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この行く道は明るい道  作者: ナハァト
第十三章 大魔王軍戦
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別章 インジャオ&ウルル対魔王ヘルアト 1

 上大陸西部にある大魔王軍の拠点の一つ。廃町。

 そこはたった数人と竜たちによる強襲を受け、阿鼻叫喚の場と化していた。


 もちろん、阿鼻叫喚を上げているは魔物の方。

 たった数人と竜たち――樹、天乃、刀璃、シャインと竜たちによって、廃町の拠点に居る大魔王軍は、大きな打撃を受けていた。


 襲撃者全員が圧倒的な戦力を有し、兵としての魔物だけではなく、上官クラスの魔物ですら相手になっていない。


 まさしく、誰しもが強者レベルであり、一騎当千……いや、それすら超えていた。

 だからこその無双状態。

 廃町の拠点に居る魔物たちの行動は二つに分けられた。


 迎撃か、逃走か。


 誰もその他の事に意識が向かない。

 強襲者たちの事で頭が一杯である。


 故に、気付かない。

 強襲者たちは陽動。

 廃町の拠点の魔物たちの意識を、ある方向に向けさせないための行動。


 ここから少し離れた位置にある、平原で行われる戦いに邪魔を入れさせないために――。


     ―――


 インジャオが大剣を構え、ウルルが拳を握って構えた姿を、魔王ヘルアトは愉快そうに見ていた。


「さてさて。どこまでやれるようになったのかな? ここに現れ、廃れた町の方も襲撃を受けているようだし、ここで決着を望むような気合の入り方をしているところから推測すると………………なんだっけ? そちらさんの組織の名は? 確か、なんとか同盟だったような……」


 魔王ヘルアトは、インジャオとウルルに向けて、なんでもないように尋ねる。

 それでもインジャオとウルルに毒気が抜かれたような感じはない。

 油断なく魔王ヘルアトを見ている。


 それでも、会話するくらいの余裕はあった。

 いや、出来たと言うべきだろう。

 それだけ強くなったという証明でもある。


「EB同盟ですよ」

「あぁ、そうそう! それそれ! そこも来てるよね、多分。という事は決戦だ。決戦が始まった訳だ。まさしく、この世界の覇者を決めるための」


 魔王ヘルアトが笑みを浮かべる。

 その笑みに対して、インジャオが尋ねた。


「その笑み……初めて見た時は余裕がなくて気付きませんでしたけど、今は余裕があるからわかります。表面上は笑ってはいますけど、心から笑っていないようですね」

「………………へぇ。僕の事を理解出来るの?」

「色々と、見えるようにはなりましたよ」

「どう見えるようになったのか、楽しみだ、ね」


 言い終わると同時に、魔王ヘルアトが仕掛ける。

 高速で一気に飛び出し、インジャオの前へ。

 そのままインジャオの鎧部分に触れる。


「少し前に耐えられるのはわかったし、色々準備してきたって事は、僕の炎対策もしているはずだよね? だから、今度は僕が使える火属性魔法で一番強いのをいくから、耐えてみせてよ」


 魔王ヘルアトは笑みを浮かべて唱える。


「『怒りと共に猛り 激怒と共に猛り立ち 憤怒と共に猛り狂う 炎怒エンド』」


 魔王ヘルアトが魔法を発動し、インジャオの体全てを、黒い炎柱が燃やし尽くす。

 全ての閉ざすような黒い炎柱は内部を燃やし尽くし、中がどうなっているのかはわからない。

 ただ、その影響力は接触する大地にまで及び、耐えきれずに燃え尽きていく。


 その様子を見て、魔王ヘルアトは口を開く。


「一応、最初の出会いを模して焼いてみたけど、耐えられているって事かな? それとも、予想よりも上過ぎて、耐えきれずに焼き尽くされてしまったかな? どう思う?」


 魔王ヘルアトはぐりんと顔を回して尋ねる。

 インジャオに、ではない。

 今まさに魔王ヘルアトへと襲いかかろうとしているウルルに、だ。


 魔王ヘルアトが反応していようが関係なかった。

 ウルルはそのまま魔王ヘルアトに向けて襲いかかり、格闘戦を始める。


 魔王ヘルアトはウルルからの攻撃を全て捌きつつ、口を開く。


「キミはどっちだと思う?」

「聞くまでもないでしょ!」


 ウルルは怒りの表情を浮かべているが、決して怒っている訳ではない。

 表面的な部分で怒りが出てしまうのは仕方ないのだ。

 これまでの事があり、インジャオが骨化スケルトンとなった直接の原因が魔王ヘルアトなのだから。


 それを目の前にして、怒るなという方が難しいだろう。

 だからこそ、表面に出てしまうのだ。

 しかし、心の内は違う。


 いたって冷静であった。

 恐ろしいまでに冷え切っており、魔王ヘルアトを前にして我を見失っていない。

 ウルルの攻撃は冷静であるが故に、的確だ。


 また、魔王ヘルアトもウルルの攻撃は自分にダメージを与える事が出来ると察して、受けるような事はしなかった。


「キミも中々やるようだね! しかも、見えているより冷静なようだ」

「当然でしょ? この日この時のために、私たちは準備してきたのだから!」

「うん。そうだろうね。だからこそ、確信したよ。それも二つ」


 魔王ヘルアトがカニのようにダブルピースをする。

 その様子は、子供じみた挑発のように見えなくもないが、ウルルは気にしない。

 魔王ヘルアトの方も、そういう意図でやった訳ではない。


 ただの事実として、だ。


「まず一つ目」


 ウルルの攻撃を防ぎながら、ピッ! と人差し指を立てる魔王ヘルアト。


「名前は知っているのかな? リガジーの方にもキミたちみたいなのが強襲しているんじゃない?」

「………………」


 ウルルは答えない。

 表情にも表さないようにする。


「ふーん。答えないんだ。でもまぁ、僕が確信していれば済む事だから、別に気にしないよ。魔王を同時攻略しようとするなんて、大胆な作戦だな、とは思うけどね」


 魔王ヘルアトは余裕たっぷりの笑みを浮かべる。


「それともう一つ。もう少し気にかけた方がよかったんじゃない? キミが僕に夢中過ぎて、インジャオくんが無事だって証明しているモノだよ」


 魔王ヘルアトがそう言い終わると同時に、黒い炎柱の中からインジャオが飛び出す。

 言った通り、無傷であった。


「ほらね!」


 思った通りだと、魔王ヘルアトは自慢げだ。

 そこに、インジャオの大剣が振り下ろされ、タイミングを合わせるようにウルルが蹴りを放つ。


 魔王ヘルアトはなんでもないように、二人の攻撃に対して両手を使って受けとめる。

 そして、満足するように頷いた。


「うんうん。しっかりと準備してきたようで何より。それが無駄にならないといいね!」


 魔王ヘルアトが、歪で愉快そうな笑みを浮かべる。


 こうして戦いは始まり、インジャオとウルル、魔王ヘルアトの戦いは激化していく。

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