一を知って十を知る人って本当に居るのだろうか?
大魔王ララが思い付いたという策を聞く。
………………。
………………。
いけそう? セミナスさん。
⦅……可能かどうかでいえば、可能です⦆
(先輩が協力してくれれば、その可能性はもっと上がると思うのですが?)
それは間違いない。
⦅……仕方ありませんね。確かに、現有戦力での打開は難しいですし、戦力アップは必須。致し方ありません⦆
セミナスさんの協力を得て、行動に移す。
まずは近場に居るシャインさんに一時的に抜ける事を伝える。
「ちょっと抜けます」
「必要な事なんだな?」
「はい」
「わかった。なら、それまでは任せておけ」
邪神の相手をシャインさんに任せ、下がっていく。
「我を前にして、どこへ行こうというのだ?」
「別にどこだっていいだろ!」
ばーか! ばーか! と付け足したいが、グッと我慢した。
余計な注意を引いちゃいけない。
それに、シャインさんが押さえてくれる。
「それはよそ見というヤツだろ!」
……邪神と正面から乱打戦をするとは思わなかった。
それで戻るまでにもつだろうか?
ちゃんと考えていると思うけど、ちょっと急ぐ。
そのままエイトにも声をかける。
「ちょっと抜ける。ただ、呼んだら来てくれ」
「つまり、エイトは呼んだら来るという都合の良い女になれ、という事ですね?」
何故今の言葉でそういう返しになる。
「いや、違うから。とにかく、今はシャインさんの援護をそのまま頼む。準備に少しだけ時間がかかるから」
「かしこまりました。ご主人様はそれを望むのなら」
「……だから、違うからな」
きちんと否定したし、変な勘違いをしていないと思いたい。
時間がないので、サクサク行動していく。
戦いの場を離れ、俺はそのまま結界内に居る魔王マリエムのところへ。
魔王マリエムは既に正気を取り戻していた。
ただ、それでも動く気はないと言わんばかりに結界内でジッとしている。
「魔王マリエム。話がある」
「………………」
魔王マリエムは答えない。
ただ、俺を見るだけ。
どことなく気だるげというか、もうどうとでもなれ、という雰囲気だ。
「……私に何か用かしら?」
「協力して欲しい」
「……魔王である私があなたたちに協力するとでも? というか、それ以前に、そもそも、もう何もかもがどうでも良いわ。ヘルアトが死んで……リガジーが知らない変貌を遂げて変になるし……何より、ララが私を攻撃するなんて、狂ったとしか言えないわ……そのララも、もう……」
まぁ、端から見るとそう見えるよね。
でもそれは間違いだ。
「よく聞け、魔王マリエム。それと、変な反応はするなよ。気付かれでもしたら困る」
「……何が?」
「良いから、とりあえず過剰な反応を表に出すなって事だ。それと、俺じゃあこの結界は壊せない。ただ、内から外には出れるようだから、そっちから出て来てくれ」
「………………」
意味がわからない、と魔王マリエムが俺を見る。
「……その必要があるのかしら?」
「ある。いや、別に体全体を出せとは言わない。片手だけでも良い。要は直接触れないと駄目だという事だ」
「………………」
「疑うのはわかる。元々敵同士だしな。だが、今はそれどころじゃない。だが、どうやっても、アレをとめないといけないんだ」
邪神を指し示す。
「……変わり果ててもリガジーはリガジーよ。私が手を貸すとでも?」
「あれは魔王リガジーじゃない。といっても、どこかに魔王リガジーが居る訳じゃないけど」
「……は?」
「それと、大魔王ララは別に狂ってもいない」
「……は?」
あなた、頭おかしいんじゃない? という目で見られる。失礼な。
………………いや、これも端から見ると、そういう風に見えてもおかしくないのか。
俺が魔王マリエムの立場だったら……そう思ってもおかしくないな。
というか、別におかしくなってないから。
「とりあえず、手で良いから結界の外に」
そう言っても、魔王マリエムの警戒は解けない。
どうしたものか。
ここでモタモタする訳にはいかないのに。
(でしたら、こう伝えてください)
「……魔王マリエム。そうすれば、少なくともお前にとっての『喜び』に繋がる」
「私の『喜び』だと……もしその言葉が偽りであったのなら、力を失っていようとも、お前を必ず殺すわ」
魔王マリエムが睨むように俺を見る。
……怖っ。
そして、結界の外に差し出された手を、掴む。
あとはお願い。
(お任せください。先輩。お手伝いをお願いします)
⦅……わかっています⦆
大魔王ララが、魔王マリエムに接触する。
簡単に言えば、俺の中に入ってきた方法を応用して、直接接触で会話出来るようにした。
セミナスさんが。
⦅このような事のために力を高めた訳ではないのですが⦆
まぁまぁ。それに、これなら邪神には伝わらないし、会話の内容もわからないしね。
もし邪神が知れば、絶対邪魔してくるだろうし。
そして、魔王マリエムが一瞬だけ反応する。
表情全体には出ていないが、目だけ一瞬見開き、直接触れている手も少しだけ動いた。
大魔王ララと魔王マリエムの会話は……まぁ、聞いても仕方ないので聞いていない。
⦅女同士の会話を聞くなど無粋ですよ、マスター⦆
だから、聞かないって。
⦅まぁ、どうしてもというのなら、お繋ぎしますが?⦆
いえ、大丈夫です。
それに、もし何かあったら、セミナスさんが黙っていないでしょ。
⦅そうですね。何かあればこれ幸いと追い出して、マスターと私の楽園が守られるという事に………………何か起こる事を期待して願います⦆
いや、起こらない事を願ってください。
問題は話が長引くと、邪神と戦っているエイトとシャインさんの負担が……。
(終わりました)
と思ったが、思いのほか早く終わった。
え? もう? 話し始めて五分も経っていないと思うけど?
(マリエムは聡い子ですので)
もし本当なら聡過ぎじゃないですか?
でも、なんか鋭いな、と思う時があったけど……いや、そんな事は……。
「事情はすべて飲み込めたわ。それで、私はどうすれば良いのかしら? リガジーの仇が取れるのなら取りたいわ」
う~ん。わかっていらっしゃるようだ。
まぁ、時間短縮になるのは良い事だよね。うん。
でも、これからやる事は伝えてないんだ。
(やりながら説明する方が速いと思いましたから)
……確かに。
魔王マリエムに結界から出てもらい、準備を始める。




