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この行く道は明るい道  作者: ナハァト
第一章 始まりの始まり
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やっぱりね。そうだよね。

「……これは?」

「わかりやすく言えば、『魔導具』という魔力の込められた特殊な道具だ。それは、この世界で『確認玉』と呼ばれているモノで、持って『スキルチェック』と念じれば、自身の持つスキルが全て表示される……のだ」


 ……何だろう。

 先程から、何か言葉の歯切れが悪過ぎる。

 まるで、これから起こる事を知っていて、どう伝えれば良いのかを迷っているような………………気のせいだな。


 しかし、こうして自分の持つスキルを確認出来るのはありがたい。

 早速確認しようとするのだが、色白の男性の言葉はまだ終わっていなかった。


「ついでに言っておくと、この世界の平均的なスキル保持数は、大体四個か五個だ。まぁ、実際に調べた訳ではないし、保持スキルの公開は個人の自由だから、一概に正しいとは言えない。まぁ、一つの基準にはなるだろう」

「そうなんだ……え? 公開は自由なの?」

「自由だ。ただまぁ、今回に関しては、予め予言の神から聞いているから、確認の意味も込めて、私達にも見せて欲しい」

「まぁ、別に良いけど」


 知っているなら隠す必要はないと判断して、俺は「スキルチェック」と念じ、水晶玉の表面へと視線を向ける。


「          」


 ………………。


「          」


 まだかな~。

 ………………。


「          」


 ………………。

 ………………あっ、もしかして表裏があって、手で隠れているところに表示されているとか?

 全体的に確認してみよう。


「          」


 ………………。

 ………………。


「………………何も表示されないんですけど!」


 え? 何これ? え? え?

 もしかして、俺って何のスキルも持っていないの?

 いやいやいやいや、そんなまさか………………でも、はっきり言えば、俺自身も持っているとは思っていなかった。

 スキルがあると、実感出来ていなかったというか……。


 でも待てよ。

 まだ希望は残されている。

 実はこの水晶玉が壊れて――。


「別に壊れていない」

「あっ、そう……」


 ……つまり、俺のスキル所持数は……ゼロという事になる。

 ………………。

 ………………。

 この世に希望はないのかっ!

 ガッデム! と頭を抱える。


 うおおおおおぉぉぉぉぉっ!

 自分が主役とか思ったのが恥ずかし過ぎる! 自意識過剰過ぎる!

 主役はやっぱり親友たちの方でした。


 というか、俺も異世界へと来たのに、何のスキルも持っていないとは……手でも抜かれたという事なのだろうか。

 ……いや、これが巻き込まれた者の宿命か?

 しかし、俺が持つスキルが最強ってのも、そもそもスキル自体を持っていないって……。

 今直ぐ穴を掘って、生意気な事を考えて申し訳ありませんでした、と潜りたい。


 意気消沈していると、ふと気付く。

 三人が冷静というか……リアクションが薄いというか……まるで。


「……俺にスキルがないって、知っていた?」

「済まない。聞いてはいたのだが、こちらも半信半疑だったのだ」


 申し訳ない、と三人が頭を下げる。

 そうか……知っていたのか………………え? 何で?


「いやいや、何で知ってんの? 俺が召喚されるまで会った事ないのに」

「封印される前に、予言の神から聞いたのだ。一人だけ外れた場所に召喚される事。そして、その者を手助けして欲しいという事を」

「なるほど。だからあの時に都合良く助けが入って、色々と世話を焼いてくれているという事か。とりあえず、ありがとう」


 助けて貰ったのは事実なので、頭を下げる。

 でも、同時に納得も出来た。

 服とかやたらと準備が整っていたのは、そういう事だったのか。

 ……それなら、事前にトイレも良いのを作っていて欲しかった、と思うのは欲張り過ぎだろうか?


「いや、気にしないで欲しい。こちらにも手助けする事情があるのだ」

「事情? どんな?」

「それに関してはもう少し待ってくれ。その時がくれば教えると約束しよう」


 う~ん、色々と何かありそうだ。

 でも、今の状況では、無償で助けられるよりも、互いに持ちつ持たれつのような関係なら、信用も出来る。


「わかった。なら、その時まで待つよ」

「すまないな。ただ、今はスキル表記されていないが、更新されれば表記されるモノはある」

「え? 何が?」

「ふふっ。現に今、こうして話しているではないか」

「あぁっ! これもスキルに入るのか!」

「そういう事だ。それと、鍛錬の結果で何かしらのスキルは表記されると思う」


 なるほどなるほど。

 そう言われれば、何か納得出来た。

 補正はないと思ったけど、実際は得ている事にホッと安堵する。

 特別なスキルもないけど。


「とりあえず、わかった。つまり、俺たちは協力関係にあるという事?」

「そう取って貰えると助かる」

「なら、きちんと自己紹介をしておかないとね」


 そう言って、俺は笑みを浮かべる。

 思えば、喋れるようになっても、お互いに自己紹介をした覚えがない。

 いや~、目の前の出来事というか、日々生き残る事に精一杯で、ころっと忘れていた。

 三人もそういえばそうだったなと相槌を打つ。

 それでこれまでやってきたのだから、案外俺達は相性が良いのかもしれない。


「それじゃ、言い出した俺から。俺の名前は『行道いくどう 明道あきみち』。十七歳。高校二年生だ!」


 自信満々に言う。


「なるほど。コウコウニネンセイというのがよくわからないが、名と歳はわかった」

「う~ん……。今更だけど、黒髪黒目は珍しいけど……」

「それ以外は普通の男性ですね」


 普通で悪いか!

 確かに顔の出来と体型も普通だけど、それの何が悪い!

 そんなの、俺が一番知っているわい!

 ぷりぷりしていると、色白の男性が立ち上がる。


「では、私から始めよう。名は『アドル』」


 色白の男性――アドルさんを、改めて確認する。

 金髪のオールバックに、鋭い目付きの非常に整った顔立ち。八重歯がチャームポイント。

 見た目は二十代後半くらいで、服は黒のタキシードを着ている。

 一緒に居てわかった事は、朝が弱くてだらしない事だろうか。


「歳は覚えていないな。これでも吸血鬼だからな」

「なるほど。吸血鬼だから朝に弱いのか」

「いや、そういう訳ではないのだが、驚かないのか?」

「え? 何に?」

「え?」


 互いに意味がわからないと首を傾げる。


「いや、別に驚かないけど。何か見た目からそれっぽかったし」

「そ、そうか……何か聞きたい事はあるか?」

「あっ、じゃあ一つだけ。陽の光に当たってた時もあったけど、大丈夫なの?」

「弱い者も居るが、私は克服した。……いや、そうではなくて、血を吸わないのかとか聞かないのか?」

「いや、そのつもりなら、もうやっているだろうし、そもそも勝てると思えないし」


 何というか、見た目と違って強そうだ。

 うんうんと頷いていると、次は獣耳の女性が立ち上がる。


「次は私が! 名は『ウルル』! 見てわかる通り、白狼の獣人よ!」


 獣耳の女性――ウルルさんを改めて確認する。

 長い白髪に狼耳が頭の上にぴょこんと、可愛らしい顔立ちに腰辺りから尻尾が飛び出していた。

 見た目は二十代前半で、メイド服の上からでも体型がグラマラスだという事がわかる。


「はぁ……宜しくお願いします」

「扱いが軽くない! 獣人だよ、獣人! しかも白狼の!」


 いや、自慢気に言われても、正直意味がわからない。

 首を傾げると、ウルルさんが落ち込んだ。

 何か申し訳ない。

 すると、次は自分だなと、全身鎧の人? が立ち上がった。

 正直に言って、最初に抱いた印象から、本当に人なのかな? と怪しんでいたのだが、吸血鬼、獣人ときたので、ちょっと確信している。


「自分の名は『インジャオ』。見た目ではわからないだろうから、正体を明かそう。怖がるかもしれないが、襲わないから安心して良いよ」


 そう言って、全身鎧の人? が兜を取った。

 そこから現れたのは、骸骨。

 立派な全身鎧を着た骸骨。

 それがインジャオさんだ。


「最初に助けてくれてありがとうございます、インジャオさん。これからも宜しくお願いします」

「……いや、普通だね。大抵の人は驚くんだけど」

「まぁ、何となく人ではないと思っていましたし。でも、一つ聞いても良いですか?」

「何でも聞いてくれて構わないよ」

「じゃあ遠慮なく。どうやって喋っているんですか?」

「さぁ」


 わからないのか。

 仕組みを知りたいと思ったけど、わからないのなら仕方ない。

 魔法があるくらいだし、何でもありなのだろう。

 出来るから出来るくらいの認識で丁度良いのかも。

 うんうんと自己完結していると、三人から呆れた目を向けられているような気がした。


「まさか、何でもないように受け入れるとはな」

「私はちょっと不満です」

「俺は怖がらずに受け入れてくれるだけで充分ですけどね」


 まぁ、親友たちからも、何事も受け入れるのが早過ぎるとは言われていた。

 器が大きいという事で、どうかお一つ。


「それで、これから俺はどうしたら良いの?」

「それに関しては予言の神からの指示がある。もう少し鍛錬を積めば、向かって欲しい場所があるのだ」


 アドルさんがそう教えてくれる。

 神からの指示とか怖いんだけど、協力関係にある以上、やっておいた方が良さそうだ。

 ……危険な事じゃないと良いなぁ。


 そして、その場所に向かうまで、俺は主にインジャオさんの指導の下、鍛錬を積む。

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