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この行く道は明るい道  作者: ナハァト
第十四章 大魔王
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なんか安心する会話ってあるよね

 邪神と共に大魔王城から飛び出して落ちる直前、詩夕たちに視線を向ける。

 口パクで「封印」と伝えてみると、わかったと頷きが返された。

 伝わったようで何より。


 詩夕たちなら、それでやるべき事がわかるはず。

 まずはそのための回復を優先するだろうから、あとはこちらでどうにか邪神を疲労させるだけ……なんだけど、それが難しい。


 いや、それでもやるかしかないのが現状だ。

 そのためには――。


「馬鹿な選択をしたものだ。何かがあると思っていたが、つまらない終わり方をしてくれる。お前の底が知れてしまったな」


 一緒に落下している邪神が、いきなりそんな事を言い出した。


「つまらない終わり方ってなんだ?」

「決まっているだろう。この状況だ。我と共に落下死を狙ったのかもしれないが、それは無駄だ。確かに飛翔魔法は存在しない。ただしそれは普通の生物であれば、だ。神である我には適応されない」


 邪神が俺を掴んで引き離し、そのまま放り投げる。

 放り投げられた俺の視界に映るのは、落下せずに空中で佇む邪神の姿。

 俺を見るその目には、何も感じられない。

 興味を失った、と物語っている。


 邪神は俺から視線を外し、そのまま上に戻ろうとした。

 大人エイト、それと詩夕たち、シャインさん、ドラーグさんにとどめを刺そうとしているのかもしれない。


 でも、そうはさせない。

 セミナスさんっ!


⦅お任せを⦆


 俺のあとを追っていた遠隔ASが最適行動を取る。

 セミナスさんが動かす遠隔ASは三つ。

 一つは、邪神に向かって飛んで行く。

 独立して動き、邪神が煩わしそうに払うが、そのすべてを回避、もしくは受け流して上に行かせないようにしている。


 その間に、残る二つが俺をサルベージ。

 一つを掴み、そのままぶら下がれば、足元にもう一つが来て、しっかりと俺を支えた。

 ……もっとぐらぐらすると思ったが、意外としっかり立てる。


⦅常にマスターを見て感じていますので、細かい動き、揺れすら瞬時に計測して微調整を繰り返していますので⦆

(……どことなくヤバい感じに聞こえるのは私だけでしょうか)


 そんな事は……ないと思いたい。

 大魔王ララの誤解、誤認、考え過ぎ、だと思いたい。

 でも、そういう事なら、俺が思うように動いても……。


⦅遠隔ASが先回りし、マスターの動きを補佐します⦆


 それなら、と掴んでいた遠隔ASの一つを離して前に飛び出す。

 掴んでいた遠隔ASと足元にあった遠隔ASが一セットとなって、俺の飛び出した先で土台となった。


 無事着地。

 そのまま勢いをとめずに前へ飛び出し……足元から離れた遠隔ASが先回りして、無事着地。

 ……うん。いける。


 いくよ、セミナスさん!


⦅お任せを⦆


 遠隔ASを足場にし、邪神に向けて空中を駆けていく。

 邪神は空中でもう一つの遠隔ASを相手にしていたが、いい加減に面倒だと弾き飛ばす。

 というより、遠隔ASはわざと弾かれたっぽい。

 なんでもないようにこちらに合流し、邪神が近付く俺を見つける。


「面白い事をする! まさか空中でやり合うつもりか!」


 邪神がこちらに向かって飛んでくる。

 空中という事は……平面的な動きじゃ駄目だ。

 立体的に動かないといけない。


「お前だって、そうそう空中戦の経験はないだろ!」

「はっ! 残念だが、神を相手にしている時に何度も経験済みだ!」


 ……そうなの?


⦅まぁ、神も空を飛べますので、そういう戦闘があったとしてもおかしくはないかと⦆


 あれ? もしかしてヤバい?


⦅問題ありません。経験ではなく計算で上回りますので⦆

(先輩。私にも遠隔ASでしたか、それを一つ)

⦅駄目です。三つセットでなければ、私の計算が狂いますので、拒否します⦆

(数は増やせないのですか?)

⦅強度が落ちます。三つですらギリギリですので、却下します⦆


 この二人の会話を聞いていると、ヤバいんだろうけど、そのヤバさが軽減するな。

 なんか、大丈夫なんじゃないかと思えてくる。

 危機感のない会話だからだろうか。


 大丈夫だと信じて、邪神に向けて突っ込む。

 邪神がタイミングを合わせて、突っ込む俺に殴りかかる。

 拳が当たりそうな瞬間、遠隔ASが俺の背中を押して前へ。


 タイミングをずらして拳をかわすと、その先に遠隔ASが一つ現れる。

 それを足場にして飛び上がり、邪神の頭上へ。


 頭上にも遠隔ASが既に配置され、そこを足場にして、自前のASを前に持っていって邪神を押し落とす。

 空中戦を続けるつもりは一切ない。

 狙いは地上戦だ。


 もちろん邪神も抵抗するが、踏ん張りがない以上、踏ん張りがあるこちらの方が、勢いが強い。

 邪神が押されて若干落ちる。


「久々の空中戦を楽しませてもらおうか」

「楽しむ前に落としてやるよ!」


 勢いよく言ってみるが、その勢いのままに邪神は落とせない。

 向こうも空中は自由自在なのだ。

 危険な感じがしたので、邪神から即座に離れる。

 俺が居た場所に、邪神がサマーソルトのような動きで蹴りを放ってきた。


 今のは危なかった。

 俺の動きに遠隔ASが合っていなければ、当たっていたと思う。


⦅そこでよく見ておきなさい。マスターと私の息がどれだけ合っているのかという事を。そして、あなたの入り込む余地などないという事を知ると良いのです⦆

(参考にさせていただきます、先輩。参考にして……居場所は自ら作らせていただきます)


 こんな状態でも、上手く合わせてくるのだから、本当にセミナスさんはすごいと思う。

 遠隔ASを足場にして、邪神を中心にしながら縦横無尽に動き回って少しずつ落としていく。

 セミナスさん! 場所は!


⦅……確認しました。城から少し離れています⦆


 このままだと位置が悪いらしい。

 狙っている位置は、大魔王城から少し離れているようだ。


 なので、もう少しで地上というところで、大魔王城から離れるように体当たりを行い、そのまま空中でやり合い続けながら最後の一押しをしていく。

 狙った場所に居るのは、多くの人形。

 数は多いけど、種類として三種類だけ。


 そこに邪神と共に突っ込んでいく。

 人形たちを次々と吹き飛ばしながら着地して、そのまま地上戦に突入し、邪神とやり合う。

 ただ、そこで人形たちの邪魔が入った。


 次々と俺を捕まえるように掴みかかってきて、その動きに手間取った瞬間、放たれた邪神の拳をASで真正面から受けてしまい、勢いを殺し切れずに吹き飛ぶ。

 AS越しでも感じる腕の痛みを我慢しつつ、俺は叫ぶ。

 聞こえていると信じて――。


「姿は魔王リガジーだけど、中身は違う! そいつが諸悪の根源! すべての元凶!」


 叫び終わると同時に、地上をゴロゴロと転がる。

 その上を飛び越えて――。


「よくぞ連れて来た! アキミチ! 『終焉ラストを告げる血塗ブラッディれた槍蛇ランスネーク』!」


 アドルさんが邪神に向けて武技を放つ。

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