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この行く道は明るい道  作者: ナハァト
第三章 ラメゼリア王国編
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進めば進むほど、後戻りは大変

 周囲を小高い山に囲まれ、森林の中に隠すようにある神殿のような遺跡。

 黒くない……という事は、神様が封印されている場所ではないようだ。

 アドルさんたちも見えているという事で、普通の神殿遺跡という事で間違いない。


 でも、ここにこの神殿遺跡があるとわかっていなければ多分辿り着かないと思うので、それなりに歴史的な場所という可能性もある。

 壁とか柱も結構ボロボロなので、より歴史的に感じるのかも。

 ただ、それだけ風化している外見とは、真逆の存在が近くにあった。


 あまり使い込まれていないというか、新品っぽい綺麗な馬車が何台も、神殿遺跡の入り口付近に置かれている。

 その馬車に使われるだろう馬が何頭も、近くの木々にくくり付けられていた。


 どう考えても、人の出入りがある……というか、今も中に居ると思う。

 馬車と馬の数から考えると、それなりに多くの人が。


「……どう考えても怪しいよね?」

「そうだな。このような場所を利用しているとなると……盗賊の類か」

「または、それに類する者たちでしょう」

「つまり、後ろ暗い連中って事ね!」


 俺の問いかけにアドルさんとインジャオさんが答え、ウルルさんが纏める。

 後ろ暗い連中……やっぱりそういうのが居るのか。

 いや、でも待てよ。

 まだそう確定するのは早いんじゃない?


 決め付けはよくないよね。

 もしかしたら、どこかから逃げ出して来た姫様御一行とか、お忍びで諸国漫遊しながら世を正しているどこかのお偉いさん、とかの可能性もある訳だし。


⦅後ろ暗い連中です⦆


 うん。後ろ暗い連中か。

 とうとう、この時が来た……のかもしれない。

 これまでは魔物が相手だったけど、遂に人か。


 魔物相手は慣れたけど……果たして俺は、相手が悪い人だとわかっていても、戦う事が出来るだろうか?

 いや、言葉を選ばないのであれば……殺す……命を絶つ事が。


 人型の魔物とは違うだろうし、向こうはきっと殺す気なんだろうなぁ……。

 う~ん……と悩んでいると、アドルさんたちが声をかけてくる。


「アキミチ。その表情から何を考えているのかは察せられる。だが、今からその事を考えるのはやめておけ。その時が来なければ答えは永遠に出ない」

「そう考え込まなくても大丈夫ですよ、アキミチ。たとえ出来なくても、もしもの時は自分たちが居ますから」

「遠慮なく頼ってね、アキミチ。これでも私たちは、それなりに修羅場は何度も経験しているから、見た目よりも頼りになるよ」


 頼りになるのは充分にわかっているし、こうして声をかけてくれるのは嬉しいんだけど………………妙にキメ顔なのは何故?

 まるで、人生の中で一度は言ってみたい事を言った! みたいな表情だけど……。


 でも、言われた通り、今は考え込むのをやめようと思う。

 アドルさんが言ったように、その時が来ないとわからないんだから。


⦅そのような覚悟は必要ありません。私が居る限り、マスターに過酷な道は歩ませません。それと、これだけは覚えておいて下さい。マスターがどのような道を選ぼうとも、私は常にマスターと共に居るという事を⦆


 セミナスさんもありがとう。


⦅まぁ、私が居ないと駄目な男になる、という可能性はありますが⦆


 危険な予感!

 でも、こうして話しているだけで沈みそうだった心が浮き上がっていくのを………………はっ! まさか本当に、攻略という意味のセミナスさんルートに入っている?


⦅フフフ……⦆


 否定してよ!

 ……ところで、この神殿遺跡に来た目的はなんなの?


⦅今後のための証拠集めと戦力増強です⦆


 ………………。

 ………………。

 なるほど。今後のため、か。


 証拠集め → 何かしら悪事の臭い。

 戦力増強 → 何かしら戦闘の予感。


 この先、不穏な気配しかない!

 まぁ、それでも前に進むしかないんだけど。

 アドルさんたちにも心が楽になったと感謝の言葉を伝え、神殿遺跡に向かう。


 わざわざ見つかる必要はないので、警戒しながらゆっくりと。

 それに、セミナスさんは証拠集めと言ったので、見つかってしまうとその証拠を処分されてしまう可能性もある。

 アドルさんたちにもここに来た目的を伝えているので、このまま見つからずにいけるところまで行く事になった。


⦅ストップ!⦆


 セミナスさんの合図で俺は動きをとめる。

 でも、ちょっと待って欲しい。

 丁度片足を着ける前だったからバランスが………………くっ!


「へやっ!」

「うぉっ!」


 倒れる前にアドルさんを掴んで難を逃れる。

 危なかった。


「……ど、どうした、のだ? 急に」

「耐えて! お願いだから耐えて!」


 アドルさんと一緒にフラフラしながら耐える。


⦅申し訳ございません。マスターの動きはどうにも読み辛いのです。そこの骸骨騎士に足元を調べさせれば、とめた理由がわかります。くれぐれも丁寧に、と伝えて下さい⦆


 ……なんだろう。軽くクレームを入れられた気分。

 とりあえず、セミナスさんが言うように、インジャオさんに調べて貰う。

 その間に、俺はアドルさんと共に何歩か下がって安全圏に。


「………………なるほど。ここを踏まなくて正解ですね。探知系の魔法陣が仕掛けられています。もし踏んでいたら、この魔法陣設置者に侵入が伝わるようになっているようですね」

「く、詳しいですね、インジャオさん」

「こう見えて、魔法系統大好きでして。知識だけは豊富なのです。まぁ、魔法が使えない反動かもしれませんね」


 インジャオさんが恥ずかしそうに頭を掻く。


「え? 使えそうなのに使えないんですか? そんな体なのに?」

「はい。肉体がある頃から体内に流れる魔力が少なくて、魔法行使に耐えられなかったのです。特に今は骨ですから余計に」


 インジャオさんの言葉に、アドルさんとウルルさんが苦笑を浮かべる。

 こうして言葉に出来るまでに、葛藤とか色々とあったのかもしれない。


「あれ? でも、『武技』って」

「『武技』で消費するのは魔力でなく生命力ですので、関係ありませんよ」


 ふ~ん……。


「……一つ聞いても良いですか?」

「どうぞ」

「この世界に、その……魔力? ってのを豊富に蓄える金属とかないんですか?」

「ミスリルとかが代表例になるけど、金属の中でも上位に位置するようなモノは大体豊富だと思うよ」

「だったら、そういう金属をガジガジ噛んで骨にすり込ませれば?」

「「「………………そ、それだぁ!」」」


 アドルさんたちが一斉に叫ぶ。


「しー! しー!」


 人差し指を口に当てて、静かにと促す。

 アドルさんたちは一斉に自分の口に手を当てて黙る。


 ………………。

 ………………。


 何も起こらない。

 アドルさんたちと一緒に、セェーフ……と両手を広げる。

 どうやら、運良く気付かれなかったようだ。


⦅……はぁ⦆


 大丈夫。

 本当にマスターの動きは読めない……なんて言いたげなセミナスさんの溜息なんて聞こえない。

 ただ、インジャオさんにとっては希望となった。

 アドルさんに肩を叩かれ、ウルルさんと共にやる気を滾らせている。


 ………………。

 ………………うん。上手くいく事を切に願う。

 何より、セミナスさんが否定しないって事は、成功するって事だと思うし。


 そして、希望を胸に抱いたインジャオさんを先頭にして、神殿遺跡にゆっくりと近付いていく。

 ばれないように……ばれないように……。


⦅ストップ!⦆


 セミナスさんの合図と共に動きをとめて待機。


⦅ではこれより、神殿内部に侵入した際の行動を伝えます⦆


 共有するため、セミナスさんの言葉をアドルさんたちに伝えていく。


⦅まず、二手に分かれます。吸血鬼たちと、マスターは一人で⦆


 早速口を閉じる。

 ん~……これはアレかな?

 引き返せないところまで来させる事で、俺の退路を断ったのかな?

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