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この行く道は明るい道  作者: ナハァト
第十四章 大魔王
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逆に怖いって時がない?

 魔王リガジーと魔王マリエムに挟まれるように玉座に鎮座している女性。

 その女性が大魔王であると、理性ではなく本能で察した。


 魔王が二人揃っている時点ですら圧倒的なので、それよりもなお、強い雰囲気を発している。

 確実に、魔王二人よりも上。

 それがわかる。


 間違っていないよね?


⦅はい。アレが大魔王です。これまでの情報から、狂った魔導技師が製作した『神造生命体』を元に進化した『神造超生命体ハイブリッド・ホムンクルス:ララ』。対峙してよりハッキリしました。私の力で見通せません。油断しないように常に最大限の警戒をお願いします⦆


 セミナスさんからの緊張が伝わる。

「神造超生命体:ララ」であり、大魔王。

 ……大魔王ララか。


 改めてその姿を確認。

 過去でアイオリさんとエアリーさんから聞いた通りの姿だ。


 黒の長髪に、頭部の左右から赤黒い禍々しい角が飛び出していて、非常に整った顔立ち。

 スレンダーな体付きに漆黒のドレスを身に纏い、その上に毛皮のマント。


 そんな大魔王ララが、血のような赤い目でこちらを見ている。

 そこに感情は一切見られない。


 これまでの話を統合すると、今大魔王ララには「哀しみ」と「怒り」の感情があるはずなのに、そういった部分が出ていなかった。


 逆に怖い。

 その存在感の高さも相まって、恐怖に負けてしまいそうだ。

 己を奮い立たせるように、ゆっくりと息を吐き……気持ちを落ち着かせる。


 周囲を確認すれば、詩夕は緊張しているのが目に見えてわかるが、エイトは特に表情を見せず、シャインさんはいつも通りの肉食獣のような笑みを浮かべていた。


 頼もしい限りだ。

 詩夕もそんなエイトやシャインさんの様子を見て、落ち着きを取り戻す。


 落ち着いた事で思うのは、セミナスさんの力で大魔王ララを見通せないのは、俺と大魔王ララの身体的違いによるモノではないか? という事だ。

 つまり、セミナスさんが大魔王ララと同等の体である『神造超生命体』の体に移れば……。


⦅いえ、体を手にした時に調べた状態とそう大差はありません。それに、あの時よりも大魔王は力を増していますので、結果は変わらず、といったところです。それでしたら、寧ろこのままマスターの中に居た方が、マスターを直接助ける事が出来ます。私が自分の体を使用するよりも、その方が良いでしょう⦆


 わかった。

 セミナスさんがそう言うのなら。


 ……頼りにしているよ、相棒セミナスさん


⦅お任せください。相棒マスター


 俺も覚悟が出来たと、大魔王、魔王たちに視線を向ける。

 すると、魔王リガジーが口を開いた。


「さすがに、あの吸血鬼は居ないか」


 アドルさんの事だろう。


「だがまぁ、それも仕方ない。俺に勝利した影響がまだ抜けていなくて当然だ。それだけの戦いだったのだから」

「……呆れたわ。この状況で話すのが、ここに居ない者の話だなんて。しかも、負けた話なのに楽しそうにして……そんなに焦がれているの?」

「何しろ、初めて負けた訳だからな。だが、一番の理由は、楽しめた戦いだからだ。お前も、戦いに喜びを見出してみればどうだ? 俺の気持ちがわかるぞ」


 魔王リガジーの言葉に、会話を行っていた魔王マリエムがしかめっ面を浮かべる。


「嫌よ。私は戦いに喜びは見出せないわ。……でも、向こうから来るというのなら、もちろん迎え撃つわよ。というより、あなたも戦うの? 負けた身なのに?」

「負けたのはお前もだろ。それに、確かに俺は負けたが、ララを守るためなら、喜んでこの身を盾として戦うさ」

「私もよ」


 そう言って、魔王マリエムがこちらを見る。

 敵意が目に宿っていた。


 というより、雰囲気がなんか違うというか、力強さを感じる。

 それも、魔王リガジーと同等の。


「……もしかしてだけど、封印が解けている?」

「別に隠す必要もないから教えてあげる。もちろん、解けているわよ。ララのおかげでね。優しいでしょ」


 大魔王ララが魔王マリエムの封印を解いたようだ。

 それだけで、セミナスさんと同等だと実感させられてしまう。


 納得していると、魔王リガジーがずいっと前に出る。


「それで、どいつが、吸血鬼の言っていた切り札だ? そいつと会うのも楽しみの一つだが……見たところ、そこの女が一番強いな」


 魔王リガジーがこちらを物色して、シャインさんを指し示す。

 と思ったら、何故かそれが俺になる。


「他のも中々だが、お前はなんだろうな。大して強そうには見えないし思えないが、理性ではなく本能……直感のようなモノが、お前を真っ先にやるべきだと言っている」


 何その直感、怖い。


「私も同意見ね。得体の知れなさがあるわ」


 何その言葉、傷付く。


 というか、そんな俺にロックオンしないで欲しいんだけど。


⦅マスターの重要性を理解したのは褒めてあげますが、危害を加えるつもりならば容赦しません。まっ、元々そのつもりもありませんが⦆


 いや、俺が注目されているのはセミナスさんの影響が大きいと思うんだけど。


「なんだ? まさか、もう勝った気でいるのか? どちらも負けた分際で……なんだったら、私一人でも充分だ」


 我慢の限界に来たのだろう。

 シャインさんが挑発するように言う。


 乗ってきたのは、魔王リガジー。


「面白い! だったら、その強さを見せてもらおうか!」

「見られるまで生きていたらな!」


 シャインさんが駆けたかと思えば、魔王リガジーも駆け出し、両者が丁度室内の真ん中辺りで衝突する。


 と見ていたら、魔王マリエムも行動を起こしていた。

 俺たちに向けて魔法を放つ。


「もちろん、見逃していませんよ!」


 その魔法を、詩夕が剣ですべて斬り落とし、そのまま切っ先を魔王マリエムに向ける。


「あの時つけられなかった結末を、つけてあげますよ」

「……あの時はもっと数が居たと思うけど? 果たして出来るかしら?」


 魔王マリエムが魔法を次々と放ち、詩夕が片っ端から斬り落としていく。


 シャインさんが魔王リガジーと戦いつつ、詩夕が魔王マリエムと戦いつつ、訴えかけてくる。

 こっちは任せろ、と。


 つまり、この間に、俺とエイトで、大魔王ララと対峙しろという事か。


 ………………。

 ………………。


「いくぞ! エイト!」

「どこまでもお供します」


 大魔王ララの下に向けて歩を進める。

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