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この行く道は明るい道  作者: ナハァト
第三章 ラメゼリア王国編
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呼び方は間違えないように

 セミナスさんからの指示により、エイトという名の少女メイドが仲間になった。

「対大魔王戦用殲滅系魔導兵器・汎用型」という物騒な名の、神々が作った神造生命体ホムンクルスとの事。

 確かな力を持っているのは間違いないので、戦力増強になるのは間違いない。


 頭の中で、陽気な音楽を鳴らして……ちょっと待って。

 一応、本人に確認しておく。


「エイトは仲間になったって事で良いんだよね?」

「違います。エイトはマスターの性奴れ」


 急いで口を塞ぐ。

 アウト! この子、アウト!

 今、普通に言っちゃいけない事をサラッと言おうとしたけど!

 あっ! もしかして、さっきの戦闘でどこかに不具合を――。


⦅問題ありません。それで平常運転です⦆


 エイトを作った神様たちに出会ったら、問答無用で殴りかかる可能性が大。

 ……いや、攻撃力皆無っぽい俺じゃ、大したダメージを与える事が出来ない可能性の方が大きいな。

 ……アドルさんたちにお願いして、神様に効果がある武器を貸して貰う……いや、当たるかどうかもわからないし、確実性を取ってセミナスさんにお願いして……。


 と、真剣に考えていると、エイトの口がモゴモゴと動いているのが感触でわかったので、急いで手を放す。


「あぁ、ごめん」

「マスターが謝る必要はございません。不甲斐ない結果となった原因はエイトにあります。口を開いて舐める事が出来ず、申し訳ございませんでした。不甲斐ないエイトから提案するのは心苦しいですが、次回はもう少し隙間を与えて頂ければ必ずやり遂げてみせます」


 違うよ。違うから。

 そういう意味で謝った訳じゃないからね。

 何を言っても通じそうになかった。


「……えぇと、とりあえず、エイトは俺と行動を共にするって事で良いんだよね?」

「はい。マスターがエイトに飽きるまで」

「うん。言い方には気を付けようか。今後の課題という事で」

「エイトの言語に問題はないと思われますが?」

「疑問に思っていない事も問題だね」


 意味がわからないと、エイトが首を傾げる。

 色々と問題はあるけど、今は強力な仲間が出来た事を喜ぼう。


 それともう一つ、俺の呼び方である。

「マスター」呼びだとセミナスさんと被っているから、混同しそうなのだ。

 セミナスさんの事を教え、別の呼び方をして欲しいとお願いすると、エイトは素直に受け入れた。


「『ロリコン野郎』で」

「うん。それは罵倒だね。エイトを作った神様たちに対して言ったら良いよ」

「では、『エス』様」

「エス? S? いや、俺の名前のどこにも引っかかっていないけど?」

「攻めて欲しいという願望です」

「却下で」

「まさか、『エ』」

「却下で」


 このままでは埒が明かないのと、エイトの服装がメイド服という事もあって、最終的には「ご主人様」呼びとなるのだが、辿り着くまでにそれなりに時間がかかった。


 それが終われば、セミナスさんから、アドルさんたちの方も目的の物は手に入れているはずだと教えられたので、まずは合流する事を優先する。

 ローブの男性三人は放っておいても良いそうなので放置。

 この部屋を出て、今度は上階に向かう。


⦅もう隠れて行動する必要はありません⦆


 こそこそっと動き、ほふく前進でもしようかと体を地に付けた時、セミナスさんからそう言われる。

 ……早く言って欲しかった。

 立ち上がった瞬間、少し先の曲がり角からローブを纏う男性が現れる。

 しまった! どう対処すれば――と思った瞬間、ローブを纏う男性は亀甲縛りで吊るされていた。

 その横には、嫌そうな表情のエイト。


 そうだ。エイトが居るんだった。

 あっ! だから、セミナスさんは隠れる必要がないって言ったのか。

 ちょっと気付くのが遅れてしまった。反省。


 そこから先は、正にエイト無双だった。

 隠れる必要がなくなったので、神殿遺跡内をずんずんと進んでいくのだが、そんな事をすれば当然のように敵に見つかる。

 現れるのは男女問わず決まってローブを纏っていたのだが、何か行動を起こす前にエイトによって亀甲縛りで吊るされていった。


 ………………。

 ………………。


⦅女性の時だけ、移動開始するのが遅れているようですが?⦆


 すみませんでした!

 いやもう、男の性とでも言いますか、ついつい見てしまうんです!


⦅仕方ありませんね。次からは気を付けて下さい⦆


 はい!


⦅では、心のフォルダにしまった分は私が消しておきます⦆


 え? いやいや……え? 出来るの? そんな事?

 セミナスさんは答えてくれなかったが、出来ない事を切に願う。

 心の中で祈っていると、いつの間にかエイトが傍に居た。


「ご主人様が動きをとめている時は、先ほど教えられたセミナスさんとお話ししている、という認識で良いのでしょうか?」

「え? まぁ、うん。そうだね」

「なるほど。つまり、ご主人様にとって、セミナスさんが一番の女、エイトが二番の女、という事ですね?」


 ……は?


⦅出来る汎用型ですね。気に入りました⦆


 いやいや、ちょっと待ってよ!

 エイトに正しい知識を教えていく。

 ここ、敵陣みたいなモンなんだけどな。


「先ほどから騒がしいのはお前たちかっ!」


 ローブを纏う集団が現れた。

 エイトが即座に迎撃に向かってしまう。

 あぁ! もう! まだ途中なのに!


 ただ、これまでと違って人数が多かったのが原因か、それとももう面倒になったのか、縛り上げるのではなく、何やらごにょごにょと言ったと思ったら、敵集団を中心にして大きな爆発が起こった。


 その結果。

 敵集団、阿鼻叫喚。

 俺、阿鼻叫喚。


「うおおおぉぉぉ! 天井が崩れるぅ~!」


 急いでエイトを回収。

 脇に抱えて、一気に走った。


「ご主人様に抱き締めて貰えた。エイトの狙い通りです」

「この状態を抱き締めたというのは無理があると思う! というか、狙って爆発させたのか!」

「もうエイトはご主人様以外を縛り上げたくありませんので」

「最低の理由だった!」


 もう少し周囲に気を配って欲しかった。

 とりあえず、セミナスさん!

 進行方向の指示をお願いします!


⦅そうですね。迷う必要はありませんし、吸血鬼たちと合流しましょう。まぁ、マスターは、汎用型の扱いには迷っていますが⦆


 上手く言えてないからね!

 そのままセミナスさんの指示通りに進んでいく。

 途中で階段を上って一階に辿り着くと、漸く一息吐けた。

 すると、抱えていたエイトが声をかけてくる。


「ご主人様」

「……はぁ、はぁ。ん? 何?」

「もっと荒く悶えるような感じで呼吸をお願いします」

⦅汎用型に同意します⦆

「やらねぇよ!」


 余計に呼吸が荒くなった。

 というか、なんで俺はエイトを抱えたままなんだろうか。

 いやまぁ、その方が速いのは間違いないんだろうけど。

 ただ、大声を上げたのがいけなかった。


「見つけたぞ! 侵入者だ!」


 ローブを纏う人に見つかり、その声に反応して更に数人追加。

 ……一体何人居るんだよ。


⦅百二十人の中隊規模で運用されています。現在、汎用型にやられたのが二十三人。吸血鬼たちにやられたのが十六人。魔力回復のために休んでいるのが三十人。愛し合っているのが二十人。残り三十一人が、マスターたちの迎撃に向かっています。ちなみにですが、外に居るのは数に入れていません⦆


 想定していた数よりも多い!

 ……ちょっと待って。

 言いたかないけど愛し合っているのが多くない?

 どう考えても、今はそれどころじゃないでしょ?


⦅途中でやめられなかったのでしょう⦆


 ……なんかムカつくから、邪魔しに行ってやろうか。


⦅マスター……覗きは犯罪です⦆


 正論っ!

 と、今は逃げないと!


 迫って来るローブの人たちの逆方向に行こうとすると、丁度その先からアドルさんたちが現れた。


「おぉ! 漸く見つけたぞ、アキミチ!」

「無事で良かったです!」

「大丈夫? 怪我してない?」

「大丈夫です~!」


 空いている手を振りながら、アドルさんたちと合流しようとするが……見てしまった。

 アドルさんたちの後方から、追いかけるようにして走っているローブの集団を。


 ……後方確認。

 ……前方確認。

 うん。三十人くらい居るわ。


「アドルさん! インジャオさん! ウルルさん! うしろうしろ!」


 そう声をかけた事で気付いたのか、アドルさんたちが迎撃に向かう。

 こっち側は、いってこぉ~い!

 エイトを投げるように解放して向かわせた。


 双方共になんでもないようにローブの人たちを倒していく様子を見て思う。

 俺も、まともに相手を倒せる力が欲しいな、と。


⦅私が居るのでなくても問題ありませんが……考慮しておきましょう⦆


 宜しくお願いします。

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― 新着の感想 ―
[一言] >神々が作った人工生命体との事。 神々が作ったら人工じゃなくて、神造生命体とかじゃないだろうか?
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