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この行く道は明るい道  作者: ナハァト
第三章 ラメゼリア王国編
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進む進む……目的地までだけど

 馬車に乗りながら、俺は先ほどまでの事を振り返る。

 採取した五色葉は、王都に向かう道中で助けた商人、ダオスさんの孫を助けるために必要だった。

 五色葉を渡したあと、ダオスさんは俺たちが王都に向かっている事を知ると、即座に横転した馬車を一人で立て直し、どうぞお乗り下さいと馬車の扉を開く。


 ……どう考えても商人の力じゃない。

 やっぱり、ダオスさん一人でも盗賊集団をどうにか出来たんじゃないかと思う。


 でも、正直言って助かる。

 このまま徒歩で向かうモノだとばかり。


⦅事前にどこかでペースアップを図るとお伝えしていましたが?⦆


 ………………そういえばそんな話もあったような。

 でもまぁ、実際にこうして楽が出来るのだから、気にしない。

 という訳で、ダオスさんという協力者を得て、俺たちは馬車で王都に向かう事になった。

 エイトが俺の隣を陣取って動かず、何故か片手が俺の太ももの上に置かれているが……そこに触れないでおこう。

 状況が悪化しそうだから。


 ちなみにだが、ちゃんと御者さんが居たけど非戦闘員だったそうで、ダオスさんの指示で隠れていた。

 それと、盗賊集団を縛り上げていた武装していた人たちは、ロマン心をくすぐる「冒険者」と呼ばれる人たちだった事が、馬車に乗ったあとにダオスさんから発覚する。


 そういう事は、馬車に乗る前に教えて欲しかった。

 あとで色々聞こう。

 男性二人と女性三人だったから……話しかけるなら男性二人の方だな。

 女性三人の方に話しかけると、セミナスさんやエイトから何を言われるかわからん。


⦅適切な判断だと申しておきます⦆


 セェーフゥー。

 俺の判断は正しかった。

 でも、セミナスさんなら冒険者の事も教えられるんじゃ?


⦅知識として教える事は可能ですが、マスターが望むような体験談は不可能です⦆


 それはそうか。

 なら、やっぱり、冒険者の事を知るなら冒険者ギルドに行って美人の受付嬢から聞き、そのまま本職の冒険者に体験談を語って貰おう。

 その方が絶対楽しいし!


⦅そのような時間があるかわかりませんが……まぁ、やりくり出来ないか検討してみます⦆


 ありがとうございます!


⦅美人の受付嬢は約束出来ませんが⦆


 うん。それは別にどうでも良い。

 冒険者ギルドの受付嬢が美人ってのは、ライトノベルだと大体そうだから、という感じで思っただけだから。


⦅本当にマスターのそういうところは……好感度を上げておきます⦆


 なんで!

 意味がわからない。


 そして、盗賊集団だが、本来なら然るべきところに引き渡せば金が貰えるそうなのだが、ダオスさんが何やら色々と裏がありそうだから調べたいと言うので、好きなようにして下さいとお任せする事にした。

 のだが、何故かダオスさんから、引き渡せば貰える金額の三倍渡しますと言い、アドルさんがそれを了承。


 アドルさんが言うには当然のやり取りらしいけど、俺の懐には入らないだろうから関係ない。

 でも、それで良いんだろうか? と思ったのだが、全然問題ないらしい。

 なんでも、ダオスさんが運営していたドンラグ商会は、これから向かう王都でナンバーワンの商会なんだそうだ。


 つまり、ダオスさんは金持ち。大金持ち。超金持ち。リッチ。ブルジョワ。なのだ。

 オールオッケー。

 となると、あとはどうやって盗賊集団を運ぶかだが……それは盗賊集団が使っていた二台の馬車を利用する事になった。


 馬車四台、縦一列で進んでいる。

 一台目、冒険者一人、インジャオさん、ウルルさん。

 二台目、御者、ダオスさん、アドルさん、俺、エイト。

 三台目、冒険者二人、縛られた盗賊集団半分。

 四台目、冒険者二人、縛られた盗賊集団半分。

 という形だ。


 ちょっと待て!

 太ももに置かれたエイトの手がゆっくりと昇り始めてきた。

 俺は無言で抵抗していく。

 互いに手だけの攻防だが、中々熱い闘いだ。


 エイトの手が向かおうとしている先がどこなのかは、考えないようにした。


 ……それにしても、五色葉が悪い事に使われなくて良かったと思う。

 採取はセミナスさんの提案だったから、もっとこう……この五色葉が必要な悪党から情報を得るためとか、情報を得たあとは目の前で粉微塵に粉砕するとか、そういう事に使うのかと。


⦅心外です⦆


 セミナスさんから苦情が入る。


⦅マスターは、私をどのような存在だと思っているのですか?⦆


 全ての出来事においての黒ま………………小さい頃に憧れる隣のお姉さん風?


⦅………………⦆


 ………………美人の。


⦅………………⦆


 ………………俺を弄んじゃう的な。


⦅良いでしょう。マスターがそれを望むのであれば、弄ぶだけ弄び、私なしでは生きられないようにしてあげましょう⦆


 どうしよう。

 これまでで一番の本気を感じる。


 心の中で死ぬほど謝って、バッドエンドはなんとか回避した。


 ただ、これらの事は別に大した事じゃない。日常だ。

 俺が一番衝撃を受けた大した事は、別にある。


 それは、馬車。

 そう、馬車。

 どこからどう見ても、汽車。


 間違った。

 時代を進め過ぎてしまった。

 で、馬車とくれば、大抵の場合は乗り心地が悪い、である。


 元の世界で読みまくった異世界物のラノベの中に出てくる馬車は、大抵そう。

 ここは異世界なのだから、例に漏れず、なのは間違いないはず。

 いやもう、アレだな。

 異世界物のラノベは、参考書だ。


 という訳で、ここで必要になってくるのが、「スプリング」である。

 ここで俺が馬車の乗り心地の悪さを提示し、スプリングの事を話す。

 そこからあれよあれよという間に話が進み……知識チートが始まる。


 のちに、大富豪となる俺の第一歩に………………馬車の乗り心地、めっちゃくちゃ良い。

 揺れなんか一切なく、抜群としか言いようがなかった。

 どうなってんの、これ?


⦅魔法的処置が施され、揺れに対する大きな軽減と、馬車内で快適に過ごせる空間の形成と維持を保つ結界をメインに、細かい部分にも手が加えられています。簡単に説明するのであれば、馬車自体が魔導具である、という認識で構いません⦆


 なるほど。

 でもほら、この馬車は王都ナンバーワン商会の元会長であるダオスさんが乗るからであって、他の馬車は――。


⦅この世界の馬車の標準装備です。故に、内装にどれだけお金をかけているかによって、地位の違いなどが表されるようになっています⦆


 言われて確認してみる。

 座椅子、ふっかふか。

 冷温の飲み物、完備。

 あと多分、座椅子をくっつけたらベッド。毛布有り。


 さすがにトイレと風呂はないけど……快適過ぎる。


⦅ちなみにですが、こうなった経緯は前大戦時において、乗り心地が悪過ぎるために戦地に到着して直ぐ戦いに赴けないと、至るところで苦情が上った事にあります。当時の魔導具職人の創意工夫が実感出来ますね⦆


 くそぉ……ポーションの時といい、この世界で知識チートは出来ないんじゃないだろうか?

 ………………。

 ………………。

 まぁ、それならそれで別に良いか。


 そういう知識が既に広がっているのなら、その分快適に過ごせるという事なんだし。

 ……まぁ、漸くその恩恵に与れた訳だけど。


 そんな感じで快適な馬車移動が続き、馬車内で再度ダオスさんに感謝されたり、インジャオさんからの鍛錬で馬車と並走させられたり、太ももの上で迫るエイトの手と攻防を繰り広げたり、実際に座椅子がくっついてベッドになった事にガッツポーズしたりと……数日後。


 馬車内で、遠慮がなくなってきたエイトとの攻防でがっぷり組み合って――思った以上に力が強い――いると、ダオスさんから王都が見えてきたと教えられる。

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