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この行く道は明るい道  作者: ナハァト
第十四章 大魔王
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言葉が難しい時ってある

 俺、詩夕たち、エイトたち、シャインさんは、DD、ジースくんたち、ミレナさんの竜の背に乗って、ぐるりと遠回りして大魔王城の裏手に回る。

 表の方は、EB同盟と大魔王軍本軍が本格的に戦っている戦場だ。

 その間に、俺たちで大魔王城に入る。


 当然、裏手の方にも大魔王軍は居るそうだけど、問題ないらしい。

 セミナスさんが言うのは、数は居るけど、DDたちの敵ではないそうだ。

 それでも、DDたちとはそこで一旦お別れ。


 大魔王城を進む俺、詩夕たち、エイトたち、シャインさんのあとを追わせないために、裏手に居る大魔王軍本軍の相手をしてもらわないといけないようだ。


 そこにもかなりの数が居るそうなんだけど、大丈夫なのだろうか?


⦅心配するだけ杞憂です。竜の力は人とは比べ物になりませんから⦆


 でも、ミレナさんはともかく、DDやジースくんは、ここ最近の鍛錬時に、シャインさんによく泣かされていたけど?

 ミレナさんもそれに協力してたし。


⦅……何事にも例外は存在します。……しかし、マスターに私の言葉が疑われるような要因を作ったのは許せませんね。のちのち、もう少し鍛えてもらいましょう⦆


 ……DDたちも頑張っているから、ほどほどにしてあげて。


⦅そうですね。ほどほどにしておきます⦆


 ……果たして、セミナスさんにとってのほどほどってどれくらいなんだろうか。

 少しって言った方がよかったのかもしれない。


 ついでに言えば、ドラーグさんはこの場に居ない。

 待機してもらっているというか、いざという時の俺の切り札的召喚なので、万全の態勢で待ってもらっている。


 そもそも、大魔王城裏手に居る大魔王軍は、DDたちでも過剰戦力だそうだ。


「だから、安心して良いよ、ジースくん」


 俺を背に乗せているジースくんにそう言う。


「いや、いきなり安心してとか言われても! もっとこう、話の脈絡と言うか、主語をしっかり言ってからにしてくれない?」

「あぁ、それもそうだね」


 セミナスさんとの会話をそのまま続けてしまった。

 ジースくん相手だと、ついつい気軽に話してしまう。

 それだけ仲がよくなったという事でもあるけど。


 なので、どこか緊張しているように見えるジースくんに、過剰戦力であり、安心だと伝える。


「それに、寧ろ危険なのは大魔王城の中に突入する俺たちの方なんだし」

「それもそうだね。じゃ、こっちは大丈夫だから、そっちは頑張ってね」

「軽いっ! それは軽いよっ! ジースくん!」


 笑い合う、俺とジースくん。

 もちろん、軽口だという事がわかっているからだ。

 だからこそ、俺たちは互いの無事を祈る。


「また会おうね、ジースくん」

「それはこっちのセリフだよ、アキミチ」


 先頭を進むDDの速度が上がり、高度が下がっていく。

 大魔王城に近付いて来た証拠だ。


 雲の中を通り、抜けた先は……巨大な城と、その周囲に群がる魔物たち。

 数が多過ぎて地面が見えないほどだ。


 それと、EB同盟が戦っている正面側の戦場も、大魔王城に遮られて見えない。

 EB同盟はどうなっているだろうか。

 裏手に居る魔物の数が凄まじいという事は、正面側はそれ以上だろう。


 ………………。

 ………………。


 今は悪い事は考えない。

 目の前の事に集中だ。


 自分に活を入れるため、両頬を叩く。


⦅マスター! 竜にしがみついてください! でないと落ちます!⦆


 セミナスさんの声に反応して、ジースくんにしがみつく。

 瞬間、大岩がジースくんの横を通り過ぎていった。

 どこかで見た事ある光景だと思いつつ、しがみついたまま下を見る。


 大猿としか言えないような魔物が投擲後のような姿勢で、こちらを見ていた。

 どうやら、俺たちの接近に気付いたようだ。


「アキミチ! ここからは揺れるから、しっかりとしがみついて!」

「わかった!」

「きっちりと届けるよ!」

「信じてる!」


 飛ばされないように、落ちないように、ジースくんにしっかりとしがみつく。

 揺れながら、ジースくんは飛ぶ。


 どうやら、DDたちに気付いた大魔王軍本軍が、攻撃を始めたようだ。

 まぁ、大魔王城に向かって一直線だったし、どういう理由でここに現れたのは、直ぐに察したんだろう。


 揺れる視界の中で確認すれば、DDにミレナさん、他の竜たちも回避行動を取りながら進んでいる。

 全員、落ちないようにしがみついて……いや、一人だけ立ってた。


 ミレナさんの背に乗るシャインさんだけは立っていて、楽しそうにしている。

 状況的に好きそうだよね。

 GO! GO! もっと飛ばせ! みたいな事とか言ってそうだ。


 そうして、攻撃を避けるためにDDたちは左右に大きく動く事はあっても、大魔王城までの最短距離を飛んで行く。

 そのまま突撃するのかと思っていたが、その前に何体かの魔物が、先頭のDDに向けて魔法を放つ。


 空中で魔物の魔法が混ざり合い、一つに。

 螺旋を描くようにしてDDに迫る。


「馬鹿めっ! ここ最近、鍛錬ばかりで飽き飽きしていた私の怒りを知れ!」


 DDがスゥ……と息を吸い、大きく口を開いて吐き出す。


 ――ドラゴンブレス


「躍らせろぉー!」


 本音の咆哮と共に、DDの開いた口から黒い光線が放出される。


 叫び声はアレだが、威力は本物。

 ミレナさんによると、前より1.5倍は威力が増しているそうだ。


 踊れなくて、相当ストレスが溜まっているのかもしれない。

 この戦いが終われば、是非とも好きなだけ踊って欲しいモノだ。


 そして、DDのドラゴンブレスの威力は本当に本物だった。

 混ざって迫る魔物の魔法を丸ごと飲み込んで、そのまま地上に突き刺さったかと思えば、十数体の魔物を巻き込んで、地表の一部を焼き尽くす。


 ドロッドロに溶けて、溶岩のようになっている。


 ………………こわっ。


⦅問題ありません。食らわなければどうという事はありませんし、やられる前に殺れば良いのです。それに、私ならASで防げます⦆


 DDも頑張ったんだから、少しは褒めてあげようよ。

 セミナスさんは、いつだって厳しい。


 他にも、ジースくんだけじゃなく、ミレナさんと竜たちもドラゴンブレスで大魔王軍本軍の魔物たちを蹂躙する。

 その光景は、まるで世紀末であるかのように激しい。


 地上に溢れていた大魔王軍本軍の魔物たちの中に、ぽっかりとした穴が出来た。

 そこに下り立ち、DDが大魔王城の城壁を殴って穴を作る。


「ここから入れ!」


 竜の背を下りた俺たちは、穴に向けて駆ける。

 その際、DDにも一言。


「じゃあ、ここは任せた!」

「安心しろ! 魔物一体通さん!」


 俺たちは、大魔王城内に足を踏み入れた。

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