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この行く道は明るい道  作者: ナハァト
第三章 ラメゼリア王国編
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別章 アドルたち、証拠を取りに行く

 セミナスの指示により、アドルたちは明道と一旦分かれて行動を開始する。

 これからどのように動けが良いのかは、全てセミナスから聞いていた。


 まずは神殿遺跡への侵入。

 当然のように見張りが各所に居るのだが、これまた当然のように死角は存在する。

 セミナスによって死角となる時と場所は既に判明しており、アドルたちはその時と場所から音なく跳躍した。

 そのまま空中でくるっと一回転し、神殿遺跡の屋上部分に音なく着地。

 ポーズ付き。

 特にそういう訓練をした訳ではなく、全て身体能力の賜物である。


 表情はわからないが、真面目な感じでインジャオがアドルに尋ねる。


「……アドル様。一つ伺っても良いですか?」

「……なんだ?」

「……空中で一回転とか、ポーズで着地するとか、セミナスさんの指示通りに行いましたが、必要なのですか?」

「……見栄え……らしい」

「………………」

「………………」


 アドルはなんとも言えない表情を浮かべる。

 インジャオはわからない。

 ウルルだけは、うんうんと頷いて理解を示していた。


 アドルとインジャオだけ気持ちを切り替えるように息を吐き、次の行動に移る。

 ここは神殿遺跡……そう、遺跡なのだ。

 しかも、ここに居る者たちは一時的に利用しているだけなのか、補修などは行っていない。


 となると、風雨にさらされ続ければ、当然のように外壁が破損していく。

 内部への侵入口は、そんな風に破損しているところの一ヶ所。

 室内が剥き出しで、風雨にさらされていた部分が少し砕けている。


 先ほどと同じように、音を立てないようにアドルたちが侵入。

 一旦足を止めて、騒ぎなど異音がしないか確認。

 ………………。

 ………………問題はない。


「……念のために常に確認をしておいて欲しいと言われたが……なんの問題もなく侵入出来たな」

「そうですね。こうしてきちんとその恩恵を受けると、セミナスさんの凄さが否応なしにも理解出来てしまいます」

「もうスキルの枠を超えていますよね。自我もあるし。………………でも、アキミチの様子から察するに、色々関係ない事も話しかけられているみたいだし、私には必要ないかな?」


 ウルルがう~んと考えながら言う。

 その言葉に、アドルとインジャオも、もし自分にセミナスがあれば? と考え………………ウルルと同意見だと頷く。

 関係ない話を頻繁に話しかけられるのはちょっと……と。


 だが、アドルはそれとは別の事も考えた。


「………………しかし、セミナスさんの能力は本物だな。これなら、約束したように……確実に会う事が出来るな」


 そう呟くアドルの表情は笑みだった。

 ただし、それは喜びや楽しみではなく、怒りや憎しみ、殺意が混じる酷薄な笑みである。


「アドル様。殺意が漏れています。気持ちはわかりますが察知されると困りますので、今は抑えて下さい」

「そうですよ。それに、気を付けて下さいね。それは私たちがやるべき事であって、アキミチを関わらせてはいけないんですからね」


 インジャオとウルルの言葉を受けて、アドルは静かに大きく息を吐く。

 殺意を吐き出し、心を落ち着かせるように。


「……ふぅ。そうだな。二人の言う通りだ。少々気持ちが逸ってしまった。すまん」


 アドルの謝罪の言葉に、インジャオとウルルは気にしていないと笑みを返す。


 そして、行動を開始する。

 音を立てないように扉を開けて、まだそれなりに形を保っている通路を一気に突き進んでいく。


 曲がり角に敵が居れば、壁や天井を使った立体機動のような動きで即座に無力化。

 通路を歩いている敵が居れば、崩れている壁などを利用して姿を隠し、近付いてきたところを一発ズドン。


 セミナスによって、どこに敵が居るのかわかっているため、容易に対処出来ていた。

 神殿遺跡内部がそれなりに広かったため少々時間はかかったが、予定外の事は起こらず、アドルたちは目的地として教えられた部屋の前に辿り着く。


「……ここ、だな?」

「はい。間違いありません」

「えっと、確か中に三人居て、サクッと倒さないと証拠が燃やされるで、合っている?」

「あぁ、それで間違いない。正確には、侵入時の方法と証拠は机の中にある、という事だけ教えられ、あとはこちらの判断に任せる、だがな。アキミチが言うには、必要以上に知らない方が上手くいく、らしい。まぁ、元々即座に無力化するので、その辺りはどうでも良い部類だ」


 ウルルが思い出すように口にして、アドルが補足する。

 目線を合わせて問題がない事がわかると、アドルとウルルは扉脇に陣取り、インジャオは扉から少し離れた位置に立つ。


 タイミングを見計らい、インジャオが扉に手を付き、一呼吸のあとそのまま一気に突き押す。

 衝撃で扉は室内に吹き飛び、ほぼ同時にアドルとウルルが開いた入り口から室内に侵入。


「――!」

「「――な!」」


 アドルとウルルが侵入と同時に確認。

 室内に居たのは二人。

 ……二人? と首を傾げるが、答えは直ぐにわかった。

 吹き飛んだ扉と壁に挟まれて気を失っているのが一人居たのだ。

 クッションの役割も果たしていたため、衝撃音がなかったのである。


 ちなみに、この判断は時間でいえば瞬間的な事であり、残る二人は侵入したアドルとウルルに反応すらしていない。


 一人が既に片付いている事を理解したアドルとウルルは、残る二人へと迫る。

 アドルは床を蹴り天井を蹴って一気に肉迫し、標的にした一人の首をトン……として意識を刈り取った。

 ウルルは床を蹴り壁を蹴って一気に肉迫し、標的にした一人にアイアンクローをかまし、腹部に一発食らわせる。

 悶絶後、気絶。


 命まで奪わなかったのは、証拠は多い方が良いので極力生かしておいて下さい、とセミナスから言われたからである。


「……それにしても、セミナスさんが言った通りだな」


 きちんと気を失っているかを確認しながら、アドルがそう呟く。

 室内に入って来たインジャオと、ウルルが同意した。


「そうですね。見張りは戦士職が多かったですが、建物内に居たのは魔法職ばかり」

「比率も魔法職の方が多いみたいだし……魔法職が中心の集団なのかな?」

「論じるのはあとだ。まずは手に入れるべきモノを手にしておこう」


 アドルが室内にあるボロ机の引き出しを開く。

 引き出しの中にあったのは……紙束。


 紙束を手にしたアドルは、書かれている内容を確認する。

 一見すると、その内容はなんて事はない知人に送るような手紙。

 けれど、アドルは即座に見抜く。


「魔法で隠蔽されているな。残滓が残っている事から、切羽詰まった状況だったのか、元々大した腕ではないのか」

「どちらにしろ」

「間抜けって事ね」


 インジャオとウルルの言葉に苦笑を浮かべたアドルは、魔力を掌に集め、紙束の表面をなぞるように動かす。

 すると、紙束が薄く発光し、書かれていた文面が消えて、新たな文面が浮かび上がってくる。

 アドルは、一番上の紙に書かれている一文を口にする。


「……『魔法使い部隊・指示書』?」


 アドルたちは、これが証拠だろうか? と揃って首を傾げ、パラパラとめくって確認していると、神殿遺跡の外から爆音が響いた。

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