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この行く道は明るい道  作者: ナハァト
第十三章 大魔王軍戦
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説明は抜かりなくきちんと

 EB同盟の代表者たちと、身の回りとか一部の人たちは廃城を使用し、他の人たちは廃町跡でテントを使用している。

 このあと西部側を攻略しているEB同盟も来るんだけど………………大丈夫かな?


⦅ギリギリ入ります。それに、ここに長居する訳ではありませんので、一時だけでも休めれば充分でしょう。集合場所、もしくは中継地点でしかありません⦆


 まぁ、それもそうか。

 未だに東部の後方から補充人員と救援物資が届けられているけど、大丈夫だよね?


⦅問題ありません⦆


 なら、良し。


 アドルさんとミレナさんを廃城まで案内し、一室をあてがう。


「ここを使ってください。まぁ、何もない部屋ですけど」


 ボロボロの絨毯とか、崩れた棚のようなモノがあるくらいだけど。

 一応、換気だけはしておいた。


「屋根がしっかりしていて、二人で過ごせるならそれで問題ない」

「そうですね。身の回りに使用する物類はアドルのアイテム袋の中に入っていますし。それよりも、私はアキミチからもこれまでの事と、わかった事というのを教えて欲しいわ。でないと、落ち着いて休めません」


 最前線ですしね。

 落ち着かないというのもわかる。


 そう思っている間に、アドルさんがアイテム袋の中からテーブルセット一式に、飲み物と茶菓子を取り出して、テキパキと場を整える。

 いやいや、待って待って。


 アドルさん。あなた、そんな感じでしたっけ?

 確かに、そういうのはこれまでウルルさんがやってくれていた。

 基本アドルさんは見ているだけ。


 俺とかインジャオさんは偶に手伝っていたし、エイトたちは率先してだけど。

 つまり、アドルさんがそういう事をしている姿は一切見てこなかった。


 なのに、今はこれ?

 元王様って肩書を、ここにきて率先して砕いていきますね。


 ロアナさんも苦笑……じゃない。

 微笑ましそうに見ている、だと。


 とりあえず聞いてみる。


「えっと、良いんですか、あれ?」

「皆さん、初めて見る方は驚きますが、アドルはいつもこうですよ」


 ……なるほど。

 アドルさんが率先してやっている感じか。

 いつもこうって事は前々からで、きっとこれも、アドルさんなりの、ロアナさんのためなんだろう。


 ……よかった。

 未だにテンションが高いままなのかと思った。


 そうしている間に場が整ったので、アドルさんとロアナさんの対面に座る。


「……念を押しておきますけど、これからの内容は他言無用なのは当然ですが、当人が口にした事ではありません。セミナスさん調べですが、間違いではないと俺は信じています」

「ああ、わかっている。今更セミナスさんの事を疑う訳がない」

「私としては、そこも、その方の事も詳しく聞きたいです」

「もちろん、説明します」


 まずは、ここまでの事を簡潔に、ロアナさんに向けて説明する。

 アドルさんにも時々補足を手伝ってもらう。


 セミナスさんに関しては、俺だけで。しっかりと。

 信じて間違いない事も含めて。


⦅私の事を話す時は、もっと情熱的に、愛を込めて、お願いします⦆


 難しい注文が入ったけど、気にしない事にした。

 ロアナさんに伝わる事が第一である。


 あとは、大魔王と魔王の関係。

 地下に居る魔王マリエムについて、丁寧に伝える。


 ………………。

 ………………。


「……なるほど。そういう事か」

「魔王を倒せば倒すほど、大魔王は強さを増して……いえ、前の強さに戻っていく、という事ですか。確かに、あの時見た大魔王には底知れなさがありました」

「大魔王を倒すために今は魔王を倒してはいけないという事と、それで魔王の一人を捕らえたのはわかった。ただ、疑問がある」


 アドルさんが尋ねてくる。


「何故、魔王リガジーは逃走を選択した? あれの性格は、よほどの事がない限り、逃走は選択しないだろう。寧ろ、死ぬまで戦う方を選択するはずだ。たとえそれで死んだとしても、大魔王の力となるのだから」


 て、事らしいけど、そこんとこどうなの?


⦅それは、魔王たちの目的にあります⦆


 魔王たちの目的?


⦅はい。答えを言ってしまえば、魔王は大魔王を正常に戻したいのです⦆


 正常に?


⦅はい。今は力と感情を分散する事で抑えて込まれていますが、分散した力と感情が戻れば前の状態、暴走状態へと戻ります。直ぐではなくても、いずれは。なので、それを阻止したいのです⦆


 魔王たちがそれを阻止したいの?


⦅魔王たちに感情があるという事は、相手に対する情もあるという事。救いたいと思ってもおかしくありません。最も、魔王たちの場合は、それが大魔王にしか向いていませんが⦆


 なるほど。

 という事を、そのままアドルさんに伝える。


「……そういう事か。自分よりも大魔王を優先したという訳か」


 納得するように頷き、ロアナさんも理解したように頷いていた。

 そのあとは、雑談を交わす。


 アドルさんとロアナさんの二人は、両腕を失ったウルルさんの事が心配だそうだ。

 まぁ、そうなるよね。

 俺もそうだし。


 インジャオさんと共にこちらに向かっているそうだから、早く会いたい。


「ところで、ウルルの事で思い出したが、義手というのは本当に製作出来るのか?」

「セミナスさんが問題ないって。幸いというか、この世界には魔道具があるから、それでどうにか出来るみたい。いざとなれば神様たちにも協力させるって。ただ、今は時期が時期だから、用意出来るのは戦いが終わってからになるみたい」

「まぁ、時期に関しては仕方ない。今は出来るというだけで充分だ。もし必要な物があるのなら、その時言ってくれ。協力する」

「ありがとうございます」


 もちろん私も手伝います、とロアナさんも言ってくれた。


 と、その時、勢い良く扉が開かれる。

 ビクッとして視線を向けると、そこにはシャインさんが居た。


 えっと、セミナスさん?


⦅マスターへの用件ではないため、見逃しておきました。ついでに、マスターの驚く姿、可愛かったですよ⦆


 手のひらで弄ばれている気分。


 シャインさんはそのままこちらの方に来て、アドルさんとロアナさんに視線を向ける。


「……魔王とやった疲れが取れてない。さすがに、大魔王のところには連れて行けないぞ」

「それぐらいはわかっている。無理をするつもりもない」

「なら良いさ。まっ、体の調子を知りたければ、いつでも相手になってやるぞ」

「………………その時が来たらな」


 アドルさん。相当絞り出したな、今。

 本調子じゃない状態で、シャインさんの鍛錬はきついだろう。うんうん。


 その代わりという訳ではないが、ロアナさんがやる気のようだ。


「なら、私が付き合ってあげますよ。どれだけ強くなったのか、確認するという意味も込めて」

「確認しない方が良いんじゃないか? 力の差を痛感して、どれだけ氷漬けにされていたかがわかってしまうぞ」

「あら? 寧ろ望むところよ。氷漬けにされていたから、体が鈍って仕方なかったのよ」


 シャインさんとロアナさんが笑みを浮かべ合う。

 ………………。

 ………………。

 こそっと、アドルさんに確認。


「えっと、もしかしてですけど、そういう方ですか?」

「いや、普段は全くと言って良いほどお淑やかだが、偶に……な」


 ……まぁ、なんだ。

 これからの生活、頑張ってください……とアドルさんを励ましておいた。

 幸せなのは間違いない。

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