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この行く道は明るい道  作者: ナハァト
第十三章 大魔王軍戦
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別章 インジャオ&ウルル対魔王ヘルアト 3

 インジャオとウルルが最大の好機チャンスを利用して武技を発動。

 ウルルの砲撃で魔王ヘルアトを焼き、インジャオの大剣がまともに入る。


 インジャオの斬撃は、魔王ヘルアトを確実に捉えていた。

 魔王ヘルアトは斬られ、その場に崩れ落ちる。


 インジャオは一旦後方のウルルのところまで下がり、油断なく大剣を構えた。

 それはウルルも同様で、格闘戦の構えを取る。


 そのままジッと待つ。

 自分たちから仕掛けたりはしない。


 確かに、インジャオは手応えを感じていた。

 大剣から伝わる感触で、魔王ヘルアトを斬ったのは間違いない。


 だが、直感とでも言うべきか、インジャオはまだ終わっていないと感じたのだ。

 だからこそ下がり、その行動でウルルもインジャオの考えを読み取ったのである。


 事実、インジャオとウルルはセミナスから助言を得ていた。


「未だ大魔王だけでなく魔王の方も私に対抗出来ています。ですので、完全な予測は不可能ですが、そこを補うのは実際に対峙するあなたたちです。戦闘中は、より感覚が鋭敏になるものですので、直感を信じなさい。逸る気持ちを抑える事で、勝利を掴めるでしょう」


 と。


 その直感が働いての行動が、離れて待機である。

 事実、それは正しかった。


「あれ~、おかしいな? こういう場合、ここが決め時だと襲ってくるモノじゃないの? そう思っていたから、わざわざこうして大きな隙を作って、そこを突いて倍で返してあげようと思ったのに」


 魔王ヘルアトが身を起こす。

 左肩部分から胸部にかけてざっくりと斬られていたが、魔王ヘルアトに気にした様子は見られない。

 寧ろ、笑みを浮かべている。


 何より異常なのは、地面に血の跡は残されているが、斬られた部分からは既に血が流れていないという事だろう。


 しかし、そんな異常な光景を、インジャオとウルルは平然と受け入れていた。


「あれ? 驚かないんだね。残念だ。でもまぁ、僕がどういう存在かを知っているんだから、驚かなくても当然か。でもね、僕たちの中でも見た目や体格に違いがあるように、体に備わっている能力にも違いがある。僕のは、ちょっとばかり回復力が高いんだ。だから、ね」


 魔王ヘルアトは口を開いている間にも、斬り傷は逆再生でも見ているかのように治っていく。

 あっという間に何事もなかったかのような肌が、斬られた服の間から見える。


「ほら、なんともない。でも、さすがにこの服や、失った血や体力のようなモノは無理だけどね」


 楽しそうに、あっけらかんと話す魔王ヘルアト。


「それにしても、驚いたな。結界を張ったのに見えていて、侵入も可能。結界を無効化するのは正直言って驚いた。拍手を送っても良い。……でも、おかしいよね? 最初は見えている風ではなかった。僕の油断を待っていた、と取れなくもないけど、それならもっと前でもよかったはず」


 魔王ヘルアトの独白するように口を開く。


「………………居るよね? 僕やリガジーのところとは別に動いているのが。それも多分、その動いているのは、キミたちにとっての頭脳か、切り札的な存在なんじゃないかな?」

「「………………」」


 その問いに、インジャオとウルルは答えない。

 代わりといってはなんだが、魔王ヘルアトに対して、想定よりも脅威な存在であったと認識する。


「……まぁ、そういうのが居ても居なくても、そう簡単には答えないよね。でも、気付いている? さっきのが最大の好機だったんだよ」


 言い終わると同時に、魔王ヘルアトは一気に前へ。

 その表情は笑みではなく、真顔であった。

 そして、先ほどまでとは速度が明らかに違う。


 ほぼ瞬間的にインジャオ、ウルルとの距離を詰める魔王ヘルアト。

 インジャオとウルルも反応して攻撃を繰り出すが、今度は逆。

 魔王ヘルアトの行動で一瞬反応が遅れ、攻撃は空振る。


 そもそも、魔王ヘルアトは攻撃を避ける事が目的ではなかった。

 インジャオとウルルの傍を通り過ぎて後方に回り、振り返る。


「『数多の体を焼失 豊潤な心を焼亡 多量の魂を焼滅 火雨』」


 左右の手をインジャオとウルルの方に向け、魔王ヘルアトの魔法が発動。

 手の先から火の玉が連続発射される。


 一つ一つ、それは確かな威力をもっていて、数も多い。

 インジャオとウルルも守勢に回るしかなく、連発される威力も相まって、魔王ヘルアトから距離を取るしかなかった。


 それでも放たれ続ける火の玉を、二人は防ぎ続ける。


「ほらほら。どうしたの? さっきまでの勢いはなくなってしまったけど? でも、それも仕方ないよね。傷付けられれば怒る。それは当たり前の事。僕に怒りを与えた事を後悔すれば良い」

「……後悔? 後悔はないですね」

「寧ろ、そちらこそ後悔すれば良い。私たちに手を出し、あの時仕留めきれなかった事を」


 インジャオとウルルは二手に分かれ、挟撃するように魔王ヘルアトへと向かう。


 そこから始まるのは、一進一退の攻防だった。

 魔王ヘルアトは主な攻撃方法は、魔法。

 それも火属性の魔法を好みとして使用している。


 肉体による攻撃はほぼ行わない。

 決して身体能力が低いという訳ではないが、同じく魔王であるリガジーと比べると、差があるのは事実である。


 ただ、差があるからといって、それで弱いという訳でもない。

 魔王リガジーが身体能力に優れているように、魔王ヘルアトは魔法に優れている。

 だからこその魔法攻撃が得意であり、その手数も豊富。


 頭も回り、魔王ヘルアトはインジャオとウルルを翻弄するような攻撃も混ぜ込んでいるため、インジャオとウルルは決定打を与えるまでには中々至らない。


 だが、それは魔王ヘルアトの方も同じであった。

 確かに傷は治ったが、無償という訳もなく、完全という訳でもない。

 治るのにも力の消耗があり、完全に治るのは時間が必要。


 既に本来の力は発揮出来ないと言える状態ではあるが、それがなかったとしても、インジャオとウルルの力は油断出来ないモノだった。


 インジャオに関しては、元々攻撃重視の剣士であったが、今は少々違っている。

 攻撃重視なのは変わっていないが、今は鋼すら超える体を手にしていた。


 今は完全にオリハルコンを取り込み、全身がその強度と同一化している。

 また、装備も同じくオリハルコン製となっているため、今は物理的な防御力だけではなく、魔法的な防御力も相当高くなっていた。


 それこそ、魔王ヘルアトの魔法を受けても平気なくらいに。


 ウルルもまた、相当な力の持ち主である。

 その動きの速度は獣人の中でも上位……いや、トップ争いが出来るくらいであり、たとえ魔王であったとしても、その動きを追おうとするなら、全神経を傾けなければいけないほどに。


 また、攻撃も鋭く的確で、強い。

 インジャオには大剣があるが、ウルルは素手でそこに近い攻撃力を有しているのだ。


 そんな二人のコンビネーションは完璧だった。

 それこそ、二人で一人であるかのように。

 単独でなら魔王ヘルアトには及ばないかもしれないが、二人で戦う事で相乗効果が生まれ、何倍も強くなっている。


 二対一という数的不利も相まって、魔王ヘルアトは次第に追い込まれていく。

 だからこそ、魔王ヘルアトはまず狙いを絞った。


 魔法が効きづらいインジャオでは一気に決めきれなくても、ウルルの方であれば、一気に決める事が出来る、と。

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