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この行く道は明るい道  作者: ナハァト
第十三章 大魔王軍戦
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大丈夫だと信じて待つしかない時だってある

 EB同盟と大魔王軍が衝突する場所から、少し離れた位置にある森の中。

 ここなら見つからないとセミナスさんが提示してきたので、俺たちはここで待機していた。


 すると、どこか遠くの方で起こった激しい衝撃が伝わってくる。

 閃光みたいなモノも発生していた。


 もしかして、今のが?


⦅はい。勇者たちの『特殊武技』によるモノでしょう⦆


 うぅ~ん。怖い。

 詩夕たちが初撃を行うと言っていたから、これでEB同盟と大魔王軍の火蓋が切って落とされた訳か。


 もうとまれない。

 説得も交渉もないだろうから、決着が着くまで戦い続ける事になる。


 でも、これは元からそういう戦いだった。

 相手がこちらを獲物と思っている魔物である以上、共存は無理。

 どちらかがどちらかを倒すまで続けられている長い戦い。


 その決着が漸く……という感じだろうか。

 大魔王と相対する俺たちを主力と考える人が居るかもしれないけど……でも、この戦争の主役はやっぱりEB同盟だと思う。

 俺たちは、最後の一押しをするようなモノだ。


 セミナスさんによると、大魔王軍にはまだまだ強者が居るそうだけど、EB同盟内の強者であれば、充分対抗出来るそうだ。

 助太刀も来る事らしいし、今は大丈夫だと信じるしかない。


 それにしても、詩夕たちの初撃はだいぶ激しかったようだけど、これは大魔王軍にとっても大きな打撃となるんじゃない?


⦅いえ、残念ですが、この地に集う大魔王軍――大魔王軍本軍とでも言うべき総数からすれば微々たるモノです。それは、そこに居る魔王も理解しています⦆


 セミナスさんがそう言うので、様子を確認。

 そう。俺たちは城の地下から秘密裡に魔王マリエムを連れ出し、行動を共にさせている。


 なんでも、城に残しておく方が危険なんだそうだ。

 直接的な力は封じているけど時間制限があるようだし、頭の回転が速い魔王だ。

 一人にすると、力がないなりに抜け出しそうである。


 なので、行動を共にさせる事にした。

 エイトたちにシャインさん、DDたちに、あとで詩夕たちが合流するから、たとえ力が戻っても大丈夫だろう。


⦅問題ありません。私の敵ではありませんので⦆


 セミナスさんは、魔王マリエムに対して、ちょっと対抗気味だ。


 そんな魔王マリエムに動揺した様子は確かに見られないというか、そもそも気にしていないように見えた。

 エイトたちが魔王マリエムの周囲を固めているのだが、そもそも抵抗する様子すら一切ない。


「……関係ないわよ」


 様子を窺っていたら、急にそんな事を言い出した。


「……何が?」

「あなたの視線が言っている事に答えただけよ」

「言っている事?」

「先ほど伝わってきた衝撃が、開戦の合図だったのでしょう? あなたたちに慌てた様子は見られないから、ここまで伝わるような衝撃の攻撃を行ったのは、あなたたち側。この場に私と戦った者たちが居ない事から、攻撃を行ったのはその者たちではないかしら?」


 俺は答えない……というよりは、口を挟む暇がないというか。


「大魔王であるララが居る場所は、最も戦力が集中しているわ。もちろん、数もね。伝わってきた衝撃から大体の威力は推察出来るし……それでも、総数からすればそれほど多くはないでしょうね。それに、本気ではなかったでしょう? 私と相対していた時の方が、もっと力の高まりを感じたもの」


 当初と変わらず、瞬時に色々と察してくるな。

 これこそが、魔王マリエムの一番の力なのかもしれない。


「……まぁ、私としては魔物がいくらやられようとも関係ないわ。それよりも……」


 そう言って、魔王マリエムが視線を横に向ける。

 エイトたちを飛び越えて、そこにはDDとジースくんたちに、ミレナさんが居た。


「ずるいと思わない? みんなだけで暴れていたなんて。私は他の竜への指示出しで忙しかったのに」

『………………』


 DDとジースくんたちは何も答えない。

 ただ正座して黙し、ミレナさんからの愚痴を聞いている。


 その時、竜の中の一体が挙手。


「……何かしら?」

「それが姉御の竜女王としての役割では?」

「そうね。だから、愚痴だけで済ませていたんだけど……姉御呼びを許容した憶えはないけど?」

「………………あっ!」


 鉄拳制裁によって頭部が地面にめり込んだ。


「……連帯責任って言葉知ってる?」


 ミレナさんの問いに、DDとジースくん、他の竜たちは一斉に首を左右に振る。

 知りません、と全力で否定を示す。

 寧ろ、反応した段階で知っていると言っているようなモノだけど。


 魔王マリエムがどこか呆れたような息を吐く。


「……竜が相手だと知っていれば、もう少し違った手段が取れたのだけど」


 だろうね。

 頭脳明晰の魔王マリエムなら、色々な手段が取れてもおかしくない。


⦅私の方がより多くの手段を取る事が出来るだけではなく、その中から最も適した正解を導き出す事が出来ます⦆


 わざわざ対抗しなくても、セミナスさんが最優秀なのはわかっているから。


 すると、エイトがこちらに来て、俺の服を引っ張ってくる。


「どうした?」

「ご主人様。エイトはこの先の事を考えて不安を抱いて震えています。ですので、震えを抑えるために抱き締める事を希望します」


 エイトの言葉に賛同して、ワンたちも「ハイハイ! 私も!」と自己主張してくる。


「いや、誰も震えていないよね。寧ろ元気一杯だし、緊張感すらない」

「イイエエ、ソソソンナ事ハワハ……」

「それは震えているというより、寧ろ壊れたようになっているんだけど」


 ハッ! と気付くエイト。

 そうだった! と気付いたワンたち。


 揃って何をやっているんだか。

 まぁ、姉妹としての仲の良さは感じるけど。


「………………」


 ただ、そんな様子を魔王マリエムはジッと眺めているだけ。

 表情から感情は見えないけど、どことなく嬉しそう……じゃなくて、懐かしんでいるように見える。


 多分、エイトたちを見て、自分が造った「生命体ホムンクルス」の事を思い出しているのかもしれない。


 そうして待っていると、詩夕たちが姿を現す。


「おかえり」

「ただいま、アキミチ」

「疲労は平気?」

「大丈夫。そこまで疲れていないし、竜たちの背に乗って移動している間に回復出来るよ」

「そっか。なら、早速出発しよう」


 そして、大魔王のところに向けて、俺たちも出発する。

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