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この行く道は明るい道  作者: ナハァト
第三章 ラメゼリア王国編
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書類の中身はロクなモンじゃない

 アドルさんたちとは、まだ別行動のようだ。

 えぇ~、折角合流したのに、まだ別行動なの?


⦅……既に神殿遺跡内外の敵の排除は完了している事を確認しました。マスターの安全は確保されたと思うのですが?⦆


 いや、それはそうなんだけど………………ほら、ね?

 やっぱり、一人は寂しいでしょ?


⦅私が居ますが?⦆


 ………………。

 ………………。


⦅他にも汎用型が居ますが?⦆


 ………………。

 ………………ですよね~。

 多分、これは何を言っても無駄なのだろう。


⦅理解が早くて助かります。では、これからの行動を説明しますので、そこの吸血鬼たちと汎用型に伝えて下さい⦆


 ……はい。

 セミナスさんの説明によると、アドルさんたちはこの集団を捕らえて連れて行くための人手を呼びに、近くにある町に向かって貰うそうだ。

 町があるのなら、是非とも俺も行きたいんだけど?


⦅汎用型とお留守番です⦆


 はい。

 説得を試みたが駄目だった。

 でも、それなら、アドルさんたちは三人でなくても良くない?

 誰か一人残してくれても……。


⦅三人で行く事に意味がありますので⦆


 という事らしい。

 なら、きっちりとお留守番をしようじゃないか。

 考えてみれば、俺ももう高校二年生……お留守番くらいは簡単に出来る!

 時間潰しくらい携帯一つで……は手元にないから、ゲームか漫画……もない。


 ……うん。詰んだ。


⦅詰んでいません。マスターにはお留守番をしている間に、吸血鬼たちが手に入れた証拠の書類を読んで頂きます⦆


 やる事があるなら問題ない。

 お留守番しようじゃないか。


 という訳で、アドルさんたちからなんらかの証拠の書類を渡して貰う。

 アドルさんたちは時間をかけたくないと、そのままさっさと行ってしまった。

 一応、セミナスさんの予想だと、大体丸一日かけて戻って来るそうだ。


 あれ? 思っていたよりも町が近いのか?


⦅近いのではなく、行きは吸血鬼たちの脚力、帰りは馬車だからこそです。正確には、行きはそれほどでもありません。丸一日かかるのは、ほぼ馬車での時間です⦆


 なるほど。

 なら思っていたよりも近いと考えても仕方ないだろう。

 何しろ、ここまで野宿野宿の徒歩ばかり。

 馬車なんて乗った事ないし。


 ……悲しくなってきた。

 文明に触れたい。


 ただ、今はそういう思いやアドルさんたちが居なくなった寂しさよりも、セミナスさんとエイトだけという事に不安を覚える。

 今の心の内は、前門の虎、後門の狼、かな。


⦅そのこころは?⦆


 ………………。

 ………………。

 逃げられず、やられる未来しか見えない。

 このお留守番が無事に終わる事を祈っていると、エイトが俺の服をくいくいと引っ張っている事に気付く。


「ん? どうかした?」

「ご主人様と初めて二人きりで明かす一夜……これが初夜ですか?」

「違うわっ!」


 エイトを作った神様たちに、本気で抗議したい。


     ◇


 結果としてだが、お留守番は無事に終わった。

 俺がなんらかの証拠の書類を読むように言われたように、エイトにもやる事があったのだ。

 それは、受け渡しをスムーズにするために、倒した敵を神殿遺跡入り口前に集める事。

 それなりの人数だし、散らばっているので時間がかかるのだ。


 俺も最初は手伝おうとした。

 見た目が幼いエイトだけに任せるのも外聞が悪いし。

 まぁ、ここには俺しか居ないけど、気分の問題である。


 それに、意識があるならまだしも、気を失っているのなら全く怖くない。

 ……いや、でも……別に命は取っていないから、気が付けば普通に行動可能だ。

 若干何名かは縛られた上に吊るされているので、時間はかかるだろうけど。


 あれ? そういえば、エイトが魔力でロープを作っていたけど、あれって耐久的にどうなの?


⦅作り出した者の魔力操作の習熟度に比例します。未熟な者であれば直ぐ切れたり、消えたりしますが、汎用型は仮にも神共が作りましたので、その辺りに抜かりはありません。汎用型が自らか、同じくらい魔力操作に長けている者であれば簡単に切れますが、何もしなければ最短でも一週間は持つでしょう⦆


 思っていたよりも長い!

 というか、神共って!


 でも、そういう事なら、相手を倒せる力がない俺でも運ぶくらいは………………ちょっと待って。

 今、倒せる力がないという部分で思い付いたけど、相手の力を利用する合気道とかどうだろう?

 ……いや、良いかもしれない。

 そして俺は、この世界で普及する事になる合気道の先駆者に!


 ただ、問題なのは、俺に合気道の知識なんかないって事だ。

 どうにかなりませんか? セミナスさん。


⦅なりません。神から与えられた知識の中に該当するモノはありませんし、マスターの記憶の中にない知識では私も知りようがありませんので、申し訳ございませんが対応出来かねます⦆


 そうなんだ。


⦅はい。せめて、そういう系統に明るい神が居れば可能かもしれませんが……⦆


 なるほど。

 神様解放を続けていけば、いつかは……と。

 世界を救うなんて大きな目標も良いけど、もっと身近な目的があると、モチベーションも保ちやすいよね。


 と、話が逸れたが、最初はエイトを手伝って敵を集めようとした。

 ……でも、重い。

 人って……こんなに重いんだね。

 軽々と運ぶエイトを見て………………筋トレを頑張ろうと思った。


 腕がぷるぷるし始めた辺りで敵を集めるのはエイトに任せ、俺はなんらかの証拠の書類を確認する。

 ……ぷるぷるするから読みにくい。


 というか、なんでこれを読まないといけないのか………………はっ! もしかして、セミナスさんは俺がこの世界の文字をきちんと覚えているかを確かめようとしているのでは?

 で、読めなければ、女教師スタイルで教え始めるとか?

 ………………アリだな。もちろん、眼鏡装備で。


⦅お望みとあれば⦆


 テンション上げて読み始める。

 ………………。

 ………………。

 普通に読み終えてしまった。


 もっと難しい単語とか説明文にしておけよ!

 心の中でそう叫びつつ、自分の頭脳が優れているからだと慰めておいた。


 ただ、なんらかの証拠の書類の内容は……酷い。

 要約すると、ローブを纏っていた人たちは、「秘密裏で非公式の魔法使い部隊」で、戦士職の人たちはその護衛で、その魔法使い部隊が何を目的に動いていたのかだが……秘密裏で非公式なだけあって、ろくなモンじゃない。


 本当かどうかは疑わしいが、魔物は世界各地に点在する「魔力溜まり」と呼ばれる、大気中の魔力が集中する場所から生まれているらしい。

 それで、この魔法使い部隊の目的の大半は、その魔力溜まりに魔力を注ぐ事だそうだ。


 ……つまり、人為的に魔物の数を増やそうとしている?


 想定よりも少ないが、一定以上の成果は出ていると書かれているので、間違いないと思う。

 エイトが運び出したローブを纏う人たちに視線を向け、それは人としてやっちゃ駄目だろう……と非難する視線を向けておく。


 読み進めていくと更にわかった事があり、上っぽい人の指示する貴族領地で同じ事を行い、魔物の数を増やして氾濫させたりもしていた。

 そんな事態が起これば、当然のように冒険者たちが討伐のために動くが、この魔法使い部隊はその邪魔もしていたようで、冒険者側にも被害が出ているようだ。


 本当……ろくでもない部隊だな。

 これだけの人を集められるのなら、もっと別の世の中的に良い事に力を注げば良いのに。

 惜しむらくは、この書類の中に、黒幕であろう上っぽい人の存在は出てくるが、名前や素性などが一切わからない事だろうか。


 ……セミナスさんなら知っていそうだけど。


⦅当然知っています⦆


 ですよね。

 ちなみにだけど……それが誰かを教えては……。


⦅物怖じされては困りますので、その時が来るまでは教えません⦆


 おっと、俺が物怖じするような人なの?

 ………………。

 ………………。

 普通に考えれば、秘密裏にこれだけの人数を動かしているんだから、余程の金持ちか、国の中でもトップ、もしくはそれに近いくらいの権力でもないと……いや、これ以上考えるのはやめておこう。

 考えているだけで物怖じしそうだ。


 丁度その時、エイトがローブを纏う人たちを担いで戻り、山のように人が積み上がっている場所に置いていく。

 その一連の動きを見て、俺はエイトに声をかける。


「エイト。どうやらかなりろくでもない連中みたいだし、もっと手荒に扱って良いよ」

「わかりました。お任せ下さい」


 エイトと親指を立て合う。


 そして、翌日の夕方前くらいに、アドルさんたちが戻って来た。

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