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この行く道は明るい道  作者: ナハァト
第十三章 大魔王軍戦
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別章 EB同盟対大魔王軍本軍 1

『ヤアアアアアアアアアアッ!』


 EB同盟側から咆哮が轟く。


『グアアアアアアアアアアッ!』


 大魔王軍側からも咆哮が轟く。


 双方共に叫びながら、前列にあたる部分が遂に激突した。

 倒すべき敵は前後左右を見れば良い。

 どこにでも存在している。


 それは、どちらにとっても、だ。


 より過密なのは、EB同盟の方だろう。

 確かに、ここに大魔王軍全体が集結していると言っても良いほどに、魔物の数はおびただしい。

 詩夕たちの特殊武技によって多少なりとも減ったとは思えないほどに。


 ただ、総数で言えば、EB同盟の方に軍配がある。

 けれど、大魔王軍を数の力で押し切れるかと問われれば、答えはノーだ。


 大魔王軍には数の力に負けない個の力があるのだ。


 数の力のEB同盟。

 個の力の大魔王軍。


 その図式は、ここまできても、最終決戦であろうとも変わらない。


「グアアアアアッ!」


 咆哮と共に、牛型の大きな魔物が、手に持つ巨大な棘付き棍棒を振るう。

 棍棒の大きさからかなりの重量だと推測が出来るが、そんな重量など関係ないとでも言うように、振るわれる速度は速い。


 ただ、それは、思った以上に、という注釈が付く。

 しっかりと見据えていれば、回避する事も受けとめる事も出来る。


 実際、相対していたEB同盟側の騎士や兵士、冒険者たちは、なんなく回避したのだが、途中で受ける者がいた。


 棍棒が振り切られた場合、他の魔物と戦っている者に当たっていたからである。

 それを防ぐために受けたのだ。


 こういういった事は、ぶつかり合ったあとから直ぐに起こっていた。

 目の前の魔物に集中したいが、それだけ他から飛んでくる攻撃に対処しきれずにやられてしまう。


 全方位への警戒が常に必要な状況となっていた。

 寧ろ、大魔王軍の方が気にしていない。


 実際、人狼型の魔物が何度も爪を振る続け、相対していた冒険者は上手く回避し続けるが、その最中で他の魔物を裂いたり殺したりしていたが、まったくと言って良いほどに気にかけていなかった。


 心に留めるような事も一切ない。

 それで死んだ方が間抜けであり、弱いから死ぬのだと、どの魔物もそう考えている。

 だからこそ、周囲への被害など気にしない。


 ただ、本能のままに暴れるだけ。

 思うままに自分の力を振るうだけ。


 大魔王軍の魔物たちは、そのほとんどがEB同盟に対して個別に戦っていると言っても良い。

 けれど、ほとんどという事は、中には集合体として複数でEB同盟に襲いかかる魔物も当然居る。


 代表的なのは、ゴブリン系統、コボルト系統、ウルフ系統ぐらいだろうか。

 個としての戦力は全体的にみれば大した事はないが、集合体で襲いかかる事によってその真価を発揮するタイプと言える。


「グギャギャギャ!」

「グギィ!」

「ゲゲゲ!」


 特にその傾向が顕著なのは、ゴブリン系統だろうか。

 数と系統内の種類が豊富であるが故に、それらが一斉に襲いかかるだけで脅威である。


 この戦場でもその行動は変わらない。

 群れて、EB同盟に襲いかかる。


 だが、こと今に至って、この戦場、この戦いでは、そこまでの脅威ではなかった。

 何しろ、ゴブリン系統は基本的に数が脅威であり、個体値でみればそこまで高くはないのだ。

 それこそ、一対一であれば、人の方が強いのはザラである。


 もちろん、強い個体も存在するにはしているが、同クラスもしくはそれ以上は現在そこら中に居るので、それだけで脅威とはならない。


 また、数で押す系統の魔物にとって、今はそれほど活躍出来る場ではなかった。

 何しろ、数の利を活かせるだけのスペースがないのだ。


 ここに居るEB同盟の騎士や兵士、冒険者は、いってみれば精鋭である。

 個別の戦力を比べれば、当然のように上回っている。

 そこに、他を考えない魔物の攻撃が放たれるのだ。


 ある意味、この戦場で一番の被害を受けるのは、数で押す系統の魔物だろう。

 気が付けば数が減り、僅かに空くスペースを活かせるまでになった頃は、最早脅威でもなんでもない。


 EB同盟が他の魔物を相手にしている間に、邪魔だと倒されるのがオチとなっていた。


 そうなってくると、魔物同士も協力し合えば良いという結論に辿り着く。

 実際、これまでEB同盟が相対してきた大魔王軍は、そういう傾向も残されていた。

 命令がしっかりと行き届いている、と言っても良い。


 けれど、ここは個で戦う魔物が多く、乱戦の様相を呈している。

 そうなってくると、指揮の言葉など届かない。


 また、ここは他の地に居る大魔王軍と違い、自らの強さに自信を持つ魔物が多い。

 強さに自信を持っていればいるほどに、それはある傾向を顕著にさせる。


 それは、他種と協力は一切取らないという事。


 言ってしまえば、同種でなければ……いや、たとえ同種であったとしても、行動を共にするような素振りが一切ないのだ。

 まるで、優れているのは自分たちの種であって、その他は足手纏いでしかないかと言うように。


 故に、上官クラスの魔物が指示を飛ばそうとも、聞く魔物は居ない。

 ただただEB同盟を獲物のように捉えて、襲いかかるだけ。


 といっても、そんな魔物たちの行動を、上官クラスの魔物が気にするかといえば、特に気にしていなかった。


 死んだら弱いだけ。

 弱いから死ぬ。


 と、力がすべての魔物らしい思考回路なのだ。

 また、そもそもの話、上官クラスの魔物たちですら、協調性は一切ない。


 基本的には、こっちはこっちで勝手にするから、そっちはそっちで勝手にすれば? と言うスタンスであった。


 だからか、大魔王軍からすれば、戦線はほぼ関係なくなっている。

 足をとめてEB同盟と戦う魔物も居れば、本能のままにEB同盟内を突っ切っていこうとする魔物が居るなど、自らの思うままの行動しかとらない。


 この、軍隊として関係ない行動に、EB同盟は戸惑ってしまった。

 戸惑いは思考を妨げ、予期せぬ隙を作ってしまう。


 それは各所で起こり、EB同盟は押し込まれていく。


 ファーストアタックは詩夕たちによって獲得したが、序盤の序盤は大魔王軍の勢いに押されるような形で、EB同盟は出鼻を挫かれた。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 他の小説では忘れがちになってしまうが、「やっぱり魔物って強いよな」って感じさせてくれるとこ 戦記ものでもない限り、あまりこういった描写は物語の序盤だけで終わってしまうので、ハラハラドキドキ…
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