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この行く道は明るい道  作者: ナハァト
第十三章 大魔王軍戦
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待っている間も時間は流れている

 廃城と廃町で、EB同盟を待つ事になった。

 EB同盟への連絡には、廃町の魔物たちを掃討し終わった頃にミレナさんが現れたので、DDと共にお願いしておいた。


 なんでも、EB同盟の人が増えて、人の姿を取れる竜じゃないと接触が難しくなったらしい。

 で、その人の姿を取れる竜は少ないそうだ。

 なので、DDとミレナさんにお願いした。


 伝言を届ける相手は、東側がアドルさん、西側がインジャオさんとウルルさん。

 この数カ月共に居た事で、DDはアドルさんと、ミレナさんはウルルさんと仲良くなったので、特に断られる事なく了承される。


 だから、それは別に構わないんだけど、これって大魔王軍にも時間を与える事になるよね?

 そこら辺は大丈夫なの?

 なんか色々と準備をさせる事になるけど。


⦅問題ありません。そもそも、大魔王軍の準備といっても、各地に散らばっている魔物を集めるだけです。戦いも正面切ってのモノが大部分を占めます⦆


 罠とか、戦術とか、戦略とかは?


⦅いくらか賢くなっていようとも、そこまでの知性はありません……と言いたいですが、中にはそういう存在が居るのも事実。ですが、その筆頭のような存在は既に存在していません⦆


 筆頭?


⦅西部の方に居た魔王です。マスターも過去に接敵しています⦆


 あぁ、あの魔王か。

 確かに、そういう事が得意そうだ。


⦅ですが、そうさせる前に因縁をぶつけ、倒す事に成功しました。あれが居なくなれば、私にとって知略における脅威となる者は存在しません。知性を得ただけの魔物の知略など問題ありません。全て看破してみせましょう⦆


 おお、自信満々……というか、セミナスさんなら確かに問題ないだろう。

 でも、魔王の一人が倒れた事で大魔王が一段階強さを取り戻したって事だけど、そっちは大丈夫なの?


⦅完全に力を取り戻したならまだしも、一段階程度、脅威ではありません⦆


 わぁ、頼もしい。


     ―――


 EB同盟を待つといっても、そう直ぐに来るようなモノではない。

 何しろ、人が多くなれば歩みも遅くなる。

 みんながみんな、同じ速度は出せないのだから。

 大軍ともなると、それは更に顕著だろう。


 なので、連絡したからといって、ここにEB同盟が現れるまで、まだまだ日数がかかる。


⦅他にも、ここに来るまでにも大魔王軍の拠点はいくつかありますので、普通に進むよりも時間はかかります⦆


 という事らしいので、待つだけの俺たちはそれなりの時間が出来てしまった訳である。


 なので、主に何をしているのかというと……。


「くっ、もう来る! 警戒! 警戒!」

「休む暇がないな」

「来るぞ! 正面……いや、あれは分身で、左からだ!」


 激しい衝撃音と共に土煙が上がり、詩夕、常水、樹さんが空に舞い上がる。

 そこに現れるのは、刀璃を先頭にした女性陣。


「援護は任せて!」


 咲穂の矢が乱れ飛び――。


「次こそ当ててみせる!」

「……絶対倒す」


 矢の隙間を埋めるように、天乃と水連の二人による弾幕のような魔法が照射され――。


「………………」


 ただ相手を斬る事に集中した刀璃が突っ込んでいく。

 が、相手は笑みを浮かべるだけ。


「はははははっ!」


 いや、実際に笑った。

 嬉しそうに。楽しそうに。


「前よりもよくなっているな! だが、まだまだ未熟! 体の動かし方がなっていないというか、慣れていないな! 魔王と戦っていた時の方が、がむしゃらに集中していてキレがあったぞ!」

『だったらもう休ませて!』


 詩夕たち全員がそう突っ込んだ。

 そう思うのも無理もない。

 何しろ、時間が出来たとわかった途端、「じゃあ、どれだけ力を増したか確認出来るな」と、強制戦闘が始まったのだ。


 それから一日のほとんどは、ああして詩夕たちは強制戦闘という鍛錬を行っている。

 誰と? もちろん、楽しそうなシャインさんと。


「力が上がったのは良いが、それだけでは駄目だとわかっているだろ! 力は使いこなしてこそだ! 大魔王との戦いまで少し時間が延びただけで、やり合う事には変わりない! 今の内に使いこなせるようになっていないと、その時後悔する時間すら与えられないぞ!」


 シャインさんの叱咤激励? によって、詩夕たちは立ち上がってシャインさんと模擬戦を繰り返す。


 セミナスさんによると、シャインさんは詩夕たちの力が前のままだと大魔王戦に連れて行かないつもりだった。

 でも今は、詩夕たちに大魔王戦を想定した力の出し方を学ばせているように見える。


 という事は、認めた訳だ。

 大魔王戦に連れて行っても良いと。


 詩夕たちもそれがわかっているからこそ、シャインさんに何度ぶっ飛ばされても立ち上がるんだろう。

 うんうん。師弟関係がきちんと構築されているようだ。


⦅あっ、マスター⦆


 え? 何? と思った時、近くで硬いモノを殴ったような衝撃音が響いたので視線を向ける。

 空中に浮かぶ丸盾型のASを殴った姿勢のシャインさんと目が合った。


「仲間外れは良くないよな?」

「いえ、お気になさらず」


 俺も強制参加……というか、なんかシャインさんの狙いが俺に集中している気がする。


「ちょっ! なんで俺ばっかり!」

「その空中に浮かぶいくつもの盾が悪い! 突破してみたくなる!」

「いや、これはセミナスさんが行っている自動防御盾みたいなモノで」

「ますます突破したくなった!」


 何故かシャインさんのやる気に燃料が注がれた。

 意味がわからない。


⦅良いでしょう。どちらが上か、証明してあげます。私の前に跪きなさい⦆


 こっちはこっちでやる気になっているし。

 詩夕たちに助けを求め……思いっきり休憩している!

 あとは任せた、と言わんばかりだ。


 なるほど。

 俺がやっている間は、詩夕たちも休憩を取れるという訳か。


 ………………。

 ………………。


 少しずつ、詩夕たちの方に寄っていく。


「くっ、もう少しだけ休ませて欲しいから、向こうの方でお願いします!」


 気付いた詩夕たちが俺から距離を取る。

 逃がさないぞ!

 逃げる詩夕たちを追う俺。

 そんな俺に向けられるシャインさんの攻撃を完璧に防ぐセミナスさんという構図が出来上がった。


 途中からエイトたちも交ざり、更に混沌としたのは言うまでもない。

 こんな事なら、隅っこの方でのんびりしているジースくんたちも巻き込めばよかったと思う。


 ちなみにドラーグさんはまだ観光が済んでいないとどこかに飛んで行き、予言の女神様は一度神様たちの方に戻ると、どこかに行ってしまった。

 ドラーグさんは召喚すれば良いだけなので問題ない。

 予言の女神様は、EB同盟が合流した時にまた来るとは言っていたけど。


 そうして大魔王戦に向けた鍛錬を行っている内に、その日が来る。

 遠くの方に人々の姿――EB同盟が来るのが見えた。

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