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この行く道は明るい道  作者: ナハァト
第十四章 大魔王
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沈黙は肯定と取られがち

 大魔王城内に入る。

 俺としては城外で戦いが起こっているし、直ぐにでも魔物の襲撃があると思っていたんだけど……ちょっと様子が違う。


 外の戦いがいやに大きく聞こえるくらいに静まり返っている。

 なんと言えば良いのか、こう……何も感じられない静けさというか、音を立てる存在がまったく居ないような、自分の鼓動が聞こえてくると思えるくらいに、なんの音もしない。


「……誰も、何も居ない?」

「気配すらないな」


 詩夕と常水の呟きに、俺だけじゃなく、他のみんなも頷く。

 一緒に連れて来ている魔王マリエムは、何も言うつもりはないと目を伏せている。


 聞いても答えるとは思えないし、今は先を進んだ方が良いだろう。

 セミナスさんの案内に従って、進んでいく。


 大魔王城内は、本当に何もない。

 古びた城なのは間違いなく、元々ここを使用していた形跡がある物は、まともな形を残さずに朽ちている。


 中には埃が積もっている部屋もあるのだが、総じて廊下はそんな事はない。

 多分、人通りというか、魔物とかが通っているからだと思う。


 ただ、今はその魔物の姿すらない。

 EB同盟との戦いに出向いたのかな?

 外にも結構な数が居たのに出たって事は、大魔王軍にとってそれだけEB同盟との戦いが厳しいモノになっているのかもしれない。


 ……EB同盟が優勢って事かな?


⦅一進一退を繰り返しています⦆


 そっか。

 こっちも頑張ろう。


 そうして進んだ先に、広大な部屋があった。

 おそらく、元はダンスホールか何かで、更に周囲の壁を取り除いて広くしている。

 二階続く階段はないが、ところどころ二階部分に扉がいくつかあった。


 それだけなら問題ないが、現状は大いに問題ありの物が散乱している。


 人一人が簡単に入れそうなくらいに巨大なフラスコに、その巨大フラスコに接続されている機器のようなモノと実験器具類。

 それと、それらを一塊にするかのように、床には魔法陣が描かれている。


 しかも、それは一つだけじゃない。

 この広大な室内目一杯を使用して、数多く置かれている。

 下手をすれば、三桁に届いているんじゃないだろうか?

 まるで実験施設のようで不気味。


 ただ、なんというか、似たようなモノというか、感じられる雰囲気に近いモノがある事を思い出す。

 ……世界樹の島近くにある、造形の女神様たちの研究所。

 その地下施設に、どことなく似ている。


「……フォー」


 さすがに無視出来ない気がしたので、詩夕たちとシャインさんにも足をとめてもらい、俺たちの中で地下施設に最も触れていたであろうフォーに確認を取る。


 フォーはわかっていると頷き、近付いていく。

 余計なモノには触れないように目視で確認しつつ、時折手を取って、一塊分を調べた。


 でもまあ、多分間違えるだろうから、今の内にセブン辺りに――。


「……なるほど。やってるようだね。これは」


 フォーは一つ頷くと、こちらに振り返って一言そう言う。

 え? もうわかったの?

 なので、尋ねる。


「何かわかったのか?」

「その前にボスに確認だけど、前に神を解放した時、そこの魔王と似たような容姿のとやり合ったんだよね?」

「そうだけど。……まさか?」

「そう。そのまさか。ここは『生命体ホムンクルス生成場』のようなモノ。そういう施設があの廃城にあれば気付いただろうし、ボスからそういう話も聞いていない。つまり、ボスとやり合った生命体ホムンクルスはここで生成されて、多分一番似ていたか、出来の良いのを連れて行ったんだと思うよ」


 フォーは途中から魔王マリエムに向けて言っていた。


「………………」


 でも、魔王マリエムは答えない。

 沈黙は肯定とも取れるし、フォーの推理が正解しているって事なんだろう。


 詩夕たちは驚き、シャインさんは実験器具類をジッと見ている。

 エイトたちは……興味なさそうだった。

 いや、そういうのがいくら居ようが、自分たちには関係ないと思っているのかもしれない。


 もちろん、俺も驚愕だった。

 この施設の事もそうだけど、それじゃない。


「……フォーが有能に見える……だと」


 うんうん、とエイトたちも頷く。

 エイトたちもそっちが気になっていたようだ。


 俺の言葉とエイトたちの態度に、フォーがキレる。


「ボスー! いい加減認めるべきじゃないかな? 我輩の優秀性、それと有能性を! だからこそ、この施設の確認を我輩にさせたんだろ?」

「いや、なんとなく見当違いの推理を披露して、セブン辺りが正解を導くかな? と」


 うんうん、エイトたちが頷く。


「それは酷いよ! ボス」

「ごめんなさい。でも、魔王マリエムの態度から、間違いじゃないっぽいし、これでフォーの優秀性と有能性は証明されたも同然じゃない?」

「その通りだ! 我輩、天才!」


 フォーの自信の復活が早い。

 褒められ慣れていないから、いざ褒められると効果抜群なのかもしれない。

 これで調子に乗って、また失敗しそうな気がするけど……大丈夫だろうか?


⦅危険性がある場合は、その前にお知らせします⦆


 お願いします。

 いや、待って。

 危険性がない場合の失敗は?


⦅………………⦆


 そっちは教えてくれないのか。

 その方が面白そうだから、とか思っていそうだ。


 まぁ、それは良いや。

 ……さて、こうなってくると、この場を無視する事は出来ない。

 魔王マリエムに聞きたい事が出来た。


「一つ、教えて欲しいんだけど?」

「………………」

「さすがに、これだけの数となると無視出来ない。それに、俺が対峙したように、無事なのも居ると思うんだけど……どこに居る?」


 俺が対峙した生命体ホムンクルスの力は、正直なところ脅威しかない。

 セミナスさんが先を見て指示してくれたからこそ、俺は勝てた。


 もしあれば一人だけじゃなく、もっとたくさん居たら……。


 それはとんでもなく脅威だ。


「私たちは……魔王は……ある程度距離が離れていても、心を通わせる事が出来るわ」

「……一体何を?」

「どうしてかしらね? やっぱり、同時期に作られたから? それとも、元となった感情の持ち主が同じだからかしら?」


 不穏な気配を感じ、身構える。

 それは俺だけじゃない。

 詩夕たち、エイトたち、シャインさんもだ。


「でも、離れていても情報を共有出来るって便利よね。だから、ここに入った時に通じたから、伝えておいたわ。私たちにとって、ララにとって、あなたたちは間違いなく脅威だから、すべて動かした方が良いってね」


 魔王マリエムが言い切るのと同時に、いくつかあった二階部分の扉が一斉に開き、そこからたくさんの人が次々と飛び下りて襲いかかって来た。

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