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この行く道は明るい道  作者: ナハァト
第十三章 大魔王軍戦
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誰にだって怖いモノはある

 念のため奥の扉を確認すると、開く事が出来た。

 先に進めるようで、ホッと安心。

 正直、勝ったと胸を張って言えるような勝負じゃなかったし。


⦅正確に理解しているようで何よりです⦆


 ほんと、セミナスさんのおかげです。

 ここまで相性が良いというか、悪いというか、時間がかかると思わなかった。

 思わず、脇に抱えている本を見る。


⦅それに関しては私も同意見です。まさかここまで時間のかかる相手だったとは⦆


 でもあれって、今考えると物理的にでもいけたんじゃない?


⦅倒す事は可能ですが、推奨はしません⦆


 どうして?


⦅この手のタイプは、強さの代わりに何かしらの能力を持っている可能性が高いのです。明確にルール付けした勝負方法以外で勝利した場合、どうなるかわかりません。先ほどの場合でいえば、二度と先に進める事が出来なくなり、この部屋から出る事も出来なくなる、という状況に陥っていてもおかしくありません⦆


 普通にやって、普通に勝ててよかった。

 ホッと安堵して、扉を開ける。


 開けた先は、先ほど居た部屋とまったく同じ造りの部屋。

 部屋自体は特に違いはない。


 違いは一点。

 先ほどの部屋は、中央に台座が置かれていた。

 この部屋の中央には、こちらに背を向けて体育座りしている黒髪の少年が居た。


「えっと……」


 この少年が結界の神様なのかな?


⦅はい。そうです⦆


 そうらしい。

 どれどれ、と前に回ろうとすると、そんな俺の動きに合わせて、黒髪の少年も動く。


 向き合うためにじゃない。

 俺に対して常に背中を見せるように、その場で器用に回り出したのだ。


 それと、近寄る事も出来なかった。

 近付こうと前に進むと、途中で透明の壁があるようにまったく進めなくなる。

 というか、実際にペタペタと触れる事が出来た。


 端から見ると、パントマイムしているように見えるんじゃないだろうか?


⦅結界が張られています⦆


 え? これが? この透明の壁が結界なの?


⦅はい⦆


 待って。

 という事は……結界の神様が、近寄らせないように張っているって事?


⦅どうやらそのようです⦆


 それは困る。


「えっと、結界の神様?」


 声をかけると、結界の神様がビクッと反応するが、振り返って確認するような事はなかった。


「結界の神様! ここから解放しに来たので、ちょっと結界を解いてくれませんか?」

「………………」


 反応なし。

 どういう事?

 ここから出たくないのだろうか?


⦅その可能性が高いと思われます。その原因となっているのは、恐怖です⦆


 どういう事?


「そ……だ」


 ん? 今、結界の神様、なんか言った?


「すみません。ちょっと聞こえなかったので、もう一度お願いします」

「外は危険だ」


 ……えっと、「外は危険」って事は……大魔王軍が怖いって事かな?

 まぁ、こうして自分を封じた相手だしね。


 ふと、そこで気付く。

 セミナスさんは、結界の神様が大魔王、魔王の特殊な結界を破るために必要だと言った。

 つまり、今この場に張られている結界である。


 結界の神様がその結界を破れるとなると、だ。

 わざわざ封じられた場所に居なくてもよくない? という事になる。

 つまり、自ら出て行く事も可能だという事。


 なのに、この場にこうして居た。

 居続けた。

 それは、大魔王軍が怖かったから。


 でも、その感じるのもわかる。

 魔王と会った時の事を思い出すと、今でも俺は恐怖を覚えるし。


 それでも、今、これから、結界の神様の協力は必須だ。


「そこをなんとか協力していただけませんか? 結界の神様の力が必要なんです!」

「………………」


 結界の神様は答えない。

 でも、耳は傾けてくれている気はする。


 問題は、結界の方だ。

 今のままだと近付く事すら出来ない。

 どうにか出来ない?


⦅……どうやら、認識を更新しなければいけないようです⦆


 どういう事?


⦅結界の神は、既に大魔王、魔王の特殊結界を破る術を身に付けているようです。マスターを阻んでいる透明の壁は、その術を用いた結界のようで……申し訳ありませんが、力が制限されている今の私では突破口が見出せません⦆


 ……え? セミナスさんが匙を投げるの?

 そんな事初めてだし、もうどうしようもないって事になるんだけど。

 ちょっとした絶望感である。


 となると、もう出来る事は一つしかない。


「お願いします! 協力してください! 大魔王軍が怖い気持ちはわかります! 俺も魔王と接敵して恐怖を覚えましたから! でも、今は怖くても戦う時なんです! 大魔王軍との決戦が始まったのです! そして、大魔王、魔王を倒すためには結界の神様の力が必要だから、お願いします! 戦えとは言いません! ただ、結界の神様の結界破りが必要なんです!」


 言葉で訴えるしかない。

 なので、思いつく限りの言葉を投げかけていく。


 そうして一通り思いを伝えて、一息吐いていると、結界の神様が顔を少しだけ動かし、窺うように俺を見てくる。


「外は危険。それは変わらない。だけど………………本当に僕が必要なの?」

「はい。必要です」


 多分、ここで否定をしちゃいけない気がする。

 それと、目も背けない。

 必要ですと訴えるように、結界の神様を見る。


「………………」

「………………」

「………………わかった。出ても良い。でも、絶対に戦闘には参加しない。それと、僕が作り出した結界破りの力は授けるけど、大魔王、魔王の前には絶対立たないから。約束出来る?」


 大丈夫だよね?


⦅はい。問題ありません⦆


 結界の神様の言葉に、まずは頷きを返す。


「はい。それで大丈夫です。決して、戦えとか、大魔王、魔王の前に立ってくださいとは言いません」

「……うん。わかった。なら、良いよ」


 そう言って、結界の神様が立ち上がって俺を見る。

 改めて確認。


 黒髪に、黒目の優しそうな少年の顔立ち。

 見た目で言えば、武技の神様と同じくらいだろう。

 ただ、服装が貴族っぽい仕立ての良い黒の上下なので、丁度武技の神様とは正反対の印象を受ける。


 武技の神様は活発って感じ。

 結界の神様は大人しいって感じ。


「……誰かと比べてない? ……誰と比べているのかはなんとなくわかるけど」

「えっと、すみません」


 読まれていたようなので、謝っておく。


「まぁ、良いよ。とりあえず、今の状況を教えてくれる? それと、誰に結界破りを授ければ良いのかも」

「はい」


 結界の神様に、これまでの事を教え、結界破りを授けて欲しいアドルさんたちの事を伝える。

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