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この行く道は明るい道  作者: ナハァト
第十三章 大魔王軍戦
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言う人によっては重みがある

 エイトたちと、俺に抱いているイメージに対して、熱い討論ディスカッションを交わす。

 ドラーグさんは特に何も言っていなかったので、問題ないと思いたい。


⦅……マスター⦆


 だからどうして、俺があんなキザっぽい感じになるんだ!


⦅……マスター⦆


 どんな俺でも受け入れる準備?

 そもそも、どんな俺でもって段階でおかしくない?


⦅マスター!⦆


 うえっ! あっ、はい。

 どうかした? セミナスさん。


 ちょっと今、エイトたちの俺に対する認識というのを再確認していて……。


⦅汎用型と特化型たちは、マスターの事を正確に把握していますので問題ありません⦆


 いや、把握してないから討論しているんだけど!


⦅先ほどのは待ち時間の間のお遊びのようなモノです。どのようにしてマスターに来るか。それに対してどのように反応するのが良いのかを、遊び感覚で学習していたのです⦆


 遊び感覚の時点でおかしいと思わないだろうか。


⦅ちなみに私の場合は、出てきた瞬間に『セミナニウムが足りない』とマスターが呟き、出迎えた私、もしくはマスターの中に居た際は私の体を取り出し、強く抱き締め、熱く濃厚な口付けをしています⦆


 うん。していません。

 というか、セミナスさんもか。

 それに「セミナニウム」ってなんだよ。


⦅『セミナニウム』。マスターの中に自然発生している愛の組織。時間経過と共に加速度的に失われていき、なくなると幼児化する。補充する際は愛するセミナスとの濃厚接触が必要⦆


 そんな謎組織は俺の体内にありません。

 ……わかった。わかったから。


 エイトたちとの討論は終えるから、一体どうしたの?

 何かあるから声をかけてきたんでしょ?


⦅そうでした。何かお忘れではありませんか?⦆


 ………………。

 ………………。

 あっ! 結界の神様!


 バッ! と振り返る。

 結界の神様は体育座りで空を眺めていた。

 あまりにもいたたまれないその姿に、俺は即座に結界内に戻って謝る。


「すみませんでした」

「え? 何が?」

「いや、討論でちょっと時間かかってしまって」

「ああ。気にしなくて良いよ。だって、それは大魔王軍が居ないから。平和って事だよね? 平和、素晴らしい!」


 どうやら、周囲に大魔王軍が居ない事を実感していたようだ。


「それじゃ、えっと、出て来てくれますか?」

「思ったんだけどさ」

「はい」

「この中が一番安全じゃないかな?」


 ………………。

 ………………。


「そんな事はありませんよ」

「今の間は何かな?」


 否定出来なかっただけです。


「でもまぁ、出ないと結界破りの力は与えられないし、出るよ」

「ありがとう」


 今度は結界の神様と共に結界の外へ出る。


『おかえりなさいませ』


 エイトたちとドラーグさんが丁寧に出迎える。


「いや、さっきまでと全然違うし」

「なんの事ですか?」


 エイトが首を傾げる。

 他のみんなも同じような反応だ。

 あっ、先ほどまでの事をなかった事にしようとしているな、これ。


⦅なんの事ですか?⦆


 いや、セミナスさんまで惚けなくても良いから。

 でも、とりあえず今は結界の神様である。


 エイトたちとドラーグさんを紹介していく。


「……なるほど。つまり、ご主人様はショタ属性を獲得したという事ですか?」

「いや、違う。紹介、顔合わせだって言ったでしょ」


 安定の返し。

 ワンたちは、俺と結界の神様を交互に指差しながらコソコソ話さないように。

 あと、ドラーグさんに変な知識を与えないように。


⦅どちらが攻めかで揉めているようです。私も会話に交ざりたいので、体を出していただけますか?⦆


 その理由で体は出せません。

 それと、出来れば交ざるのではなく、注意する立場でいてください。


 一方、結界の神様は普通だった。


神造生命体ホムンクルスか。……あいつら、漸くまともなのを造ったんだ」


「漸く」とか、「まともなの」とか、神様が言うとなんか重みがあるな。

 本当に、ろくでもないモノばっかり作ってきたのかもしれない。

 でも、ゴーレムたちが傑作なのは間違いない。


⦅汎用型、特化型たちは?⦆


 まぁ、造形の女神様たちを認めるようでアレだけど、大傑作だと思う。

 色々と困らされる事も多いけど、エイトたちが非常に優秀なのは理解している。


「今、ご主人様からの好感度が上がった気がします」


 私も私も、とワンたちが追随する。

 そこは好感度じゃなくて評価だと思うんだけど。


「それで」


 結界の神様が少し呆れ気味に声をかけてくる。

 なんか、すみません。

 こういう子たちで、いつもこういう流れなんです。


「この中に居るの? 結界破りの力を授けて欲しいのは」

「いえ、今まさに魔王と戦っているはずなんですけど……」

「そっちね」


 う~ん……と確認するように、結界の神様は左右に頭を振る。


「……すっごく怖い気配と戦っているのが、左右に居るね。その人たち?」

「はい。それで合っていると思います」


 念のため、アドルさんたちの容姿を詳しく説明しようとするが拒否される。


「いや、近場まで行くなんて無理だから。神の啓示的なので授けておくよ。吸血鬼、骸骨、獣人でしょ。大丈夫大丈夫」


 気楽に言うけど、大丈夫なのだろうか?


⦅問題ありません。吸血鬼たちにスキルが付く未来が見えました⦆


 ホッと安堵。


「それじゃ、ここは正直言って落ち着かないし、なんか他の神たちが集まっている場所があるから、僕はそっちに行くよ」

「わかりました」


 ありがとうございますと頭を下げる。

 そして、結界の神様は、どこか遠くの空に向かって飛んで行った。


 とりあえず、これでアドルさんたちの助けにはなった、はず。

 ……間に合ったよね?


⦅問題ありません。許容出来る時間内です⦆


 それならよかった。

 ……アドルさんたち、勝てる……よね?


⦅そればかりは今の私でもなんとも言えません。前よりも正確な未来は見通せるようになりましたが、未だブレが大きく、確定はしていないのです。やはり、大魔王、魔王が相手となると、一筋縄ではいかないようです⦆


 そっか。

 でも、勝率はあるんだよね?


⦅この数か月で対抗出来るまでは力を上げましたので、あとは本人たち次第です⦆


 そういう事なら大丈夫だよ、きっと。


⦅それと、あまりこういう不確かな事は言いたくありませんが、マスターの思いはきっと届きます⦆


 俺を安心させようとしているのかな?

 大丈夫。もちろん信じているよ、アドルさんたちの勝利を。

 でも、ありがとう。


 ……さて、こっちはこっちでやるべき事をやろう。

 次は、予言の女神様を解放しに行かないとね。


⦅それは違います、マスター⦆


 え? 何が違うの?

 何か間違えた?


⦅一発しばきに行く、です⦆


 いや、文句は言いたいけど、別にしばくつもりはないんだけど。


⦅では、体も手に入れた事ですし、代わりに私が⦆


 もし今この場でセミナスさんが体の方に入っていれば、ブオンブオンと素振りの音が聞こえていたと思う。

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