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この行く道は明るい道  作者: ナハァト
第十三章 大魔王軍戦
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別章 連絡 2

 インジャオとウルルのところに、明道からの連絡を届けにミレナが現れたように、上大陸東部を進攻するEB同盟側にも、同じように明道からの連絡を届ける者が現れる。


 上大陸東部側を進攻するEB同盟にもまた、西部側と同じように手厚い支援が送られており、快進撃を続けていた。


 制圧した拠点を利用するのも変わらない。

 その内の一つ。

 比較的建物が残っていた廃れた町で、最前線を進むEB同盟が休息を取っていた。


 既に斥候を放ち、大魔王軍の拠点捜索の報告待ちである。

 そんな廃れた町の中を進むのは、人の姿を取ったDD。


 ミレナやDDが連絡を持って現れたのは、単純に人の姿を取れるからである。

 進攻するEB同盟の人数が増えた事で、人の目が増え過ぎたのだ。

 もちろん、それが悪い事では一切ない。


 大魔王軍の影響下にあると言っても良い上大陸の中を進んでいくのだ。

 周囲を警戒する目と数はいくつあっても困るものではない。


 ただ、協力を秘匿している竜の姿を見られる訳にはいかないため、人の姿をとれるミレナやDDが連絡を行う事になったのだ。

 といっても、ミレナの方は元々仲良くなったウルルの方には、自ら度々向かっていた。


 DDの方は今回が初だが、特に気負っている様子は見えない。

 というより、どこか休憩を取っているように感じられる。


 だからだろうか。

 町の中を進むDDはどこか気楽な様子だ。


 時折、息抜きだろうか。

 決戦中である事を忘れたかのように、踊っている兵たちが居る。

 心に潤いを求めて、かもしれない。


 その光景を見て、DDはうんうんと頷く。

 着々とダンスが浸透していっている事に満足していた。

 出来れば参加したいところだが、今は連絡を届けるのが先だと断念。


 アドルの気配を頼りに、DDは歩を進めていった。

 進んだ先にあったのは、廃れた町の外側にある一軒家。

 特にこれといった豪華さなどはないが、ここが廃れた町だという事を考えれば、雨風をしのげるだけで充分な家屋であるとも言える。


 DDが扉をノックして一声かけた。


「アドル、居るか?」


 気配で居る事を察してはいるが、DDは配慮したのだ。

 一軒家の中から感じる気配はアドルだけではない。

 もう一人、共に居る者の気配を感じ取っていたのである。


 この数カ月、明道たちと共に居た事で、それなりの礼儀を身に付けていた。

 特に何かが起こるまでもなく、DDがノックした扉は開けられる。

 顔を覗かせたのは、アドル。


「はいはい。どちら……DDではないか。鍛錬中にも見たが、その姿はまだ見慣れないな」


 アドルもまた、この数カ月の付き合いで、DDとの仲は良くなっている。

 鍛錬という名の地獄を共に生き抜いた同士として……。


「見慣れない姿を見たのはこちらの方だ。なんというか、アドルは元王族だろ? それなのに自ら扉を開けるとは……まぁ、違和感はそれほどないがな」

「もう国はないからな。元国民の皆も今の生活があるだろうし、再興しようとも思わん。もちろん、頼られれば力にはなるが……少なくとも、今の私にはロアナが居れば充分だ」


 そう言って、アドルはDDを家の中に招き入れる。

 リビングに入れば、DDが感じ取っていたもう一つの気配――水色の長髪に、優しそうな顔立ちの女性、ロアナが笑みを浮かべてDDを見ていた。


「初めまして。ロザミリアナと申します。どちら様でしょうか?」

「先ほども話していただろう。こちらがDDだ。といっても、今は人の姿をとっているがな」

「ああ、ダンスが達者なドラゴン様ですね」


 合点がいった、と手を打つロアナ。

 ただ、ロアナの発言は正解である。


 ダンスが達者と言われて、DDはご機嫌となった。

 普段は決して見せない、輝く笑みを浮かべる。


「それで、DD。ここにはどのような用件で? アキミチたちの方に付いているのでは?」

「あぁ、それなんだが、色々と明らかになって事情が変わってな。一度合流して欲しいそうだ」

「合流? 私とロアナで?」

「いや、この集合体……なんといったか、とにかく全体で、だ。反対側の方にはミレナが連絡に向かっている」


 DDの言葉を聞き、アドルは即座に結論を出す。


「つまり、EB同盟全体を集合させる事態が起こった、と?」

「そう、それ! その同盟だ! 場所は、中央部にある廃城。作戦前に説明した、魔王の一人が居る場所だ」

「という事は、EB同盟全体で当たらなければ、そこの魔王を倒せ」

「いや、そういう訳ではない。寧ろ、そこは既に踏破している」


 どういう事だ? とアドルとロアナは顔を見合わせる。


「踏破という事は、既に倒したのでは? なのに、集合とは一体何が?」

「いや、魔王は倒しておらん。といっても、自由という訳ではなく、無力化しているだけだが」


 DDの返答でますます混乱するアドルとロアナ。

 倒していないのに集合とは、どういう意味かわからなかったのだ。


「どういう事か説明を受けても?」

「いや、これに関してはアキミチの口から説明を受けた方が良い。他者が介入して、変に伝わって良いような内容ではないからな」

「………………」


 よほどの事がわかったのだろうか? と推測するアドル。

 それと、恐らくというか、アドルの中では確定しているのだが、EB同盟を集める事を提案したのはセミナスだという事も理解していた。


 なら、そうした方が良いだろうと判断を下す。


「なるほど。セミナスさん関連なら、その方が良いかもしれない。魔王を捕らえているなど、よほどの事情があるのは確定。……わかった。こちら側の代表者たちに話を通して、廃城に向かってもらう。西側のEB同盟の方も、インジャオとウルルが上手く説得しているはずだ」

「まぁ、つまり、ウルルとインジャオに会えるのね。それはとても嬉しい事だわ」


 ロアナが嬉しそうに笑みを浮かべる。

 その様子を見て、DDはアドルにこそっと尋ねた。


「……現状を教えているのか? インジャオが全身骨スケルトンで、ウルルが両腕を失っている事を」

「既に伝えている。といっても、まだここまでの全てではないが」

「そうか……まぁ、久しく会えなかったのだ。ここから廃城まではまだ時間があるし、ゆっくりと共に過ごすのだな。誰も文句は言わんだろう」

「感謝する」


 友として、DDなりに気遣いを見せ、アドルも嬉しそうに笑みを浮かべる。


「連絡は伝えた。私はもう行く。ではな! また、廃城で会おう」


 これ以上はここに居ても邪魔になると判断したのか、DDはそそくさと出て行く。

 その姿を見送ったあと、アドルはロアナを連れてEB同盟代表者たちのところへ向かう。


 そして、それなりの時間を経て、東西に分かれて進攻していたEB同盟が、上大陸中央部にある廃城と廃町に集合する。

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