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この行く道は明るい道  作者: ナハァト
第三章 ラメゼリア王国編
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ちょっとした歴史と名が残り

 目指している王都が見えてきたと教えられたので、馬車の扉を開けて身を乗り出す。

 どれどれ……。

 ………………。

 ………………。


 うん。真っ白で高い壁と、城っぽいモノの尖塔? みたいな部分しか見えない。

 ですよね。わかるわかる。

 魔物が居るんだから、侵入されないように対策するのは当然。


 タイミング的に早かったと、大人しく馬車の中に身を引っ込めて、大人しく鎮座する。

 エイトが、ポンポンと俺の太ももを軽く叩く。

 ……慰めているのかな?


「子供のような可愛さでしたよ、ご主人様」

「があ~!」


 あえていじる事で、俺が恥ずかしさを感じないようにしてくれた……か、どうかはわからないが、そう思う事にした。

 それから、王都に着くまでもう少しかかるそうなので、俺は気になる事を尋ねる。


「このラメゼリア王国の王都の名称はなんていうんですか?」


 王都。

 いや、これだけだと、どこの? とかになってしまうのは明白だ。

 国の数だけある訳だし。

 わからない事は素直に聞く。


 ダオスさんが答えてくれた。


「王都・エアリーです」

「なんか人の名前みたいですね」

「さすが、鋭いですな。アキミチ殿」

「どうも。……あれ? 鋭いという事は」


 本当に人の名前が由来だった。

 アドルさんとダオスさんが説明してくれる。


 この世界で制定されている年号は「大陸歴」。

 現在は、115年目。

 では、その元年に何が起こったかというと、とある兄妹を中心にした世界統一国家「ルベライノト」が建国されたのだ。

 今はもうその国家はなくなっているそうだけど。


 その中心となった兄妹の名が、「兄・アイオリ」と「妹・エアリー」である。

 ダオスさんからこの兄妹の名が出た時、アドルさんが懐かしそうに目を細めたのが印象的だった。


 ……知り合いなのかな?

 考えてみれば、俺はこの世界の寿命とか知らない。

 元の世界以上に色んな種族が居そうだし、考えられないような長命な種族が居ても変じゃないと思う。


 吸血鬼なんてその最たる例の一つだし、アドルさんが知っていてもおかしくはない……かな。

 と、思考が逸れた。


 それで、兄であるアイオリは上大陸の北に、妹であるエアリーは下大陸の南に、それぞれ王城を築いて、自分が居る大陸を治める。

 上下の王城と同時に城下町も建設され、世界統一国家ルベライノトの王都となった。

 その王都の名は、それぞれ王の名を関している。


 上大陸の方が、王都・アイオリ。

 下大陸の方が、王都・エアリー。


 何か懐かしんでいるアドルさんが言うには、当の兄妹は恥ずかしがって最後まで抵抗したそうだが、家臣団が押し切った……らしい。

 やっぱり知り合いなんじゃない?


 けれど、既に世界統一国家ルベライノトは存在しておらず、今は三大国といくつかの国家に分かれているらしい。

 正確な数は? と尋ねると、アドルさんとダオスさんは揃って唸る。

 まぁ、こういう世界じゃ把握するだけでも難しいよね。


 それで今は、三大国の一つ、ラメゼリア王国が王都・エアリーを名と共にそのまま使用しているそうだ。

 王都の名を変えていないのは、偉業を成した兄妹を称えて、との事。

 偉業って……何をしたんだろう?


 その事を聞こうとした時、とうとう王都に辿り着いた。

 まぁ、良いか。

 そこら辺は、また何かあれば、で。


     ◇


 王都は魔物などの侵入を防ぐために、白く高い壁に囲まれている。

 となると、当然、出入り口が必要だ。


 ……門。でっかい門。


 首を曲げないと確認出来ないくらいにでっかい。

 それと、でっかい門の前には兵士っぽい人たちと長蛇の列。

 馬車や徒歩、様々だ。


 門の前の兵士たちは、入る人たちと出て行く人たちをチェックしているように見える。

 実際に盗賊が居た訳だし、そういう事への警戒の一つだろう。

 それと見た感じ、長蛇の列は門の右側から入るように並んでいる。

 となると、左側は出て行く方なんじゃないかと思う。

 きちんと整理されているようで、なにより。


 兵士たちのチェックは速く、列もぐんぐん進んでいくが、もう少し時間がかかりそうかなぁ……なんて思っていると、俺たちを乗せた馬車はぐんぐんと進んでいき、門の左側で止まる。

 そうなると、当然のように門前の兵士たちはこちらを警戒してきた。

 どうするだろうと思っていると、ダオスさんが腰を上げる。


「一度失礼します。色々と説明を行わないといけませんので」


 そう言って馬車から出て行き、門前の兵士たちのところに向かっていった。


「……説明?」


 何を? と思うと、アドルさんが言う。


「盗賊を乗せているだろう」

「あぁ!」

「それに、だ。ダオス殿の話によると、騎士団が動くほどの盗賊騒動があったのだから、盗賊に関しては国全体として気を張っていてもおかしくない。また、アキミチの世界ではどうかわからないが、王都ほどの大きさだと、馬車で数日の距離はまだ警戒範囲内だ。その範囲内に盗賊が現れたのだから、緊急性は高いと言える」

「なるほど」

「元とはいえ、ダオス殿はこの王都で一番の商会の会長でもあったのだから、そこらを加味した上で、即座に話を通す必要性があると判断したのだろう」

「ふむふむ………………一つ、良いですか?」

「何が聞きたい?」

「いや、聞きたいという事ではなく、アドルさんが出来る大人に見えました、と伝えようと思って」


 そう言うと、アドルさんが少し固まった。


「………………はあ~? 私は元から出来る大人だ!」

「え? どこがですが? 自分で出来る大人だと言うのなら、毎朝きちんと起きて下さいよ。昨日なんて涎垂らして、ダオスさんが苦笑いでしたよ」

「……くっ」


 アドルさんが顔を逸らして、悔しそうに拳を握る。

 どうやら論破してしまったようだ。

 勝ち誇った顔をしていると、アドルさんが視線を戻してきた。


「そういうアキミチも気を付けた方が良いぞ。セミナスさんと長話をしている時、間抜けそうな顔になっているからな」

「ムキャー!」


 アドルさんと取っ組み合いを始める。


「……もう王都に入ったというのに、一体何をしているのですか?」


 ………………。

 ………………。

 ん? あ、あれ? いつの間にかインジャオさんが居る。

 ちょっとアドルさん、タイム。休憩。

 なんか王都に入ったっぽい。


 ……おかしいな。

 初王都入りは、もっとこう……感慨溢れるモノだと思っていたんだけど。

 とりあえず、ばんざいして喜びを表現しておく。

 エイトが真似して、アドルさんも付き合ってくれた。


     ◇


 馬車を下りる。

 人、人、人……。

 この世界に来て、初めてこれだけ多くの人が居るのを見た。

 しかも、なんか頭から角が生えている人や、目が三つある人、視線を誘われる際どい服装の女性、自信満々で上半身が裸体の男性など、多種多様。


 おぉ、獣人!

 ……当たり前だけど、ウルルさんとは違う種族も居るんだな。新鮮。


 エルフも!

 ……シャインさんと違って大人しい。当然だけど、基準はこっちかな。


「そういえば、アキミチがこの世界でこれだけの人たちを見るのは初めてか」

「そうですね。……人によっては、人の多さに酔うなんて事があるみたいですから、気を配っておいた方が良いかもしれませんね」

「という事らしいけど、大丈夫? アキミチ」


 ウルルさんが気遣うように俺を見てくる。


「え? この程度の人数で酔ったりしませんよ。元の世界はもっと人で溢れる場所が多々ありましたから」


 本当に大丈夫だと、親指を立てておく、


「「「………………」」」


 疑わし気な目で見られる。

 もっと信用してよ!


 そんなに俺って貧弱……この世界の人たちからすればそうかも。

 特にアドルさんたちのような強い人たちからすれば……な~んて思うか!


 だったら、元気だって事をわからせてやる! と襲いかかるが返り討ちされた。

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