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この行く道は明るい道  作者: ナハァト
第十三章 大魔王軍戦
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自分に似ているかもって思う時がある

 えっと……つまり、目の前の青い髪の女性は、魔王が自らを模して造り出した存在って事?


⦅はい。そう言っています。まぁ、可能性としてはあり得ますし、虚偽を告げているようには見えません。つまり、事実でしょう⦆


 そうなるよね。

 ちょっと信じられないというか、信じたくないというか。


⦅ですが、これで方針は決まりました。直ちに逃走する事を推奨します。身体の構成ベース神造超生命体ハイブリッド・ホムンクルスではなさそうですが、たとえ通常の生命体ホムンクルスであろうとも、魔王が自らを模して造り出したとなると危険です。さすがに当魔王ほどではないでしょうが、その能力は未知数であると判断します。特に、現状では満足に調べる事も出来ませんので⦆


 セミナスさんが早口でそう警告してくる。

 そうだよね。それが一番良いと俺も思う。

 単独で対応して良いような存在じゃない。


⦅その通りです。この場から一時離脱し、汎用型、特化型を引き連れ、総動員で戦うのが一番確実であると判断します⦆


 うん。そうしよう。

 行動は素早く。

 即座に踵を返し、扉に向かって駆ける。


「どちらへ?」


 後方から青い髪の女性の不思議そうな声が聞こえたが、振り返らない。

 ここから離れる事を最優先に動く。


「……なるほど。逃走を選択したのですね。ですが、残念ながらそれは不可能ですよ」


 何かが俺の横を通り過ぎていく。

 そう思った瞬間、前方に激しい破壊音と砂埃が舞う。


「侵入者は絶対逃がすなとお姉さまに言われていますから」


 砂埃が落ち着き、晴れた視界で確認すると、扉とその周辺が破壊されて通れなくなっていた。

 えっと……魔法を使ったようには見えないし、服も汚れていないし、それっぽいのは拳を握っているという事だけ。


 ……もしかして、パワーキャラなのかな?


⦅現実だけを見て判断するのなら、はい⦆


 だよね。

 でないと、あんな風に壁が壊れたりしないだろうし。


「……逃がしてくれないんだ」

「はい。先ほども言いましたが、お姉さまからきつく言われていますので」

「でも、それだとあなたも外に出れないと思うんだけど?」

「必要ありませんよ。私が外に出る事はありませんから」


 それはそれでちょっと寂しいというか……。


⦅マスター、気にしてはいけません。目の前の存在はそういう存在でしかなく、明確な敵です⦆


 そうだよね。

 それに、もう逃走は出来なくなってしまった。


「というか、それだと外から入ってくる事も出来なくなると思うけど?」

「無用の心配ですよ。この程度の瓦礫は、お姉さまの歩みの邪魔にもなりません」


 これだから超常の存在ってのは。

 俺だと撤去して通るようにするだけでも一苦労だと思うのに。

 いや、予言の女神様を解放すれば………………いや、結果は変わらない気がする。


 どう考えてお、予言の女神様にそれだけの物理的な力があるとは思えないし。


⦅正解です。それと、瓦礫を心配する必要はありません。目の前の存在を倒したあとで、私がASを使用してどうにでもしますので⦆


 お願いします。

 まぁ、その目の前の存在を倒すってのが、一番苦労しそうだけど。


「……あなたは不思議ですね」

「何が?」

「普通なら何かしらの行動を起こす時だと思うのに、何も起こさない。ただ、自問自答しているように黙っているだけ……それを不思議に思う。それとも、自問自答ではなく、誰かと話しているのかしら?」


 小首を傾げる青い髪の女性。

 本当に鋭い。

 どうしてこうも的確に……。


⦅様々な理由が考えられますが、そこは既に問題ではありません。現状は、目の前の存在を倒さなければ、脱出すら出来ないという事です。ならば⦆


 倒すしかない、て事ね。

 これまでと同じで、攻撃に関しては任せる。

 俺は回避と防御に専念するから。


⦅お任せください。マスターと私が組めば敵は存在しません⦆


 といっても、俺から仕掛けたりはしない。

 ASで丸盾を形成し、どのようにでも体を動かせるように、程良く力を抜いてリラックスしていく。


 迎撃態勢を取ると、青い髪の女性の方もそれを敏感に感じ取ったのか、構えのような姿勢をとる。


「やる気になっていただけたようで嬉しいですわ。お姉さまが来る時以外、本当にやる事もなくて……それに、これがお姉さまからお願いされた私の役目なのだから、漸く果たす事が出来て嬉しいわ」


 笑みを浮かべたつもりなのだろう。

 青い髪の女性の口角が上がる。

 でも、その笑みはどこか歪というか……そう、感情のようなモノは感じられない。


 ただ、この時はこういう風な表情を浮かべる、というのを実践しただけのような感じ。

 意思はあるかもしれないけど、どうしても人形っぽさが消えない。


 でも、攻撃は本気で避けないと危険だ。

 それに、感情のようなモノがないって事は、殺気とかそういうのも見えないという事。


 青い髪の女性が動いたかと思うと、一瞬で間合いを詰めてきて、読みづらい拳が放たれる。


「くっ」


 狙いは俺の腹部。

 既に一瞬反応が遅れた俺に、回避の選択は取れない。

 ASの丸盾を腹部の前に持ってきて、青い髪の女性の拳を受けとめる。


 瞬間、自らも後方に跳んで拳の威力を分散して殺す……つもりだったが、勢いが強過ぎた。

 そのまま押し切られて、殴り飛ばされる。

 壁に背中を強打するが、耐えられない痛みじゃない。


 ……まともに受けていたら、もっと大きなダメージだっただろう。

 それこそ、最初の手刀を受けて飛ばされていたら……。


 セミナスさんが避けろと言った意味が今ならわかる。

 青い髪の女性の物理的攻撃をまともに受け続けるのは危険だ。

 今のですら、受けた腕がちょっと痺れているのだから。


 少し休ませて欲しいが、青い髪の女性の物理的攻撃は放たれ続ける。

 もう受けない方が良いと判断して、俺は回避に重点を置く。


 それでも、とりあえず言っておきたい。


「力、強過ぎない?」

「自慢の力ですわ。その代わり、魔法が使えないようになっているとお姉さまが言ってしましたけど」


 正直に教えてくれてありがとうと言うべきかな?

 同時に、どこかで青い髪の女性に親近感を抱く。


 魔法が使えず、別の何かに特化しているというのは……俺と似ている。


 俺は多分、回避と防御に。

 目の前の青い髪の女性は、力に。


 だからといって、敵である事に変わりはない。

 倒すか、倒されるか、だ。

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