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この行く道は明るい道  作者: ナハァト
第十三章 大魔王軍戦
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そこを追及されるのはちょっと……てある

 東部側を攻略してきたEB同盟が合流してきたとはいえ、廃城、廃町共に、まだまだ敷地的な余裕はあるように見える。

 西部側を攻略しているEB同盟が合流しても、そのまま周囲を取り囲む土壁の中に入る事は出来るだろう。


 つまり、場所はある訳だが、何故かシャインさんとロアナさんは、土壁の外側でやり合っている。

 野良の魔物が現れる可能性もあるのだが、それならそれで、そういうアクシデントを利用して相手を倒すつもりだと、二人の目と雰囲気は語っていた。


 で、実際にやり合っている二人だが……やはりというべきか、シャインさんの方が強い。

 過去の話だと、ロアナさんは同レベル、もしくは強かったかもしれないが、完全に逆転している。


 現在のアドルさんの強さは、シャインさんも認めているから、やはり氷漬けにされていたブランクの差は大きいという事だろう。

 それでも、ロアナさんはシャインさんに食らいついていた……というよりは、少しずつ動きがよくなっているというか、洗練されていっているように見える。


⦅私と似たようなタイプかもしれません⦆


 セミナスさんと同タイプって事は「未来予測」系統のスキルがあるって事?


⦅いえ、俗にいう、天才と呼ばれるタイプです⦆


 ……えっと。


⦅あっ、ちなみにですが、私は超天才タイプですので、『似たような』と言わせていただきました⦆


 逆にチープだと思うのは気のせいだろうか?

 でも、セミナスさんの能力は実際そのレベルだ。

 否定は出来ない。


 シャインさんとロアナさんの模擬戦を、隣で一緒に見ているアドルさんに確認。


「段々と動きがよくなっていきますけど、前からあんな感じなんですか?」

「ああ。なんというか、感覚や勘が良い……とロアナは言っていた。それと、自分の事を俯瞰に捉えて修正点を見つけて修正していく作業……みたいな事を言っていたな。よくわからんが」


 ロアナさんは本当に天才タイプなのかもしれない。

 少なくとも、俺には無理だ。


⦅ご安心を。マスターには私が居ますので、天才レベルであろうとも問題ありません⦆


 まぁ、一番だと思われる方が直ぐそこに居るから、畏怖みたいなのは感じないかな。

 普通にすごい、とは思うけど。


「それにしても、エルフの方もかなり強くなっていない? 前々からその傾向はあったけど、なんかここ数カ月で更に、て感じじゃないかな?」

「エルフ? シャインさんの事? いや、アドルさんも一緒にドラロスさんに鍛えられていたじゃないですか。なんでそんな他人行儀な呼び……方……」


 あれ? なんか声の質が変わった?

 というか、アドルさんの声じゃなかった。


 隣を見れば、アドルさんがどこか観念したかのように目を閉じて口を噤んでいる。

 ――その隣。ラメゼリア王国における最強。

 槍使いのカノートさんが居た。


 その視線は興味深そうにシャインさんとロアナさんの戦いを見ている。


 ………………。

 ………………。

 う~ん。あまりにも自然に入ってきたから、気付くのが遅れてしまった。

 ……えっと、セミナスさん?


⦅敵意がありませんでしたので。それに、こういう輩は拒絶するよりさっさと味方に引き込んだ方が何かと得で便利ですので⦆


 引き込んだ方が得と便利って。

 とりあえず、まずは久し振りに会う訳だし、挨拶だろう。


「……お久し振りです、カノートさん。元気そうで何よりです」

「うん。久し振りだね、アキミチ。それで、ドラロスさんって誰?」


 ………………そういえば、この人も槍使いの最強として、なんだかんだと強さを求める傾向があったような気がする。

 竜の協力に関しては知っている立場的に知っているかもしれないけど、ドラロスさんは世界樹のある島から出る事は出来ない。


 教えると、連れて行って欲しいと言われそうだ。

 なので、ここは話を変えよう。


「サーディカさんはお元気ですか? というか、一緒じゃないんですか?」

「もちろん元気だよ。サーディカも強いからね。ここに付いて来ている。今はシユウたちが相手をしているよ」

「そうなんですね」


 俺もその場に――。


「で、ドラロスって?」

「………………えっと」

「ドラロスって?」

「………………」


 アドルさんに視線を向けると、ロアナさんを応援していて我関せず状態だった。


⦅確認しました。どうやら、行軍を共にした事で、これまで何度も催促されたようです。魔王を撃退した力がどれぐらいか知りたい、と。ただ、吸血鬼は見てわかる通り本調子ではありませんので、それを理由に断っていたようです⦆


 で、そこに現れたシャインさんに、ドラロスさんに鍛えられたという言葉か。

 ……どうしたら良いの? セミナスさん。


⦅ですので、味方に引き込んでしまえば良いのです⦆


 ……まぁ、念を押しておけば大丈夫か。

 それに、セミナスさんが否定しないって事は、容認しているようなモノだし。


「……秘密にしてくださいね?」

「もちろんだよ」


 そう言うカノートさんの笑みは、輝きで眩しかった。


     ―――


 この戦いが終わったあとに、世界樹のところへ連れて行く事をカノートに約束させ、そのあと、シャインさん、ロアナさん、カノートさんという三つ巴の模擬戦が行われてから、更に数日が経った。


 最初に気付いたのは、廃町の見回りをしてくれていたEB同盟の兵士さん。

 西部側を攻略しているEB同盟が、遂にここに辿り着く。

 東部側を攻略していたEB同盟が歓声と共に出迎える。


 俺はその中に紛れながらその様子を見る。


 先頭に居るのは……ウルトランさんと獣人国の皆さん。

 うん。まぁ、好きそうだよね、その位置。

 ウルアくんとフェウルさんがその脇を固めている。


 あとは軍事国ネスが中ほどに居て……女王であるガラナさんの存在感というか、大物感が半端ない。

 ウルトランさんが引き立て役のようにしか思えないくらいに。

 ガラナさんの妹であるカリーナさんと、シュラさんの姿も見かける。


 シュラさんからも、竜とやらせてとか言われそうだなぁ……。


 最後尾は魔族の国の人たち。

 ロイルさんがこそこそとあの宰相さんの陰に隠れている。

 もう少し堂々とした方が……いや、あれはあれで、あの宰相さんを盾にしているようなモノだから、寧ろ推奨しておこう。


 そんな宰相さんと目が合った気がした。怖い。


 そんな感じで様子を窺っていると、不意に肩が叩かれる。

 振り返れば、全身鎧の男性と笑みを浮かべる獣耳の女性――インジャオさんとウルルさんが居た。

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