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この行く道は明るい道  作者: ナハァト
第三章 ラメゼリア王国編
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高いモノって扱いに困るよね

 ダオスさんの息子であるハオイさんに、俺だけでなく、エイトとアドルさんたちも自己紹介をしていく。

 ハオイさんは、丁寧に握手を交えて挨拶を交わしていった。


 エイトがまたしても、自分はご主人様の愛人発言しようとしてきたので、急いで取り押さえた事以外は無難に終わる。


「こんな真っ昼間の衆人環視の中でエイトは押し倒されました。そんなご主人様の性癖を、エイトは黙って全てを受け入れます」


 黙ってないし、そんな性癖はそもそもない。

 ねつ造だ。

 ダオスさんとハオイさんから、部屋……用意しましょうか? という視線を向けられる。

 無難に終わらそうという気がないのかもしれない。

 そういう関係ではない、と伝えてはみたが……通じたかどうかは怪しい。


 互いの紹介が終わったという事で、歓待を受ける。

 まずは食事。

 ありがたく頂くし、どの料理も本当に美味しいのだが……どう見ても高級料理。

 お腹を壊して無駄にならないかという事も心配だが、それ以上に値段を知るのが怖い。


 一体いくらくらいに……おっと、考えちゃいけない。

 知ろうとするのは危険だ。


「そうお気になさらないで下さい。五色葉が見つかるまでに必要だと思われた金額からすれば、微々たるモノですので」


 顔に出ていたのか、ハオイさんがそう言う。

 そっか、微々たる……じゃない!


 いやいや、待って待って。よく考えて。

 ハオイさんが言った、五色葉が見つかるまでの予想期間がそれくらいかわからないけど、消費する金額を長時間と短期間で比べるのは違うと思うんですけど!

 笑って誤魔化された。


 ……うん。そうだよね。

 目の前に美味しいご飯があるだけで充分じゃないか。

 そもそも、今は他の事を考えている余裕なんてない。

 遠慮がないエイトとアドルさんたちによって、目の前の料理が次々となくなっていく。

 俺だってここぞとばかりに食べたいんだから残して、あっ! 俺が狙っていたヤツ!


 退いてはいけない戦いが、ここにある!


     ◇


 食事が済めば、次はお風呂……の前に、宿に案内される。

 どうやら、ダオスさんが手配してくれていたようだ。

 宿は、一階が繋がっている隣のでっかい建物だった。


 ドンラグ商会直営の宿屋。

 王都内最高級宿の一つに数えられるらしい。


 案内されたのは、これまた最上階の大きな部屋の二室。

 どちらも似たような造りで、置かれている物はこれまた高級そうな物ばかり。

 特に、用途がよくわからないけど棚の上に置かれている壺とか高そうだ。

 トイレ、風呂が別で、寝室もあり……ベッドがふかふかだぁ!


 ハオイさんからの説明を聞く限り、元の世界でいうところの、ロイヤルスイートのような部屋だと思う。

 いや、そんなところに泊まった事はないから、この世界のそういうレベル、という感じだけど。


 ……はっきり言って落ち着かない。

 拒否する。

 もっと安くて狭い部屋に――。


「娘の恩人を安い部屋に泊める訳にはいきません。ドンラグ商会の恥となります」


 拒否された。

 アドルさんたちも抵抗が激しく、俺が折れる。

 なんか物を壊しそうで嫌なんだけどなぁ……。


 ただ、誰がどっちを利用するかの配置には、必死に抵抗した。

 当初は、俺とエイトで一室、アドルさんたちで一室、だったのだが、これにウルルさんが抵抗。

 ウルルさんが、明らかに邪魔者を見るような目で、アドルさんを見ている。

 もちろん、俺も抵抗。

 ただでさえ気が休まりそうもないのに、エイトと二人なんて、寝込みを襲われないか心配で逆に休まらない。


 結果、俺とエイトとアドルさんで一室、インジャオさんとウルルさんで一室、という形に落ち着いた。

 ウルルさんと力強い握手を交わす。


 が、これにエイトが反対し、明らかに邪魔者を見るような目で、アドルさんを見る。

 エイトとウルルさんから要らない子扱いされたアドルさんが非常に落ち込む。


 結果、男性陣で一室、女性陣で一室、という形で終わった。

 ………………よし!


     ◇


 そして最後は、待ちに待ったお風呂タイムである。

 エイトはウルルさんに任せ、向かうのは宿屋側の建物の裏手にある温泉。

 なんでも、王族も利用した事があるそうで、物理的な壁と魔法的な結界で、プライバシーは完全に守っているそうだ。

 罠もあるとか。

 ……もうなんか麻痺してきた。


 というか、この世界にも温泉とかあるんだ。

 ……でもまぁ、ポーションとか馬車とか、この世界ってちゃんと発展しているモノもあるから、今はある事に感謝しておこう。


 なので、あとは温泉を存分に楽しむ事にする。

 ドンラグ商会として、今日は貸し切っているそうなので、利用するのは俺たちだけ。

 ……申し訳ない……でも、ありがとう。

 おかげで他の人に気兼ねする事なく入れます。


 という訳で、異世界初の風呂……いや、温泉!

 大満足です、セミナスさん。


⦅………………⦆


 セミナスさんは何も言わない。

 これまでの野宿で、体を拭いている時や川で汚れを落としている時など、俺のプライバシーを守るべき時は守っているようで、こういう時は返事がない。

 緊急性があれば別かもしれないけど。


 ……のぞきに夢中って訳じゃないよね?


⦅………………⦆


 反応なし。

 大丈夫なようだ。


 なので、まずは髪を洗って……ワシャワシャ………………はっ! 当たり前のように洗っていたけど、シャンプーとリンスっぽいのがある!

 ボディソープっぽいのも!


 ……匂いも良い。

 ……洗い落としたあとも問題ない。

 ……体を洗えばつるつる、と。


 この世界は……本当に発展しているモノは発展しているんだな。

 俺が思い付くようなモノで、知識チートは出来ないようだ。

 さすがに、プラスチックの容器ではなく、ガラスの容器だけど。


 でももう、そんなのはどうでも良い。

 今は温泉を楽しむだけである。


「ふぃ~……」


 温泉に浸かると、思わず声が漏れてしまう。

 アドルさんとインジャオさんも、同じように温泉に浸かると声が漏れていた。


「ふぅ……久々だが、やはり気持ちが良いな」

「そうですね。骨身に染みます」


 そりゃ、インジャオさんは染みるでしょうよ。

 直なんだから。

 と、いつもなら突っ込むが、今は無理。

 温泉、気持ち良過ぎる。


 ………………。

 ………………。

 存分に堪能した。

 疲れが湯に溶けたのか、温泉から出ると目蓋が重い。


 アドルさんは既に眠り、インジャオさんに担がれている。

 ……気持ち良さそうな寝顔だ。

 本来なら、女性陣を待つべきなのかもしれない。

 出て来たところの色気にあてられてドキドキするとか、そんな事に………………いや、冷静に考えてないな。


 エイトは見た目が子供だし、ウルルさんはインジャオさんの恋人だ。

 うん。なんにも思わない。


 なのでもう寝ます。


⦅それがよろしいかと。明日からまた忙しくなりますし⦆


 セミナスさんもそう言っているし。

 あっ、温泉から出たから、もう普通に反応してくれるんだよね?


⦅はい⦆


 うん。良かった。

 ……あれ? 今なんか、セミナスさんの言葉に引っかかったような気がする。

 なんだろ……眠気で頭が重い。


⦅お気になさらず。今は早々に眠る事を推奨します⦆


 じゃあ、セミナスさんもそう言っているし、もう寝る。

 でも、ここで寝るのは……さすがに駄目だよね?

 あっ、そういえば、部屋取って貰ったんだっけ。

 一番上の景色が良くて、ベッドがふかふかの部屋。


 インジャオさんは待つそうなので、アドルさんを受け取り、背負って……部屋に戻って………………寝た。






 翌日、アドルさんに起こされる。


「……んん、なんですか? アドルさん」

「アキミチ……朝起きたらインジャオが倒れていて、壺が割れているのだが」

「なんですって?」

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