、セミナスさんから気遣うような発言が。


⦅私は常に優しいですので、普段から接しているとわかり辛いかもしれませんね⦆


 ………………。


⦅………………厳しく・10、優しく・0、に振り切っていきますか⦆


 いえ、今のままで充分です!

 そのままのセミナスさんが良いな、俺。


⦅愛の告白として受け止めておきます⦆


 いえ、違います。


 ただ、セミナスさんが出した結論は、本命の盗賊集団の方は、アドルたちの力であれば、二人でも問題ないらしい。

 なので、アピールが始まる。


「うむ。ダオス殿たちは私の事を知っている訳だし、共に行動した方が、心強いと感じるかもしれんな」

「やはり、自分が発端で壺が割れ、このような状況になったのですから、その責任を取らせて頂けないでしょうか?」

「あのね。一緒の部屋で過ごして、私とエイトちゃんはもの凄く仲良くなったから! だから今は一緒に居たいかなぁ……なんて」


 ……そんなに行きたくないんだろうか?

 多分だけど、面倒なだけのような気がする。


 ………………。

 ………………。

 無難にインジャオさんを選ぶ。

 アドルさんとウルルさんから文句を言われるが、インジャオさんが一番真っ当な理由だったよね? と言うと目を逸らして黙った。

 あとは露骨に面倒臭いですって顔に出過ぎです。


 そのあとは、着替え戻って来たダオスさんとハオイさんも交えて、話を進めていく。

 俺たちがそこまでの情報を持っている事に関しては、当のセミナスさんが問題ないと太鼓判を押したので、そのままこれまでの出来事を簡潔に伝えた。


「……なるほど。アレはそういう事ですか」

「となると……父さん。アレらも関係しているのではないでしょうか?」


 これまで見た事のない黒い笑みを浮かべる、ダオスさんとハオイさん。

 逆に商人っぽいな、と思った。


     ◇


「……では、行ってくる」


 アドルさんは心底面倒そうに。


「エイトちゃんの事、宜しくね」


 ウルルさんはインジャオさんにそう言って、二人は本命の盗賊集団を捕まえに、セミナスさんの指示した場所に向かっていった。

 当初は殲滅でいくつもりだったのだが、捕らえた方が色々と利用価値があると、ダオスさんとハオイさんの熱弁によってそうなったのだ。


 その時のアドルさんとウルルさんの表情は、言うまでもないだろう。

 なので、本命の盗賊集団の方に向かうのは、アドルさんとウルルさんだけでなく、縄で縛るなどの補佐を行う人たちも付いていっている。


 戦力に関しては追及されなかった。

 もしかして、アドルさんたちが強いって事を知っている?

 もしそうなら……アドルさんたちって有名人なのかな?


 ………………。

 ………………。

 まぁ、今更だな。


 そして、俺、エイト、インジャオさんは、ダオスさんとハオイさんを連れて、バッグラウンド商会に向かう。

 急な話だったが、ダオスさんとハオイさんは既に数人の護衛を引き連れているし、あとで追加の人員も来るらしい。


⦅商会として本腰を入れて動くようです⦆


 セミナスさんが冷静に言う。

 王都ナンバーワンの本気介入って……何それ怖い。

 それでも一応聞いてみる。


「いくらこっちがお願いしたとはいえ、ダオスさんとハオイさんも一緒に来て大丈夫なんですか? こう、商会が忙しいとか、色々あると思うんですが?」

「お気遣いありがとうございます。ですが、孫の将来のためにも、余計なモノは排除しないといけませんので、誠心誠意で事に当たらせて頂きます」

「商会の方は妻と母さんが見てくれていますので大丈夫です。寧ろ、娘に手を出したヤツらに、たっぷりと胸焼けして貰ってそのまま焼き爛れるくらいの後悔を与えてこい、と送り出されていますから」


 いやもう何が怖いって、ダオスさんとハオイさんは、笑みを浮かべてそう言うのだ。

 黒いオーラを背負っているように見える。


「なるほど。それはそうですね」


 俺も笑みを浮かべてそう言う。

 肯定以外の選択肢はない。


「エイトは、ダオス様の孫でハオイ様の娘である子に嫉妬しています。エイトも、ご主人様から束縛されるような愛を向けて欲しいです」


 うん。エイトはちょっと黙ろうか。

 黒いオーラに圧倒されていたので、ちょっと対応が遅れてしまった。

 それに……。


「………………」


 インジャオさんが黙ったままなのが怖い。

 こう、気合が入っているというか、入り過ぎているというか……。

 真面目な性格だから、色々と考え込んじゃっているのかもしれない。


 俺やエイト、アドルさんたちの中で、唯一の良心と言っても良い人だから、出来るだけ早くいつも通りに戻って欲しい。

 そのために、これから向かうバッグラウンド商会の人たちには犠牲になって貰おう。

 好きなだけ暴れれば良いよ、インジャオさん。

 俺は一切邪魔しないからさ。


 それにしても、本当に俺たちだけで大丈夫なの?

 元々インジャオさんが居なくても平気だったみたいだけど。


⦅問題ありません。そもそも、本来は汎用型だけでも終わる予定でしたから。今は骸骨騎士がこちらに来ましたので、より効率よく事を運べないか検討中です⦆


 ……え? エイトだけ?

 それでどうやって相手取るつもりだったのか、とても不思議。


⦅バッグラウンド商会は、ブラック商会ですので⦆


 ………………。

 ………………。

 あぁ! つまり!


⦅本来であれば、バッグラウンド商会に着いた時点でマスターに商売の神を呼んで貰い、適当に任せる予定でした⦆


 そうだと思ったけど……神様すら手駒として使うんですね。


⦅……ふっ⦆


 さすがセミナスさん、としか言えない。


 そうこうしている内に、バッグラウンド商会に着いた。

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