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この行く道は明るい道  作者: ナハァト
第十三章 大魔王軍戦
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決める時は一瞬で

 青い髪の女性の倒し方がわかった。

 胸部に二つある「仮初の生命石」を破壊すれば、倒せる。

 なんというか、二つあるっていうところに、製作者である魔王の思いみたいなモノを感じた。


 普通、そういうのは一つ潰せば終わりと思ってしまうだろう。

 で、どうにか潰したとして、そこで終わったと油断したところで、まだ相手は動いていて、逆にやられてしまう、と。


 ある種の必殺のカウンターのようなモノだな。


 それに、簡単にやられないようにするって事は、大事に思っているって事だと思う。

 何しろ、「仮初の生命石」は貴重らしいから、普通にここの守護として使用するなら、一個だけじゃないだろうか?


 いくら、神様を解放するのが脅威になるとはいえ、神様はたくさん居る。

 どれか一柱でも解放すれば、一気に形勢が逆転する……なんて事はありえない。

 たとえそれが、予言の女神様であってもだ。


 何しろ、セミナスさんでも読めないように、大魔王、魔王には対抗出来るだけの力があるのだから。

 だから、正直なところ、結界内、黒い神殿内で神様を解放させないために居る存在は、大魔王、魔王たちからすれば、やられても構わないような存在だと思っていた。


 でも、目の前の青い髪の女性は違うような気がする。

 大事にされているような……。


 そう思う根拠が、一個だけでいい「仮初の生命石」を二個使用している事。

 というのは根拠として弱いかもしれないけど、俺はそう思った。


 だからといって、手は緩めない。

 倒す事に変わりはないのだ。

 結局のところ、今はやるかやられるかしかないのだから。


 それに、俺ももう余裕なんてない。

 一撃でもまともに食らってしまえばやられてしまうだけの力を、青い髪の女性はもっている。

 そんな相手とやり合い続けるのは、体力だけではなく、思いのほか精神を消耗してしまった。


 決めるなら、ここから短期決戦になるけど、いけるの? セミナスさん。


⦅問題ありません。幸いと言うべきか、そこの存在は確かに強敵レベルですが、魔王レベルではありません。先を読み切る事が出来る以上、脅威ではありません⦆


 わぁ、頼もしい。

 なら、任せたよ、セミナスさん。

 指示よろしく。


⦅かしこまりました。正直なところ、現状で取れる最良の手段ではありますが、危険と隣り合わせの行動であるため、一歩間違えば逆にやられるのはこちらです。更なる集中をお願いします⦆


 わかった。

 セミナスさんの指示を聞きながら、青い髪の女性を倒すための行動に移る。


 青い髪の女性に向けて、一気に前へ。

 ここからは出し惜しみなしの、残り体力をすべて出し切っての行動だ。

 青い髪の女性と近距離でやり合う。


 といっても、これまでと同じく、俺は回避と防御に専念。

 攻撃を行うのは青い髪の女性のみ。

 というか、攻撃を行い続けるのも体力を消費するはずなのに、青い髪の女性に疲れは見えない。


 やっぱり、体力は無尽蔵なのだろうか?

 身体のどこかが壊れるまで動き続けるのかもしれない。


 ただ、近距離でやり続けた事で、わかった事がある。

 なんというか、青い髪の女性は攻撃下手……いや、なんかちょっと違う。

 ……そう、戦闘経験が乏しいというか、まったくない感じ。


 普通なら追い打ちしてきそうなところでせず、こちらが反撃のための隙を見せれば引っかかって、本当の隙を見逃しまくっている。

 スペックは総じて高いけど、これまで戦闘らしい戦闘をしてこなかったんじゃないだろうか。


 一応、身体の動かし方や戦闘方法は学んでいるが、それだけって感じ。


 それでも充分といえば充分なんだけど。

 それくらいスペックは高く、それこそ、アドルさんたちやシャインさんレベルじゃないと、あっさりやられてもおかしくないくらいに。


 でもまあ、よくよく考えてみると、ここは上大陸中央部の廃城の地下。

 大魔王軍が占領してから今まで、攻めてくる者は居なかっただろうし、そもそも結界内には入れない。


 これまでお姉さまと呼んでいる魔王以外は、青い髪の女性の世界には存在していなかったのだ。

 戦闘技法は必要ないと、あまり学ばせなかった可能性がある。

 何しろ、ここは本来安全なはずなのだから。


⦅その可能性はあります⦆


 だから、青い髪の女性は負けるのだ。


 俺の回避と防御に、セミナスさんの意思が加わる。

 それは相手にとって、敗北への誘導なのだ。


 青い髪の女性と何度かやり合い、壁まで蹴り飛ばされる。

 もちろん威力は軽減させたが、背中を強打した。

 大したダメージは受けていないが、ここで動きをとめる。


 これまでは近距離戦を挑むために直ぐさま飛び出していたが、ここで俺は前に出ない。

 ダメージの蓄積による限界を迎えたように、片膝を一度付いてみせ、かろうじて起き上がる……ように見せて立つ。


「もう限界なのね。それなりに学ぶ事はあったけれど、戦闘はもうおしまいね」


 青い髪の女性に、見た通りの状況をそのまま受け入れた。

 本当に、こんな安っぽい演技でも騙されてくれる。

 警戒の欠片もない。


⦅そこはマスターの演技力を褒めましょう⦆


 自分の事は自分が一番わかっているよ。


⦅ですが、自分自身を最も過小評価しているのは自分自身という考えもあります⦆


 そうかな?


 考えている内に、青い髪の女性が俺にとどめを刺そうと襲いかかってくる。

 無警戒で。

 そこは普通、警戒するところだから。


 カウンターを食らわせるように、青い髪の女性が俺に迫るタイミングを見計らう。


 青い髪の女性が俺を殺そうと拳を放つ。

 これまでの最高速で。

 しっかりと目を見開き、寸前で避ける。


 頬と肩の上部がかすって鮮血するが今は気にしない。

 避ける事が出来た以上、次は俺の番だ。


 右手で青い髪の女性を掴み、引き寄せながら右腕のASが起動。

 引き寄せる動きに合わせて、左腕を青い髪の女性の胸部に照準を合わせた。


「AS!」


 左腕にあるASの形を変える。

 丸盾から先端の尖った長い盾に。

 尖った先端とは逆の平たい部分は壁に押し付け、しっかりと突き刺さるようにする。


 タイミングは完璧。

 青い髪の女性は引き寄せられるまま前に出て、胸部に尖った先端が突き刺さる。

 何かが砕ける感触が左腕に響く。


 けれど、青い髪の女性はとまらない。

 アッパーカットを放ってきた。


「知っているよ、もう一つあるんだろ?」


 動くと知っているからこそ、冷静に対処出来た。

 青い髪の女性のアッパーカットを避ける。

 俺の行動はそこで終わり。


 青い髪の女性が居る場所は、たとえ能力が落ちていようとも、セミナスさんが操るASの範囲内。

 青い髪の女性を引き寄せた際に起動した右腕のASは、先端の尖った小さな盾二つへと形を変化していた。


 空中でくるっと回ったかと思うと、青い髪の女性の無事な方の胸部を前後から突き刺す。

 何かが砕ける音が響いた。

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