表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この行く道は明るい道  作者: ナハァト
第十三章 大魔王軍戦
487/590

別章 EB同盟対大魔王軍本軍 10

 ベヒモス討伐からのベヒモスゾンビの姿が飛んで行くまでの光景は衝撃的だった。

 その光景はEB同盟、大魔王軍本軍、どちらにも少なからず影響を与える。


 EB同盟は歓喜。

 強者たちはさすがだと喜び合い、別の効果も生む。

 それは、協力し合えば、自分たちはもっとやれるのではないのか? という思い。


 騎士、兵士、冒険者といった垣根は、既に超えて協力し合っている。

 だが、それは同国所属の内部だけの事。


 冒険者たちはそういった部分が希薄だが、それでも普段自分が活動している町のある国が所属だという認識は少なからず持っている。

 それでも、冒険者同士という事であれば、それほど気にするようなモノではなかった。


 なので、どちらかといえば、変なしがらみはなく、直ぐに協力し合えるとも言える。

 実際、冒険者同士は協力し合って、大魔王軍本軍を相手に戦っていた。


 問題なのは、国にがっつり所属している騎士や兵士たちの方。

 特に、ラメゼリア王国所属と軍事国ネス所属の二国。


 立場上、声明上などなどにおいて、大魔王軍との最終決戦前に、ビットル王国を間に挟んで和解は済んでいる。

 しかしそれは、言ってしまえば国の上層部が決めた事。


 過去争い合った出来事というのは、中々拭えるモノではない。


 けれど、ベヒモス、ベヒモスゾンビ討伐は、そういう部分を超えて協力し合えるきっかけとなった。

 国を越えて誰もが知るほどの各国の強者たちが手を組んで、ベヒモス、ベヒモスゾンビと立て続けに討伐したのだ。


 その姿を見て、今は自分もそういう部分を超えて協力し合うべきだと思わされる。

 ここから先、立場や役職的なモノだけではなく、国も超えて協力し合っていくようになっていき、誰しもがEB同盟の一員として行動していくようになっていった。


 そして、大魔王軍本軍の方にも変化が訪れる。

 魔物において……というよりは、生物において、それが絶対という訳ではないが、大きさというのは強さの象徴の一つだろう。


 特に、魔物は人と違ってその大きさは様々であり、大抵の場合において、大きければそれだけ強い。


 何より、ベヒモスはその筆頭といっても良いだろう。

 その巨躯から繰り出される質量攻撃は、脅威そのものなのだ。


 しかし、そのベヒモスは倒されてしまった。

 しかも、魔物からすれば、劣っているはずの人の手によって。


 そこで初めて、大魔王軍本軍はEB同盟を敵とみなした。

 これまでは、そこまで意識していなかったのだ。

 というよりも、本気を出さずとも、どうにでも出来る存在であると思っていた。


 だが、今は違う。

 ベヒモスとベヒモスゾンビに向けられた力を目の当たりに、意識を変えられた。


 目の前の相手は格下ではない、と。


 身体能力など、個としての力は自分たちが優っている。

 だが、中には自分たち以上の力を持った個体も存在している事に加えて、全体的に戦い方というモノを理解しているという事を、大魔王軍本軍の魔物たちは悟った。


 また、空から見れば一目瞭然かもしれない。

 当初は、数的にそこまでの差はなかったのだが、今は違う。

 EB同盟側に後方からの援軍が追加されているというのもあるだろうが、大魔王軍本軍側の方が被害は大きく、その数は目に見えて減り始めている。


 如実に差がつき始めているのだ。

 本能的にそういった部分も悟り、大魔王軍本軍の魔物たちは、自らが生き残るためには、目の前の敵を倒さなければならないと、EB同盟に強い意識を向ける。


 相手を追い払うようなお遊びの殺意ではなく、生きるために全力で獲物を仕留める真剣の殺意を、大魔王軍本軍はEB同盟に向けたのだ。

 そのためにどうすれば良いのかを導き出す。

 大魔王軍本軍……いや、大魔王軍には解答と導き出す力が備わっていた。


 それは、知性。


 大魔王軍の魔物たちと、野良である他の魔物たちを明確に分ける要素の一つである。

 これまで対峙してきた大魔王軍にも当然知性は備わっていたが、そこまでのモノではない。

 精々が、簡単な命令を聞く程度。


 当然、大魔王軍本軍にもそれだけの知性は備わっていたが、己に対する元来の強さへの信頼が邪魔をして、そこを意識していなかったのである。

 だが、EB同盟を明確な、それこそ己の命を脅かす敵として認識すれば、話は別であった。


 備わっている知性が働き始め、大魔王軍本軍の動きは外周部、内周部問わずに変化していく。

 いや、最早進化と評するべきか。


 個々で敵わない、もしくは、集合体に対して個で挑むのは危険であると判断して、集団行動を取り始めたのだ。

 具体的に言えば、個々で戦っていた大魔王軍本軍の魔物たちが、協調性を見せ始めたのだ。


 それは本当に些細な事。

 己の周囲に居る魔物に危険な兆候があれば、ほんの少し手を貸す程度。

 それだけでも、充分な脅威となる。


 魔物同士が協力するという事実が重要なのだ。

 些細であってもそのような行動が取れるようになれば、それは少しずつ大きくなっていき、果ては一対多で勝てないのであれば、多対多で戦えば良いという結論に辿り着く。


 そこで大魔王軍本軍の魔物たちにとって更に助けとなるのが、上官クラス以上の魔物たち。

 自分勝手に動いてきたのはここも同じなのだが、知性は更に上。

 同じように現状を理解したからこそ、他の魔物たちに指示を出し始める。


 指示に従い始め、共闘し始める魔物たち。

 充分な脅威が、更に大きな脅威を形作る。


 バラバラに点在していた個の戦いが、集同士の戦いへと変化していき、点と点に線が引かれ、面の戦いにまで変化する。

 上官クラス以上の魔物の指揮の下、遂に大魔王軍本軍は集団行動を取るようになったのだ。


 それは確かな勢いを、大魔王軍本軍に与える。

 大魔王軍本軍が集団行動でEB同盟に襲いかかる様子は、意思を持つ大津波が押し寄せるようなモノ。


 大魔王軍本軍の魔物たちもまた種の垣根を超えて協力し合い、EB同盟に対して、その獰猛な牙と爪を剥き出しにして襲いかかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ