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この行く道は明るい道  作者: ナハァト
第十三章 大魔王軍戦
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未熟でも効果が未熟とは限らない

 えっと、これは状況的に間に合った?


⦅はい。ギリギリですが、間に合っています。それと――⦆


「全員そのまま、その場を動くな!」


 セミナスさんの指示通り、高らかに宣言する。

 いきなりの宣言に、これで更に場を落ち着かせない。

 困惑するだろう、との事。


 言いたい事はなんとなくわかる。

 要は場が落ち着いてしまうと、誰かが動いてしまい、それで事態が動いてしまう。


 混乱している間に次の行動を取るのは難しいから、セミナスさんはその間に行動を起こしておきたいようだ。

 ……多分。


 というか、俺も事態を飲み込めていない側なんですけど。


⦅説明はもう少しやるべき事をやったあとです。マスターはそのまま汎用型を連れて、マスターの友たちに押さえつけられている女性のところへ向かってください⦆


 はい。

 ただ、必要な措置だという事はわかっている。

 セミナスさんとは、それぐらいは簡単に通じ合う信頼関係が構築されているからだ。


⦅信頼関係ではありません。熱愛関係です⦆


 セミナスさんの指示通り、エイトに声をかけ、共に詩夕たちが押さえ付けている女性のところへ。


⦅そこは結婚を前提とした関係だと切り返して――⦆


 近付くと、どこかで見た覚えがある女性だと気付く。

 というか、さっきまで地下で戦っていた女性にそっくりだ。


⦅……それはそうです。地下の生命体ホムンクルスを自らに模して製作した者であり、お姉さまと呼ばれていた者。魔王マリエムです⦆


 まっ! いや、ちょ! え?

 ……こんな近付いて平気なの?


⦅マスターの友たちに押さえ付けられていますので。その力が緩まなければ問題ありません。それに、マスターの回避、防御の方が上なので、咄嗟に動かれても対応出来ます⦆


 そうなんだ。


⦅それに、これからその身は無理ですが、力を封じますので⦆


 封じ……え?


⦅そこの汎用型に指示をお願いします⦆


 あっ、はい。

 まずは行動が先だと、セミナスさんの指示をエイトの耳元でポソポソと伝える。

 魔王には聞こえない方が良いかな? と。


「あっ……ご主人様。エイトの弱点を的確に狙ってくるという事は、今夜のお誘いですか? いえ、お誘いですね。そう受け取ります。それ以外に受け取れません」


 エイトは、どんな時もぶれない。


「いや、違うから」


 なので、即否定する。

 ……慣れたな。


⦅真面目にお願いします。ちなみにですが、私の場合はそのまま耳を舐めて⦆


 いや、指示を早くお願いします。

 何故俺が怒られ……というか、天乃と水連の目付きが鋭くなったように見えるんだけど、どういう事?


⦅指示をお伝えしますので、早く汎用型に伝えてください。相手が魔王である以上、我に返って押さえ付けを跳ね除ける可能性がありますので⦆


 ……はい。

 という訳でエイトに指示通り動いてもらう。


 エイトは青い髪の女性の頭部を挟み込むように両手で触れる。


「何をするつもりかしら? というより、あなたたちは何者?」


 青い髪の女性が冷静にそう尋ねてくるが、もう指示は伝え終わっている。


「『その存在を遮断し 周囲から閉ざし 力を七種の魔力をもって封じる 開発中特殊封印・魔絶封印(仮)』」


 最後の方はふざけているのかな? と思ったが、一瞬、エイトの両手が光ったかと思うと、青い髪の女性の首元と両手足に光り輝く小さな魔法陣が出現。


 光と魔法陣は直ぐに消えたが、あとに残されたのは、青い髪の女性の首元に淡く発光する文字だけで構成された首輪、両手足にも同じように淡く発光する文字だけの輪が、拘束具のように浮かび上がっていた。


 えっと、これは?


⦅魔王の力を封印しました。といっても、一時的にですが⦆


 ………………封印? 力を?


⦅はい⦆


 ………………出来たの?


⦅出来るようになりました。正確には、過去の勇者たちが行った『特殊封印・神魔封印』を元に大魔王が編み出した神を封印した結界を元に、私が更に改良を加えて編み出した……更に正確性を求めるなら、『未来予測』を何度も繰り返す事でその方法を突きとめたと言うべきでしょうか。『賢者』と同じように全属性持ちの魔力が必要であったため、汎用型に協力をお願いしたのです⦆


 うん。なんというか……正確な部分はよくわからないけど、確かなのはセミナスさんがすごいという事だ。


⦅感謝の言葉として受けとめます。ありがとうございます。ですが、まだ未完成でもあるため、現状ですとこれが精一杯。完全に封印するには至っていません。先ほども言いましたが、一時的であり、いずれ解けます。今は言ってしまえば、傷口に応急処置だけを施しただけ。本格的な治療ではないという事です⦆


 なるほど……なるほど?

 というか、なんで封印?

 この青い髪の女性が魔王なんだよね?


 なら、倒さないといけないんじゃ……。


⦅……その事なのですが、今倒してはいけない理由が判明しました⦆


「えっと、明道?」


 聞く前に詩夕が不思議そうに尋ねてくる。

 というか、詩夕が馬乗りみたいな形で剣を振り下ろしている絵面って……物騒だな。

 非現実感で一杯だ。


「あっ、ごめんごめん。もう離れても大丈夫だよ。力は封印したから、なんか今倒さない方が良いて」

『………………』


 詩夕たちが揃って首を傾げた。

 エイトは自分が封印を施したと理解したのか、自慢げに胸を逸らしている。


「何を馬鹿な事を」


 青い髪の女性――魔王が詩夕たちをどけようと身動きを取るが、まったく払い除ける事が出来ない。

 詩夕たちの誰もが特に力を込めている風では既にないのに。


 魔王もそれに直ぐ気付く。


「………………」


 封印、という俺の発言が脳裏を過ぎっているのだろう。

 驚愕……という表情が浮かんでいた。


 詩夕たちの方も、抵抗がまったくなくなったと困惑している。


⦅魔法は封印されて使用不可。ステータスは全般が一般的レベル程度まで下がっていますので、もう脅威ではありません⦆


 という事を伝えると、詩夕たちは魔王を解放して立ち上がる。

 それでも警戒はしているようだけど。


「それで、もちろん説明してくれるんだよね? 倒してはいけない理由も」

「うん。俺も今から聞く」


 という訳で、教えてください、セミナスさん。

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