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この行く道は明るい道  作者: ナハァト
第三章 ラメゼリア王国編
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メインですか? サブですか?

 神殿遺跡に居たローブを纏う集団は、アドルさんたちとエイトによって、あっという間に倒されていった。

 アドルさんたちとエイトの通った通路には、ボコボコにされているローブの人たちが残されている。


 アドルさんたちは、最初は丁寧に気絶させていったようだが、途中からもう面倒になったようで、拳もしくは足裏の跡が残るようになっていった。

 うぅむ。痛々しい。

 まぁ、敵だから同情はしないけど。


 エイトはもう縛り上げるのは嫌と言っていた通り、魔法で爆発を起こして倒していた。

 痛々しいとかそういうレベルではない。

 無惨というか……何も出来ずに倒されていく様は、ちょっと可哀想だと思った。

 別の手段はないのだろうか?


 いや、あるはず。

 セミナスさんが、全属性魔法を使えるって言っていたし。

 爆発にこだわらなくても………………ん? ちょっと待って。

 よく見ると、主にエイトが倒しているのは何やら共通点があるような……。


 ………………。

 ………………。

 あっ! わかった!

 男女ペアで、男性の方が下半身丸出し、もしくは半脱ぎ状態が多い。


 つまり、セミナスさんが言っていた、愛し合っていた人たちか。

 ………………。

 ………………。


「エイト! 存分にやっておしまいなさい!」

「かしこまりました」


 アドルさんたちとエイトの無双は、神殿遺跡の外で見張っていた戦士職っぽい人たちが途中から参戦してきても続いた。

 いやもう、こちらが狩人、向こうが獲物にしか見えない。


 そして、気が付けば神殿遺跡内が静かになっていた。

 争う音すら聞こえず、こうやって耳に手を当てて澄ませば………………あれ? 本当に何も聞こえない。

 うめき声すらないとか……無音って逆に不安なんだけど。


 ………………。

 ………………。

 不安に駆られた訳じゃないけど、周囲の様子を忙しなく窺ってみる。


⦅わっ!⦆

「ひゃあああぁぁぁっ!」


 ちょっ! セミナスさん!

 そういう事はやめて下さい!


⦅申し訳ございません。マスターの様子を見ていると、つい……⦆


 ついって!


⦅抗い難い魅力があったといいますか……元々抗う気はなかったといいますか⦆


 つまり、ここぞとばかりに狙ってやったって事ね。


⦅はい⦆


 ……うん。あのね、セミナスさん。

 正直に言えばなんでも許される訳じゃないんだよ?


⦅では、私はマスターに許されない、という事ですか?⦆


 ……いやまぁ、それは一般論であって、俺は別にこれぐらいの事なら許さないとかじゃないけど。


⦅そう言われ……コホンッ。ありがとうございます、マスター⦆


 ……なんだろう、この……掌の上で転がされている感。


⦅では、マスター。ついでと言ってはなんですが、このあとの事もお許し下さい。副次的な出来事ですので⦆


 ……ん? 何が?


「ご主人様ぁ~! 先ほどの悲鳴は一体何事ですか~! まさか、やられてしまったのですか~! お尻は大丈夫ですか~!」


 エイトがこちらに向けて、もの凄い勢いで駆けて来た。

 どこの心配をしているんだよ、エイトは!


「アキミチ! どうした! 何かあったのか!」

「不覚! これは自分たちの失態ですね」

「弱っちいアキミチを一人にするんじゃなかった!」


 反対側からアドルさんたちが駆け込んで来る。

 待って待って! 本当、なんでもな……ちょっと待って。

 ウルルさん、弱っちいはやめて。

 本当の事だけど、言葉にされると傷付くから……。


 というか、ほんと、ちょっと待って!

 なんでもないから!

 何も起こっていないから!

 俺、無事だからぁ~!


 恥ずかしかったので両手で顔を覆いながら説明した。


「恥辱に悶えるご主人様……エイト的にアリだと思います」


 そう言って貰えるだけでも、どこか救われたような気がした。


     ◇


 どうにかこうにか恥ずかしさを克服し、顔から両手を放すと……何故か、エイトはアドルさんたちを指差し、アドルさんたちはエイトを指差していた。

 えっと……どういう状況?


「ご主人様。ご主人様が話しかけていましたので放置していましたが、こちらの方々はどなた様でしょうか? 説明を求めます」

「もしかしてだが、この少女が『戦力増強』なのか?」

「ふ~む……確かに、見た目と違って大きな魔力を宿しているようですが」

「不味い……まさか新加入が女とは……これでは、この中での私の紅一点としての立場が……しかも若い……いや、若過ぎる女が……」


 あぁ、そういえば、ちゃんと紹介していなかったっけ。

 ……若干一名、見当違いな事を考えているみたいだけど。


 そもそもの話……ウルルさんを紅一点と見るのは難し――。


「あっ?」


 ウルルさんに睨まれた。

 馬鹿なっ! 心を読まれたとでも!

 それとも、野性の勘とでもいうべき優れた第六感が!


⦅マスターは表情や行動に出やすいので。それに、マスター側には既に私というメインヒロインが存在していますので、そこの獣人メイドを紅一点と表するのは間違いである、と進言しておきます⦆


 おっと、セミナスさんからメインヒロイン宣言が出ました!

 ただ、セミナスさんに関してだけは、別の個別ルートに入ったとしても、エンディングで必ず「そこにはセミナスさんが居た」とか「セミナスさんと共に」とかの台詞が入りそうだ。


⦅切ろうとしても切れない……いえ、マスターと私の結び付きは誰にも切らせません。私がそうさせません⦆


 ……なんだろう。

 もしセミナスさんが眼鏡装備なら、クイッと上げていそうだ。

 そんな事を考えていると、エイトが俺の服を引っ張っている事に気付く。


「ん? どうした?」

「ご主人様。エイトはメインですか? それともサブですか?」


 ……前にセミナスさんは他の人と会話出来ないと言っていたけど、エイトとの間なら必要ないんじゃないかな? って思った。


 エイトの問いは適当に濁し、エイトとアドルさんたちを引き合わせる。

 俺が間に立って、互いを紹介。


「……なるほど。神が封印される前に残した魔導兵器か」

「大きな魔力を宿しているのも納得ですね」

「元が無機物なら……私の方が有利かな? いくら外見年齢が若くても、所詮私の鍛え上げられた体の触り心地の前には無力!」


 アドルさんとインジャオさんは感心するように頷いているのだが、ウルルさんは勝利を確信したかのように拳を強く握る。

 その様子を見たエイトは、指先で自分の肌をぷにぷにと押して俺に言う。


「ご主人様。どうやら、エイトは神仕様のこだわりボディのようです。確認しますか?」


 しません。

 ただ、そんなエイトの言葉を受けて、「か、神仕様だとっ!」とウルルさんが驚愕し、エイトの頬を何度か突く。

 ………………。

 ………………。


「このきめ細やかさ……これが若さか」


 ウルルさんが項垂れた。

 いや、俺はウルルさんも若いと思うんだけど……きっとそういう事じゃないんだろう。

 男が気軽に触れてはいけない部分だと判断した。


 一方、エイトの反応はというと――。


「なるほど。エイトは完全に理解しました」


 多分理解してない。

 エイトが自慢気に言う。


「この方たちはご主人様の愛じ」


 言い終わる前に急いで口を塞ぐ。

 前回の事があったので、身構えておいて良かった。

 アドルさんたちは、どうかしたのかと首を傾げている。

 ははは……と愛想笑いを浮かべて誤魔化しておいたのだが、学習していたのはエイトも同じだった……いや、俺が油断しただけかもしれない。


 ……今度は口を開いた状態だったためか、舐められてしまった。


 そして、アドルさんが尋ねてくる。


「それで、神殿遺跡内の敵は全て沈黙させたと思うが、これからどうすれば良いのだ?」


 どうすれば良いんですか?


⦅吸血鬼、骸骨騎士、獣人メイドには、これから直ぐにでも行って頂きたい場所があります⦆


 ……どうやら、別行動はもう少し続くようだ。

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