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この行く道は明るい道  作者: ナハァト
第十三章 大魔王軍戦
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まずは相手を知るところから始める

 進んだ先に居たのは、青い髪の女性。

 造り物のように非常に整った顔立ちの美人で、体付きどこか扇情的で、その体付きを強調するような純白のドレスを身に纏っている。


 普通に町中で見かければ、誰しもが振り返るんじゃないだろうか? と思えるようなレベルだ。

 でも、別の要因でも振り返るかもしれない。


 何しろ、頭部から捻じれて歪な角が生えている。

 普通の人ではないと象徴しているようなモノだ。


 でも、俺は別の部分も気になる。

 首からネックレスのように提げているモノ――光り輝く球体。


 これまでの事を考えると……球体に神様が封印されているのは間違いない。

 となると、青い髪の女性は……神様ではない?

 つまり、予言の女神様ではない?


⦅違います⦆


 それじゃあ、ここに予言の女神様とは別の神様が一緒に封印されていた?


⦅それも違います。あえて助言するのであれば、そこの女性からは禍々しいモノが感じられます⦆


 ……つまり、敵?


⦅未だ動きを見せませんので確証は得られていませんが、その可能性が非常に高いです。私見を述べれば、間違いなく敵です⦆


 それはもう確定じゃない?

 となると、戦いになる?


⦅恐らくは⦆


 ……よりにもよって、最後に戦闘系か。

 となると、エイトたちの誰かを連れて戻ってきた方が良い?


⦅それも取れる手段の一つですが、相手の力を見定めてからの方が良いかもしれません。汎用型だと力が足らず、特化型だと連れてきた者の属性によっては不利になる可能性があります⦆


 まずは相手の力の確認ね。

 確かに重要だ。

 ASもあるし、そう簡単にやられはしないだろうから、見定めるには充分だろう。


 ゆっくりと呼吸をして、気持ちを落ち着ける。

 ……よし。いくぞ。


 扉は開けっ放しにして中に。

 青い髪の女性にある程度近付くと、向こうが反応する。


 電源が入ったかのように顔を上げ、俺に視線を向けてきた。


「……あら? こんなところにまで来るなんて……大魔王軍は追い込まれているのかしら?」


 いきなり話し始めたが、そこに感情は見えない。

 ただ淡々と言っているだけの印象。


「あなたは、これを取りに来たという事で良いのかしら?」


 青い髪の女性は、ネックレスのように提げている光る球体を手に取って俺に示してくる。

 俺は頷きを返した。


「まあ、そうよね。ここにはこれしか目ぼしいモノはないもの。でも、残念ね。せっかくお姉さま以外の話し相手が来たと思ったら、殺害しなければいけない相手だなんて」


 ……お姉さま?

 誰の事? と問う前に、青い髪の女性は動く。

 俺に向かって飛び出し、手刀を放つ構えを取る。


 ASで防ぐか、と長盾を展開。


⦅駄目です! 後方に跳んでください!⦆


 セミナスさんの指示に反応して、手刀は受けずに後方に跳ぶ。

 青い髪の女性の手刀は空振った。


 どういう事? セミナスさん。


⦅どうやら見た目にそぐわぬ膂力の持ち主のようです。ASの盾を砕くほどではありませんでしたが、盾ごと壁まで吹き飛ばされて、体を強く打ち付ける未来が見えました⦆


 何それ、怖い。

 青い髪の女性はジッと俺を見ていた。

 その視線には、どこかこちらを観察するような雰囲気と共に、何か怖さを感じる。

 なんと言えば良いのか……こう……生気のようなモノを一切感じない。


「……直前まで受けるつもりだったのに、どうして急に避けたのかしら? ……不思議ね。まるで、自分の意思に反して、適切な指示を告げられたような動きに見えたわ」


 しかも、なんか的確に読み取ってきた。


⦅中々油断ならない者のようですね⦆


 みたいだね。

 心身が一気に緊張感に包まれる。


 力が強いという事は、パワータイプというか。

 となると、エイトたちだと誰でも厳しいかもしれない。

 なんだかんだと、エイトたちは魔法使いタイプだし。


「………………」


 そうして思考している間、青い髪の女性はジッと俺を見ているだけ。

 ……なんか不気味だ。


「……どうして?」

「え?」

「どうして攻撃してこないのかしら? 相手が攻撃したあとは、絶好の攻撃機会ではないの?」

「は?」


 いや、何を言っているのか、ちょっと意味がわからない。

 言いたい事はなんとなくわかるけど、それを言う意味がわからないというべきか。


「……ああ、そういえば、読み合いも大事と言われていたわね。いけないいけない」


 青い髪の女性が、思い出したようにそう言う。

 なんというか、まるで……。


⦅これが初戦闘のような雰囲気がありますね⦆


 そう、それ。


「となると、先ほどのあなたの行動を推測すると……もしかして、攻撃が苦手? とかかしら?」


 しかも、やたらと鋭い。

 ピンポイント過ぎる。

 なんかセミナスさんみたい。


⦅失礼ですよ、マスター。私はもっと的確で、発言には確信を持っています⦆


 ですよね。


「わからなければ、確かめれば良いわね」


 青い髪の女性が再度襲いかかってくる。

 肯定の返事はしなかったけど、俺が攻撃下手なのは事実。

 また、結界内でセミナスさんの力は著しく低下しているため、セミナスさんによるASの遠隔操作攻撃も上手く決まるかどうか。


⦅そうですね。反応速度も低下していますので、殴り落とされる可能性もあります⦆


 そういう事なら狙って……それこそ、これで決めるとか、切り札的な使い方にした方が良いかもしれない。

 とりあえず方針を決めて、青い髪の女性からの攻撃を回避、防御をしつつ、光り輝く球体をどうにか奪えないかと狙う。


 ただ、気を付けないといけないのは、青い髪の女性の力。

 下手に受ければ、そのまま飛ばされてしまうし、打ち付けられると大きなダメージになるかもしれない。


 まともに食らうのだけは避けないといけない。


 そうして、青い髪の女性の攻撃を避けていると気付く。

 なんというか、青い髪の女性からは殺気のようなモノも感じられない。

 ただ命じられるままに実行する人形のように見えた。


「……というか、キミは一体」


 思わず、そう問いかけてしまう。

 別に何か狙っていた訳じゃないし、答えも求めていない。


 けれど、青い髪の女性は動きをとめて、口を開く。


「そういえば、こういう時は名乗るのでしたかしら?」


 青い髪の女性が俺に向けてカーテシーのような動作を取る。


「初めまして。私はここに来た者を殺せと命じられている、魔王であるお姉さまが自らを模して造り出した生命体ホムンクルス。名はございませんが、これから死に行くあなたには必要ありませんので、不都合もありませんね」


 淡々とそう言ってきた。

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