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この行く道は明るい道  作者: ナハァト
第三章 ラメゼリア王国編
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別章 閑話のような間の話 咲穂編

今回と次回は、ちょっと息抜き。

 異世界に召喚された者たちの一人、風祭咲穂かざまつり さきほ

 元々誰にでも物怖じしないフレンドリーな性格というのもあるが、可愛らしい見た目も相まって、老若男女問わず人気が高い。

 人気が高いという事は、それだけ構われるという事だ。


 咲穂は特にそれが顕著だった。

 何しろ、通っている高校ではアイドル的存在なのである。

 しかも「クラス」の、ではなく「学校の」でだ。


 ただし、「アイドル的存在」の前に、「マスコット」という言葉が付くのだが。


 何故かというと、その理由は単純明快。

 小さくて可愛らしいからだ。

 どこが、ではなく、全体的に。

 高校二年生なのに、小学生高学年と言っても通用するくらいに。


 特に可愛いモノ好きな女性たちに可愛がられる事が多く、上級生同級生下級生問わず、何故かお昼休みにはお菓子が差し入れられているのだが――。


「もう! 私は子供じゃないのに!」


 と文句は言いつつも、お菓子に罪はないし粗末にしちゃいけないよね、と建前の言い訳を述べ、笑みを浮かべながら頂いていた。


 また子供料金設定があるところでは、ほぼ確実に子供料金が向こうから薦められる。

 咲穂が、自分は高校二年生と申告しても、優しい笑みを返される事も多かったが。


 故に、咲穂は子供扱いされる事を嫌い、年相応、もしくは大人扱いされる事を望んだ。

 もちろん、行動にも起こしている。

 子供ではないと、子供料金はきちんと断っていた。


 そんな咲穂が気軽に接して心を許しているのが、親友――明道たちである。

 咲穂が明道たちと知り合うきっかけとなった出来事は、中学三年生の頃。

 見た目で大人扱いされる事の多い水連に、咲穂が興味を抱いたのは当然の流れだろう。


「どうしたらそんなに大人っぽくなれますか! 是非ご教授を!」

「……えっと、言っている意味がわからないんですけど」


 そんな第一次接触から、咲穂と水連の友人関係が始まる。

 友人関係は、水連経由で常水と出会い、そこから明道たちに続き、いつの間にか親友と呼べる存在になっていた。


 咲穂が明道たちを親友と呼べるようになった最大の理由は、やはり子供扱いされない事である。

 水連から咲穂の思いというか考えが伝わっていたのか、明道たちは最初からそういう態度も視線も向けず、同い年の友として接していたのだ。

 もちろん、咲穂は自分の思いと考えを、明道たちにきちんと伝えている。


「咲穂を子供扱いなんて出来る訳ないじゃん。迫られたらドキドキする、魅力に溢れた女性だよ」

「ふぅ~ん。明道は私みたいなのがタイプなの? それとも、ロリコ」

「あらぬ疑いをかけるのはやめようか」


 咲穂は親友たちと行う、殊更こういう他愛ない会話を楽しんだ。

 ただ、この会話のあと、咲穂は天乃と水連によって連行されたが気にしてはいけない。

 ……何やらそのあとから仲良くなったようだが。


 そして咲穂は、異世界に召喚された事を少しだけ……好機と捉える。

 ここでなら大人扱いされると信じて――。


     ◇


 咲穂はとある物を誰にも見られないように握り締めながら、城内の廊下を足早に歩いていく。

 急いでいるというのは、その姿を見ればわかる事。

 その咲穂の後方を、慌てた様子の水連が付き従っている。


「……咲穂、落ち着こ?」

「いいや、水連! これは落ち着いていられない! そう、これは私が落ち着いて良い事ではない! 甘受してはいけない事なの!」


 咲穂は憤慨していた。

 自然と、とある物を握る力が更に大きくなる。

 そのまま水連を連れて咲穂が目的の部屋の前に辿り着くと、無遠慮に扉を開けて中の様子を窺う。

 この部屋は専用の休憩室なのか、何人ものメイドが談笑したりお茶を酌み交わしたりと、のんびりと過ごしていたのだが、今は突然の来訪に驚いていた。

 そんな中、咲穂は目的の人物を発見する。


「ロロナスさん!」


 名を呼ばれたメイドの一人に、他のメイドたちから注目が集めった。

 薄い緑色のゆるふわ長髪に、優しい目元の美人のお姉さんという感じ。

 普段は醸し出す雰囲気も優しいのだが、今は困惑中である。

 はて? と首を傾げ、何故自分が呼ばれたのかわかっていない。

 スタスタと咲穂はロロナスの前まで行く。

 咲穂の後ろに居る水連は、申し訳なさそうな表情を浮かべていた。


「一体どういう事ですか!」

「えっと、どうかされましたか? サキホ様」


 咲穂が憤慨しているのは見てわかる。

 しかし、何に憤慨しているのかは、ロロナスにはわからなかった。

 ロロナスは、詩夕たちのお世話を命じられているメイドの一人である。

 主に、女性陣の方を担当していた。


「どうかされましたかじゃないです! これはどういう事ですか!」


 そう言って、咲穂がロロナスに見せるのは、握っていたとある物。

 ロロナスの目の前に突き出す。

 掌の上に乗っていたのは、女性用の下着。

 兎のアップリケが付けられている可愛らしいモノ。


「えっと、私がサキホ様用に用意した下着のように見えますが?」

「それで間違いはありません! 他のメイドさんに聞きましたから! でも、間違いなんです! これは間違いなんです!」


 間違っていないけど間違っている、の意味がわからず、ロロナスは更に困惑する。


「……何か間違えましたか? サキホ様に似合う下着を選んだつもりだったのですが?」

「その気持ちはありがとう! でも、間違ってます! 私に似合うのは黒いのとか透け透けとかレースとか、もっと大人っぽい、アダルティな下着だから!」


 ふんっ! と咲穂は言い切った。

 言い切られたロロナスは、咲穂の上から下、下から上へと確認するように視線を動かす。


「サキホ様にはこちらの方が似合っていると思いますよ? 可愛いですし。そういうのは、もっと大人になってから……せめて、スイレン様くらいに大人になれば」


 丁度ロロナスの視界に入ったためか、水連が引き合いに出されてしまう。

 水連はビクッと小さく飛び上がるが、ロロナスの言葉に他のメイドたちが同意するように頷いた。


「がぁー! 私と水連は同い年! だから私も大人だからぁ~!」


 傍目から見ると小さな子が癇癪を起こしたようにしか見えないが、咲穂はキレた。

 これまでも小さな見た目に触れられる事が多かったのだろう。

 徹底抗戦の構えである。


 大人な下着を身に付けたい咲穂と、可愛いモノを身に付けさせたいメイドたちの間で行われたこの攻防は、のちに「咲穂・メイドの乱」と呼ばれたり呼ばれなかったりした。

 決着は着いていない。

 終わりのない平行線である。


 ちなみに、関わってはいけないと、男性陣は完全ノータッチであった。

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