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この行く道は明るい道  作者: ナハァト
第十三章 大魔王軍戦
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別章 EB同盟 上大陸東部 3

 上大陸東部にある大魔王軍の拠点の一つ。

 大魔王軍が廃墟の町に集結していた拠点は、EB同盟による先制攻撃を受けて後手に回っていた。


 まず、未だ他の場所から集まって来ている大魔王軍に対して牽制を行う、ビットル王国とドワーフの国に所属する者たち。

 そもそも、大魔王軍に対して奇襲を行ったのにも、先手を取る以外にも理由がある。


 数か月前に行われた話し合いによって、EB同盟として再び各国が協力する形にはなった。

 だが、大魔王軍の侵攻に対して一度は盛り返したものの、これまでは各国で大魔王軍に対抗してきたようなモノだ。


 つまり、いざ協力体制で大魔王軍に対抗しようとしても、全体的な練度は足りないのである。

 しかも相手は国外の者たち。

 そう簡単に合同鍛錬が行える訳もなく、協力体制は未熟。


 だからこその奇襲を行い、大魔王軍の足並みを乱し、そこを突いて対抗しようとしたのだ。


 しかし、その結果は、一側面だけを見れば失敗である。


 確かに凍る雨と遠距離攻撃による奇襲で意表を突きはしたが、大魔王軍の立て直しは速かった。

 というのも、西部側と違って上官クラスの魔物が多く残っていたのである。


 特に多く残っていたのはエルフの里とラメゼリア王国に所属する者たちが攻めている拠点の方ではなく、ビットル王国とドワーフの国が協力して抑え込んでいた、集結しようと集まっていた方の大魔王軍だ。


 上官クラスの魔物たちは奇襲で受けた被害を直ぐに立て直し、ビットル王国とドワーフの国の連合に対して打って出て行く。

 それに、今戦いの中心は拠点の方であり、ここは戦いの外側でもある。


 上官クラスの魔物たちは、立ちはだかるEB同盟を倒し、そのまま拠点に残っている魔物たちと挟撃するような形を取れば、充分巻き返しは可能であると考えた。


 ビットル王国とドワーフの国もその事は理解している。

 だからこそ、ここを通してなるものか、と奮起した。


 確かな事実として、ビットル王国とドワーフの国にシュラやウルトランのような、突出した強さを持つ者は居ない。


 ビットル王国に所属している者たちが「守」に優れていたとしても、いずれ限界は来る。

 ドワーフの国に所属している者たちが専門としているのは鍛冶であり、どちらかといえば裏方の方で力を発揮する。


 それでも二国に所属する者たちは、拠点の外に居る大魔王軍を抑えつける事が出来ていた。

 奇襲の優位性アドバンテージがなくなっても。

 この二国が大魔王軍を抑えつける事が出来た理由はただ一つ。


 ――それは、意志の力。


 奇しくも続いた魔王軍、大魔王軍との戦いを、ここで、この戦いで、これからの戦いで終わらせようという意志を、誰しもが心に宿らせていた。

 その結果、協力体制が未熟であるとか関係ない、一体感が生まれる。


 ビットル王国、ドワーフの国という違いはある。

 けれどそれは些細で小さな事であり、大魔王軍打倒という意志の下で繋がっているEB同盟という旗の下では、しっかりと繋がっていた。


 だからこそ、ビットル王国とドワーフの国が外の大魔王軍を抑えている間に、エルフの里とラメゼリア王国は廃墟の拠点に残っている大魔王軍に集中する事が出来ているのだ。


 だが、このままではこの状況はいずれ崩れる。

 何しろ、外の大魔王軍は少しずつではあるが、未だに増えていっていた。

 つまり、時間をかければかける分だけ大魔王軍は増えていくという事。


 それは、元々ある人と魔物の個体としての戦力差を補うために数で対抗していたのだが、それすら上回られるという事であった。


 ビットル王国とドワーフの国の者たちは、誰もがその事は理解している。

 しかし、それでも逃走は選択せず、増えたら増えた分だけ大魔王軍を倒せば良いと士気は高い水準を維持していた。


 だからこそ、間に合った。


     ―――


 拠点で戦っている者だろうと、外の大魔王軍と戦っている者だろうと、そこが危険である事に変わりはない。

 特に外の大魔王軍と戦っている側の最前線だと、より危険度は増すだろう。


 危険度が高いという事は、それだけ動きも激しくなる場合が多く、消耗もより多くなる。

 消耗し過ぎてしまえば動きが鈍り、対する相手から狙われやすくなってもおかしくない。


 そんな一人が、最前線で足がもつれて倒れてしまう。

 激しく動き過ぎたために、腿が痙攣していた。


 そこを狙う大魔王軍の魔物の一体。

 巨大な棍棒を持つ牛型の魔物。

 咄嗟にドワーフの一人が大盾で棍棒を防ぐが、少し飛ばされて倒されてしまう。


 牛型の魔物は再度棍棒を振りかぶり、倒れた一人に向かって下ろそうとした瞬間――ヒィーン……という風切り音と共に、眉間に矢が突き刺さって絶命した。


「もう大丈夫ですよ」


 倒れた一人に向けて声をかけながら現れたのは、美しいエルフ。グロリア。


 それともう一人。

 ラメゼリア王国所属の強者。カノート。


「頑張ってくれてありがとう。あとは任せて休んでくれ。まだ戦いはこれから先も続くのだから」


 カノートは倒れた一人に対してそう声をかけ、飛ばされたドワーフにあとの事をお願いする。

 そして、援護のように周囲に向けて次々と矢を放っていくグロリアに声をかけた。


「さて、廃墟の方はもう任せても大丈夫ですから、あとはこちらだけですね」

「そうね。面倒そうなのは私とアナタが倒してしまいましたし」


 グロリアの返答が全てを物語っていた。

 廃墟の拠点の方に、既に上官クラスの魔物は存在していない。


 この二人もまた、シュラやウルトラン同様に強者であり、相手の強さや位置を探るなど造作もない。

 別に相談して決めた訳ではなかったのだが、拠点側を攻めているエルフの里とラメゼリア王国が優勢になるように、二人は率先して上官クラスの魔物を倒していったのだ。


 そして、もう拠点側は任せても大丈夫だと判断し、外側の方に来たのである。


「それでは、ここからどうしますか?」


 カノートからの問いにグロリアは少しだけ考え、直ぐに答えを出す。


「ここは真ん中辺りですから、私とアナタで左右に分かれて他のより強そうなのを殲滅。そのまま半周して、向こう側で合流。そのままこっちに来ている大魔王軍の殲滅というのは?」

「……うん。それでいこう。さすがと言うべきか、この場に居るのは誰もが精鋭だし、指示を出しているのを倒せば大丈夫でしょ」


 話し合いは直ぐに終わり、即座に行動に移る。

 言葉通りにグロリアとカノートは左右に散り、上官クラスの魔物を集中的に倒していき、合流後は集まってくる大魔王軍を相手に大暴れをした。


 この行動が決定打となり、EB同盟が一気に押していく。


     ―――


 それからしばらくして、拠点の大魔王軍は全滅し、そうなるとエルフの里とラメゼリア王国所属の者たちも援護として加わり、外の大魔王軍は撤退を余儀なくされた。


 この場での戦いはEB同盟の勝利で終わる。

 ただし、こちらも西部と同様に大魔王軍との決戦の一つでしかない。


 EB同盟東部側の進攻はまだ続く。

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